コーヒーの香りに包まれて第二の人生の舞台はショップ併設の2階建て

コーヒーの香りに包まれて第二の人生の舞台は
ショップ併設の2階建て

街道沿いの中古住宅を購入

須田 忍さんがコーヒー豆専門店「桃円」をオープンしたのは2007年。「それまでデザイナーとして働いていましたが、50歳を迎える頃からなんとなく先が見えてしまって。だったらやってみたかった店の経営にチャレンジしてみようと思ったんです」。

そこで考えた業種は、たこ焼き、大学芋、そしてコーヒー豆の焙煎の3つだったという。「いずれも材料の種類が少なくて、加工もシンプルだから始めやすいかなと(笑)。その中でもコーヒーが大好きだったので、豆の焙煎ショップに決めました」。

焙煎の煙が出ても近所に迷惑がかからない環境を求め、見つけたのが入間市駅から歩いて15分ほどの街道沿いに建つ中古物件。「元は蕎麦屋だった建物を買って、自分で店舗のプランを考えました。内装の大工をしている義弟に店舗部分のリフォームを依頼して、2階の住居部分は自分で手を入れることにしました」。


桃円のテーマカラーは赤。ドアの左側が焙煎室、右側が商品が並ぶコーナー。

桃円のテーマカラーは赤。ドアの左側が焙煎室、右側が商品が並ぶコーナー。

店の入口には、集めていたメキシコのタイルを埋めこんだ。豆のオブジェは、近くのカフェのマスターがチェーンソーで作ってくれたもの。

店の入口には、集めていたメキシコのタイルを埋めこんだ。豆のオブジェは、近くのカフェのマスターがチェーンソーで作ってくれたもの。

焙煎された豆が並ぶ。壁に飾られているのはアフリカンアートの店で買った「カンガ」と呼ばれる布。

焙煎された豆が並ぶ。壁に飾られているのはアフリカンアートの店で買った「カンガ」と呼ばれる布。



須田さんが「桃円」に導入した焙煎機は、1回に焙煎出来る豆が最大600グラムというもの。「焙煎機としては小ぶりですが、焙煎したてをお届けするためにも丁度良いサイズだと思っています」。

須田さんが「桃円」に導入した焙煎機は、1回に焙煎出来る豆が最大600グラムというもの。「焙煎機としては小ぶりですが、焙煎したてをお届けするためにも丁度良いサイズだと思っています」。

焙煎前の豆。「しっかりと豆を選別することが美味しさの大切なポイントです」と語る。

焙煎前の豆。「しっかりと豆を選別することが美味しさの大切なポイントです」と語る。

1回の焙煎にかかる時間は20分ほど。注文に応えるため、毎朝5時からフル稼働で焙煎を行っている。

1回の焙煎にかかる時間は20分ほど。注文に応えるため、毎朝5時からフル稼働で焙煎を行っている。

焙煎した豆は100gから購入できる。タグには豆の種類や焙煎日が記されている。

焙煎した豆は100gから購入できる。タグには豆の種類や焙煎日が記されている。


人やモノが行き交う場として

正確な年数はわからないものの、「築40年ほどは経っているんじゃないかな」という建物は、リフォームを経てコーヒー豆の焙煎専門店「桃円」に生まれ変わった。

1階の大部分を占めるショップスペースは、通りから見える位置に焙煎ルームがあり、その横に商品の豆をディスプレイするコーナー、その奥にカウンターを備えたキッチンがある。通信販売も行っているが、販売は99%が店頭だそうで、豆を買いにきた近所の人とコーヒー談義に花が咲くことも。

また、お客さんからも果物のお裾分けをはじめ家電などを譲り受けることも多いという。「店を始めてわかったのは、店という場にはいろんな人やモノがやってくるということ。それがおもしろくて、もっと早く店を始めていれば良かったと思うほどです」。


