猫にも人間にも楽しい家づくり幅1.8mの空間に段差を作っていろんな居場所をつくり出す

猫にも人間にも楽しい家づくり幅1.8mの空間に段差を作って
いろんな居場所をつくり出す

「楽しい家ができればいいかなと思って」。これが住居としてはとても特徴的な約2.5m間口の敷地に立つO邸の設計の出発点だった。

さらに、家の内部を構成する段差についてOさんはこう話す。「敷地がとても狭いので床を普通に平らにしてしまうと何もなくなってしまう。それで段差をいっぱいつくったほうが楽しいんじゃないかと」


手前がワークスペースとクローゼット。奥の道路側にベッドスペース。

手前がワークスペースとクローゼット。奥の道路側にベッドスペース。

玄関から地下室を見る。将来的にはコーヒースタンドをここで開くことも考えているため、水道やガスも引いてある。

玄関から地下室を見る。将来的にはコーヒースタンドをここで開くことも考えているため、水道やガスも引いてある。


猫と人間の居場所をつくる

段差というのは3階程度の高さの空間につくられた8つの床のレベルから生まれる高低差のこと。この段差による空間の縦方向の変化が自然と楽しい空気感をもたらしているが、こうした空間構成とするのにはOさんが目指した“楽しさ”とは異なる理由もあったという。設計を担当した建築家の相原さんはそれをこう説明する。

「居場所みたいなのを探すのがお2人とも上手で、普通に椅子に座ってテーブルに向かっているだけではなくて、ちょっと階段に腰かけて本を読んだりとかするような自由な感じがあった。そこから、段差をつくっていろんな居場所をつくるという方向に向かっていた感じもありましたね」


2階のLDKスペース。奥に見える開口のサッシは、製作限度ぎりぎりサイズの特注もの。壁にはポーターズペイントというオーストラリアのメーカーの塗料を塗った。チョコレートトルテという名の茶系塗料だがグレーにも見える。

2階のLDKスペース。奥に見える開口のサッシは、製作限度ぎりぎりサイズの特注もの。壁にはポーターズペイントというオーストラリアのメーカーの塗料を塗った。チョコレートトルテという名の茶系塗料だがグレーにも見える。

心地のよい空間を自分で見つけ出して、自分の居場所としてしまう。お2人のそうした振る舞いを相原さんは“猫目線”と表現する。

実際、O夫妻は大の猫好きで、“こはだ”と“めかぶ”という名の雌猫を飼っていてとてもかわいがっているが、猫好きな人に多い、猫のために何か大きな空間的工夫をするという発想はなかったという。猫のためでもあるし人間のためでもあるようなスペースをつくっていったら、猫にも人間にも楽しい場所になっていった、そんな感じだったという。


リビングスペースから見る。段差のあるフロアが連なるさまがよく分かる。

リビングスペースから見る。段差のあるフロアが連なるさまがよく分かる。

キャットウォークを設ける前に、このロフトへとのぼる梯子をつたって猫が“まさかの大脱走”を企てたことがあるという。

キャットウォークを設ける前に、このロフトへとのぼる梯子をつたって猫が“まさかの大脱走”を企てたことがあるという。


狭小空間ゆえの工夫

段差は敷地が狭いということからもたらされたアイデアでもあったが、この段差が楽しさだけでなく視線の抜けや光が差し込む隙間をつくり出して、横幅1.8mの空間でも窮屈な思いをすることなく心地よく過ごせることに大きく貢献している。   

心地よさということではまた開口の存在も大きい。地下以外では左右の壁に一切窓がないこの家では、道路側の2階と3階に製作限度ぎりぎりの大きなサイズの特注サッシを入れてある。横幅一杯の開口をつくるというアイデアは建築家によるものだが、Oさんもこのアイデアに大いに賛同して窓を小さく割るのではなく大きな1枚の窓の実現にこだわったという。


DKスペースを見下ろす。

DKスペースを見下ろす。
 

手前の天井の上は屋外。その向こうの一段下がった空間が浴室。

手前の天井の上は屋外。その向こうの一段下がった空間が浴室。

2階のソファでくつろぐこはだ。こはだはいつも人間の近くで行動している。

2階のソファでくつろぐこはだ。こはだはいつも人間の近くで行動している。

シャイなめかぶが少し離れたロフトに陣取って見下ろしている。

シャイなめかぶが少し離れたロフトに陣取って見下ろしている。


この大開口からは室内に光がふんだんに入るとともに、窓を開ければとても心地のよい風が裏の開口へと抜けていく。取材中も気持ちのいい風が室内を通って、快適に暮らすうえでこの風効果はとても大きいように感じられた。

狭い空間ながらの工夫がさらにもうひとつ。通常であればそれなりのスペースを要する本棚をスチールで階段と一体にしてつくり省スペースを図っているのだ。この一体感がこの階段室を親密な空気感をもった空間にしてお2人と猫たちにさらなる居場所を提供している。


階段に座って本を読んでいると猫たちと目が合ったりすることもしばしばという。

階段に座って本を読んでいると猫たちと目が合ったりすることもしばしばという。

DKとロフトを見る。

DKとその上のロフトを見る。

階段と一体にしてつくられたスチール製の本棚。トップライトから光が落ちる。

階段と一体にしてつくられたスチール製の本棚。トップライトから光が落ちる。

手前に浴室、奥にロフトが見える。

手前に浴室、奥にロフトが見える。


居場所を見つけるのが得意なお2人にそれぞれのお気に入りの場所での過ごし方を聞いてみた。まずは奥さんから。「お風呂に浸かるとテラスを通して空が少し見えるんですが、そのあたりが好きなのと、あとは、2階のベッドの前に段差があってベッドにちょうどいいぐあいによりかかって座れるんですが、そこから奥のほうを見ると部屋がとても広く感じられるので気に入ってますね」

そしてOさんは……。「ふとんで猫と戯れているのが好きですね。あと、めかぶさんが外に出せって屋上に行きたがるので、屋上に連れてくと空を見てニャーッとずっと鳴き続ける。その時に屋上に座ってボーっとしているのも好きですね」。猫目線という表現に思わず納得の答えが返ってきたのだった。


手前のロフトもOさんのお気に入りの場所。ここで本を読むのが好きという。

手前のロフトもOさんのお気に入りの場所。このスペースで本を読むのが好きという。

建物の幅は約2.2m。左右の家と比べてその幅の小ささが際立つ。

建物の幅は約2.2m。左右の家と比べてその幅の小ささが際立つ。

O邸
設計 YUUA建築設計事務所
所在地 東京都
構造 鉄骨造
規模 地上3階地下1階
延床面積 80.42㎡