Architecture

家族の顔がすぐ見える家緑豊かな環境で、開放的かつ
戸外の雰囲気をもつ空間を創る

170626h_header

開放的かつ家族の顔が見える空間

自然が豊かな環境で暮らしたかったというH夫妻。大田区で見つけた敷地は緑豊かな公園に隣接していて一目で気に入り購入を決めたという。

夫妻は、この恵まれた環境で「ゆったりとして開放的な空間」とともに「つねに家族の顔が見える空間」を家づくりのテーマとした。

「以前、住んでいたマンションで家族が集まるのはリビングとダイニングでした。そこで、リビングとダイニングをゆったりと広く取り、かつ、家族の顔がすぐ見えるようにしたかったので、コミュニケーションが取りやすい空間にしてほしいと建築家にお願いしました」(Hさん) 


2階のダイニングからリビングを見る。奥に見える緑は隣接する公園のもの。天井の角度からリビングを通して奥の緑へと視線が導かれる。
2階のダイニングからリビングを見る。奥に見える緑は隣接する公園のもの。天井の角度からリビングを通して奥の緑へと視線が導かれる。

2階のキッチン。ここからダイニング、リビングだけでなく1階の廊下部分にも目が届く。
2階のキッチン。ここからダイニング、リビングだけでなく1階の廊下部分にも目が届く。

リビングとダイニングは間に階段を挟みつつ、壁なしでつながっている。そして、キッチンから目が届く下階(1階)の廊下部分に長いテーブルを造り付けたのも同じ趣旨からだった。

「キッチンから子どもたちが勉強などをしているところが見られるようにしたいというのがすごくあったので、子ども部屋の前に長いテーブルをつくってもらいました」(奥さん) 


リビングから、ダイニングでくつろぐH一家を見る。
リビングから、ダイニングでくつろぐH一家を見る。
北側に向けて開けられたダイニングの開口。南からの光を受けて緑が映えて見える。
北側に向けて開けられたダイニングの開口。南からの光を受けて緑が映えて見える。


“外っぽい”荒い仕上げ

外の環境に恵まれた敷地だが、さらに、Hさんの希望で、家にいても戸外のような雰囲気を味わえるように、室内の仕上げにもこだわった。

「外っぽいというか少し荒さの感じられる仕上げが好きで、地下と1階の床をモルタルとコンクリートにしてもらい、あと、スチールもけっこう使っていますね」


リビングとダイニングの開口を開けると、涼風が2階の空間を吹き抜けていく。風通しの良い空間は奥さんの要望だった。
リビングとダイニングの開口を開けると、涼風が2階の空間を吹き抜けていく。風通しの良い空間は奥さんの要望だった。
リビングからも外部へと視線が導かれる。
リビングからも外部へと視線が導かれる。


スチールは階段の手すりとさらに踏板の下にも補強用の材として使われている。ダイニングでは多くの小梁が走る天井部分の大梁として太いスチール材が使われた。天井の木毛板もHさんが表面の荒い感触が気に入って採用したものだ。

ダイニングには戸外に使われることの多いコンクリートに近い色味の材が使用されているが、これは磁器質タイルというもので、そのまま延長するように外部のベランダにも使われている。


ベランダには、公園からの視線を考慮して斜めの手すり壁がつくられた。リビングを最上階にしたのは、「長い時間いるリビングとダイニングを上にして眺めを楽しめるようにしたかったから」(Hさん)という。
ベランダには、公園からの視線を考慮して斜めの手すり壁がつくられた。リビングを最上階にしたのは、「長い時間いるリビングとダイニングを上にして眺めを楽しめるようにしたかったから」(Hさん)という。

開放的な空間

地下の玄関部分から先に進むと、2階まで吹き抜けた開放感溢れる空間が現れるが、この空間につくられたRCの階段がアールを描いて上昇していて地形のようにも感じられるつくりになっている。

「あの階段の形は設計をお願いした建築事務所のUAoからの提案です。端の部分に大きな観葉植物が置けるようなスペースをつくってもらいました。もともと観葉植物が好きで、また観葉植物が映える空間というのがけっこう外っぽい空間という印象があったのでそのような空間にあこがれていました」


RCの階段がゆるやかにカーヴする。地下から2階の天井まで吹き抜けた開放的な空間。
RCの階段がゆるやかにカーヴする。地下から2階の天井まで吹き抜けた開放的な空間。
3人のお子さんが並んで勉強することを想定してつくられた子ども部屋前の長いテーブル。
3人のお子さんが並んで勉強することを想定してつくられた子ども部屋前の長いテーブル。


RCの階段を上り切った部分から見る。さらに階段を上ると左手にダイニング、右にリビングがある。
RCの階段を上り切った部分から見る。さらに階段を上ると左手にダイニング、右にリビングがある。
1階の子ども部屋の前から見る。下が玄関、上がダイニング。
1階の子ども部屋の前から見る。下が玄関、上がダイニング。


Hさんは暮らしてみて「思っていた以上にコミュニケーションが取りやすい」と感じているという。「それと開放的な空間にしてほしいというリクエストを出しましたが、最大限それを形にしていただいたという気がしています」

そして、2階のリビングとダイニングでは、外の景色を見るように視線が誘導されるつくりになっていることも強く感じているという。


キッチンから見下ろすとこのように見える。1・2階の柱には、梁の色と合わせるために赤味のある材に薄い単板が貼られている。
キッチンから見下ろすとこのように見える。1・2階の柱には、梁の色と合わせるために赤味のある材に薄い単板が貼られている。
階段最上部は夫婦ともに好きな場所。よく座ることがあるという。
階段最上部は夫婦ともに好きな場所。よく座ることがあるという。
階段の真上の開口から階段へとふんだんに光が落ちてくる。
階段の真上の開口から階段へとふんだんに光が落ちてくる。


玄関部分を抜けると、3層を吹き抜けた開放的な空間が現れる。
玄関部分を抜けると、3層を吹き抜けた開放的な空間が現れる。
階段の端には観葉植物の置けるスペースがつくられた。下に置かれているのはHさんが国内外の海岸で集めた流木。
階段の端には観葉植物の置けるスペースがつくられた。下に置かれているのはHさんが国内外の海岸で集めた流木。


さらに、奥さんはこんなことを話してくれた。「マンション暮らしの時は一日中家にいたりすると子どもたちが外に行きたいと言うし、わたし自身も外の空気を吸いたいと思うことが多かったんですが、今は家にいても息が詰まらないし、風も良く通って空気の動きも感じられる。あと、とても開放的な空間というのも大きくて、子どもたちもあまり外に行きたいって言わなくなりました」

リクエストしたものはすべて実現できた。しかし、そのために外出する気が起こらなくなるとまでは予想していなかったようだ。


ダイニングの床に使われているのは磁器質タイル。通常は戸外に使われる素材だ。天井の大梁はブラックのスチール材。
ダイニングの床に使われているのは磁器質タイル。通常は戸外に使われる素材だ。天井の大梁はブラックのスチール材。
ガレージの部分が地下1階。外観のグレーは建築家から提案のあったなかから選んだもの。
ガレージの部分が地下1階。外観のグレーは建築家から提案のあったなかから選んだもの。
H邸
設計 UAo
所在地 東京都大田区
構造 木造造
規模 地上2階+地下1階
延床面積 161.35m2