ていねいにコーヒーを淹れる。「カフェじゃないからコーヒーは売れないけれど、豆を買ってくれたお客様に一杯飲んでいってもらうこともあります」。

ていねいにコーヒーを淹れる。「カフェじゃないからコーヒーは売れないけれど、豆を買ってくれたお客様に一杯飲んでいってもらうこともあります」。

冷蔵ショーケースは近所のカフェからもらったもの。中には手づくりの果実酒やジャムがぎっしり。

冷蔵ショーケースは近所のカフェからもらったもの。中には手づくりの果実酒やジャムがぎっしり。

ショップにはコーヒー関連の雑誌や本が並ぶ。

ショップにはコーヒー関連の雑誌や本が並ぶ。

店の奥のアップライトピアノにはCDが無造作に積まれていた。

店の奥のアップライトピアノにはCDが無造作に積まれていた。

お手製のケーキと淹れたてのコーヒー。豆が描かれたカップやお皿は、お客様からのプレゼント。

お手製のケーキと淹れたてのコーヒー。豆が描かれたカップやお皿は、お客様からのプレゼント。

真空管アンプは、お客様のジャズギタリストからの預かりもの。

真空管アンプは、お客様のジャズギタリストからの預かりもの。

リフォームの際に須田さん自らが作成したプラン。

リフォームの際に須田さん自らが作成したプラン。


住居部分は自分でリフォーム

住まいとして使っている2階の3部屋は、自らリフォームを行った。「住み始めた8年前から今まで、少しずつですが、手を入れ続けています」。壁には珪藻土を塗り、ドアや階段の天井などもペンキで好みの色に塗って楽しんでいる。

「戸建てのいいところは、自分の好みに合わせて気兼ねなくリフォームできること。時間制限もないので、無理なくコツコツと進められるのもいいんです」。


小窓つきのドアをペンキで3色に塗り分けた。

小窓つきのドアをペンキで3色に塗り分けた。

階段の天井には青空と雲を描いた。

階段の天井には青空と雲を描いた。



2階の一部屋は天井を外し、小屋裏を現しに。ところどころペイントした木部がアクセントになっている。球のかたちの照明器具は、電気屋さんにもらったもの。

2階の一部屋は天井を外し、小屋裏を現しに。ところどころペイントした木部がアクセントになっている。球のかたちの照明器具は、電気屋さんにもらったもの。

2階の1室はペインティングを楽しむためのアトリエとして使っている。

2階の1室はペインティングを楽しむためのアトリエとして使っている。


自由な発想で住みこなす

「楽しみは音楽と料理と写真、そしてペインティングすること」と話す須田さん。豆を焙煎するかたわら、果実酒やジャムなどを作ったり、音楽を聞いたり、忙しい中にも楽しみの多い日々を送っている。「もともとコーヒーも大好きだから、今の暮らしの90%は、楽しみを味わうためのもの」と笑う。

そんな趣味を満喫する場として活躍しているのが、2階の住居スペース。3室ある部屋を、ペインティングのためのアトリエとして、お茶を気楽に楽しむ場として、自由な発想で使いこなしている。

ショップ併設の住まいを舞台に、新たな生き方を手に入れた須田さん。コーヒーを煎る香ばしい匂いに包まれる空間で、充実した時を刻んでいる。


8年前から「お茶」に惹かれている。「茶道というより、オリジナルなお茶の楽しみ方。自由に見立てて気楽に楽しんでいます」。

8年前から「お茶」に惹かれている。「茶道というより、オリジナルなお茶の楽しみ方。自由に見立てて気楽に楽しんでいます」。

押入を利用した床の間のような空間。手前にはすき焼き鍋や五徳、ミニ七輪などを使ったオリジナルの炉が。

押入を利用した床の間のような空間。手前にはすき焼き鍋や五徳、ミニ七輪などを使ったオリジナルの炉が。

音楽好きの須田さん。部屋の片隅にはレコードがたくさん。ブルーのネットは野菜などを干すためのもの。

音楽好きの須田さん。部屋の片隅にはレコードがたくさん。ブルーのネットは野菜などを干すためのもの。



「床の間」のしつらえ。潔く自由な美しさに満ちる。

「床の間」のしつらえ。潔く自由な美しさに満ちる。


桃円