Architecture

イームズハウスがお手本両サイドの吹き抜けから、
鎌倉の緑をたっぷりと感じて

イームズハウスがお手本  両サイドの吹き抜けから、 鎌倉の緑をたっぷりと感じて

スクエアな外観に和のイメージをプラス

家の両サイドの高い吹き抜けから、鎌倉の豊かな緑が目に飛び込んでくる。窓からはたっぷりと光が差し込み、家全体に気持ちのよい風が通り抜ける小松邸。

代官山でアパレル関係の仕事をしている士郎さんは、ここから毎日東京に出勤している。
「家に帰ってきて、鎌倉駅を降りた時に樹の香りを感じるとホッとします」

この場所は祥子さんの実家のすぐ近く。
「家の前も後ろもお寺で、緑が綺麗なんです。鎌倉に住むならここに住みたいと、以前から気になっていた場所でした」

20世紀のモダンデザインを牽引したチャールズ夫妻の自宅兼仕事場である「イームズハウス」をイメージしながら、日本の風土と、鎌倉という場所にいかに馴染ませるかを考えたそう。
「イームズハウスは鉄骨ですが、家は木造にし、格子戸などを使って和のテイストをプラスしました」


高い吹き抜けから明るい光が差し込み、近くのお寺のこんもりとした緑が見える。
高い吹き抜けから明るい光が差し込み、近くのお寺のこんもりとした緑が見える。
階段や手摺りには木を使い、あたたかなぬくもりが感じられる。大きなカーテンを引けば、夜は落ち着いた空間に変わる。
階段や手摺りには木を使い、あたたかなぬくもりが感じられる。大きなカーテンを引けば、夜は落ち着いた空間に変わる。



2階から吹き抜けを通して1階を見下ろす。千笑ちゃんのベビーベッドが見える。
2階から吹き抜けを通して1階を見下ろす。千笑ちゃんのベビーベッドが見える。

両サイドが吹き抜けになっている。「風がよく通るので、夏もとても気持ちがいいです」
両サイドが吹き抜けになっている。「風がよく通るので、夏もとても気持ちがいいです」
士郎さん、祥子さん、そして長女の千笑ちゃん。誕生してまだ1ヶ月に満たない時に取材にお邪魔しました。
士郎さん、祥子さん、そして長女の千笑ちゃん。誕生してまだ1ヶ月に満たない時に取材にお邪魔しました。


小松邸はお寺に囲まれた場所に建つ。近くには鎌倉最古と言われているお寺もある。

「そんな場所なので、家を建てる時には発掘調査に時間がかかることは覚悟していました。調査の順番が前倒しになったので思ったよりも早く着工できたのですが、調査がおもしろくて、僕も何度か足を運びました。この場所は上杉謙信のお屋敷があったそうで、僕の家が建っているのは、井戸端でなごやかに話をしていたような場所だったそうです。謙信公は僕の故郷の武将でもありましたし、この土地にグッと愛着が増しました」と士郎さん。

上杉謙信公の井戸端だった場所は、時を超え、アイランドキッチンを囲んで小松さん一家が団欒の時間を過ごしている。


チャールズ・イームズの自邸であるイームズハウスをイメージした外観。“和”を上手くとり入れることで、鎌倉の環境にも馴染む。
チャールズ・イームズの自邸であるイームズハウスをイメージした外観。“和”を上手くとり入れることで、鎌倉の環境にも馴染む。
窓のデザインが小松邸の外観の決め手になっている。正面がバスルーム。グランドカバーには、冬でも緑を保つ種類を選択。
窓のデザインが小松邸の外観の決め手になっている。正面がバスルーム。グランドカバーには、冬でも緑を保つ種類を選択。
家のそこここに上手に緑が飾られている小松邸。「マンションに住んでいた頃から、植物の鉢はたくさんありました」
家のそこここに上手に緑が飾られている小松邸。「マンションに住んでいた頃から、植物の鉢はたくさんありました」
格子戸を引くと、中から広々とした外の景色が見えるけれど、外からは見えにくくなるしくみ。外出時は格子戸を閉めて出かける。
格子戸を引くと、中から広々とした外の景色が見えるけれど、外からは見えにくくなるしくみ。外出時は格子戸を閉めて出かける。
引き戸の向こうは靴の収納がたっぷりできる空間。実はその奥の扉が玄関ドア。
引き戸の向こうは靴の収納がたっぷりできる空間。実はその奥の扉が玄関ドア。


アイランドキッチンを囲むリラックスタイム

「窓の外の緑を見ながら料理をしたかったということもありますし、料理の時間から家族のリラックスタイムにしたかったので、大きなアイランドキッチンを作りました」と祥子さん。1800×1500mmという大型のアイランドキッチンは、来客も一緒にワイワイと料理を作ることができるサイズなのだそうだ。

小松邸の床は、コンクリートの削り出し。実は床のすぐ下の地中に蓄熱式床暖房が設置されていて、冬はとても気持ちのよい暖かさ。バスルームはもちろん、家中が暖かい。夏は反対に床がひんやりと気持ちがいいのだそう。

緑豊かな環境と、いい空気に満ちた気持ちの良い家、そしてすぐ近くに住む祥子さんのご両親に見守られながら、生まれたばかりの千笑ちゃんはこの家ですくすくと育っていくのでしょう。


緑を見ながら台所に立ちたいと考えて、大きなアイランドキッチンを作った。
緑を見ながら台所に立ちたいと考えて、大きなアイランドキッチンを作った。
キッチンの背面の引き戸の中は収納庫になっている。普段は扉を閉めてスッキリと。
キッチンの背面の引き戸の中は収納庫になっている。普段は扉を閉めてスッキリと。
吹き抜けにもイサム・ノグチの照明が使われているが、このツノ型のものは、店に現物しかなかったものを無理に買い取ったそう。
吹き抜けにもイサム・ノグチの照明が使われているが、このツノ型のものは、店に現物しかなかったものを無理に買い取ったそう。
ワークデスクの上の棚に並んだファイルケースは、白で統一している。
ワークデスクの上の棚に並んだファイルケースは、白で統一している。


外の景色を眺めながら、ゆったりと疲れを癒せる広々としたバスルーム。「あえてドアは作らず、シャワーカーテンだけにしました。ガラスが一枚あるおかげで、カーテンを引かなくてもほとんど水は飛ばなかったですね」
外の景色を眺めながら、ゆったりと疲れを癒せる広々としたバスルーム。「あえてドアは作らず、シャワカーテンだけにしました。ガラスが一枚あるおかげで、カーテンを引かなくてもほとんど水は飛ばなかったですね」

小松邸
設計 FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 96.66m2