猫と人が同等に共存する家開放感溢れる家は“究極の一軍”のお気に入り

猫と人が同等に共存する家開放感溢れる家は
“究極の一軍”のお気に入り

松本邸では正義・洋子夫妻が3匹の猫たちと共に暮らしている。建てる際には大事な猫たちのことをまず考え、建築家には「猫のために家を建てます」と伝えたという。

「雨の日にテラスに出るとすごく幸せそうなんです」。こんな調子で建築家との打ち合わせではひたすら猫の話をした。それと正義さんがコレクションしているフィギュアなどの話をするだけで打ち合わせがいつも終わってしまうぐらいだったという。


正面の開口からは外に広がる牧歌的な風景が満喫できる。外壁の開口部にはガラスが嵌められていないため、土間部分はどこにいてもほとんど外部と言ってもいいような空間になっている。土間は壁に囲まれている分、猫たちには安全で気持ちの良い空間だ。

正面の開口からは外に広がる牧歌的な風景が満喫できる。外壁の開口部にはガラスが嵌められていないため、土間部分はどこにいてもほとんど外部と言ってもいいような空間になっている。土間は壁に囲まれている分、猫たちには安全で気持ちの良い空間だ。


猫たちのプレイグラウンド

この「猫のための家」は、外からは分からないが、寝室やLDKなど外部と完全に遮断できるスペースとその周りの雨風の直に入る土間部分からなる。そしてこの土間部分が、家の中ながら猫にとっては “外”の役割を果たしている。

猫は、長老で16歳のしまじろうと13歳のルナ、それから家が出来てから加わった新入りの福ちゃんの3匹。家ではこの3匹が1階と2階を自由に行き来し、雨が降ってもそれほど強くなければ外(土間)を自在に移動できる。

「動き回れるスペースが広く起伏にも富んでいるので、ジャンプしてお風呂や開口部分の上に飛び移ったりしてますね。若い福ちゃんは、2階のヘリの部分を歩いたりして思いもかけぬところをプレイグランドとしています」と話すのは洋子さん。


お風呂の上から階段のある方向を見る。

お風呂の上から階段のある方向を見る。

階段の間からこちらをうかがうのは福ちゃん。洋子さんは階段越しに植栽が見えるのがこの家のお気に入りの“絵”のひとつという。

階段の間からこちらをうかがうのは福ちゃん。洋子さんは階段越しに植栽が見えるのがこの家のお気に入りの“絵”のひとつという。

お風呂のあるコーナー部分からは屋上に出ることができる。

お風呂のあるコーナー部分からは屋上に出ることができる。

お風呂の上から入り口のある方向を見る。

お風呂の上から入り口のある方向を見る。


猫のためとは言ってももちろん人間2人のこともじっくりと考えてつくられている。一軒家なので防犯はしっかりしてほしいという要望を出したが、一方で開放感も求めた。「一人暮らしの時も一年中窓はほとんど開けっ放しだったので、ずっと窓を開けていてもいいような家にしたかった」と正義さん。

閉鎖的な1階部分に対して2階部分に大きく開口を取ったつくりは、防犯と開放感という相反する要求に加えて、エアコンを使用しないという2人のライフスタイルなどに対して出された解答でもあったという。


2階に置かれた『スターウォーズ』のR2D2と〇〇〇。ごみ箱などに使用している。

2階に置かれた『スターウォーズ』のR2-D2とR2-R9。ごみ箱などに使用している。

土間部分の棚に置かれているのは、雨に濡れてもいいようにドリンクのカップや浴室用品、旅先で入手したビールビンなど。

土間部分の棚に置かれているのは、雨に濡れてもいいようにドリンクのカップや浴室用品、旅先で入手したビールビンなど。


この何倍もあるコレクションから選び抜かれた“一軍”のみが置かれているため、寝室はこの通りすっきり。

この何倍もあるコレクションから選び抜かれた“一軍”のみが置かれているため、寝室はこの通りすっきり。

小物たちをきれいに並べられた棚。松本夫妻の愛着の深さがうかがわれる。

小物たちがきれいに並べられた棚。松本夫妻の愛着の深さがうかがわれる。

トイレの壁にも棚をつくってお気に入りのフィギュアをこの通りギッシリ。

トイレの壁にも棚をつくってお気に入りのフィギュアをこの通りギッシリ。


ちょっと大変だがすごく楽しい

正義さんは「この家では夏に飲むビールがほんとにおいしい」と言うが、エアコンがないため、夏には40度くらいまで上がることも。そして、土間部分には雨風が容赦なく入ってくる。

中央部分と土間部分を隔てている窓も寝ている時は開けているので外で寝ているのとあまり変わらないという。洋子さんは「引っ越してきたときは雨の音がうるさくてなかなか寝られないぐらいだったんですけど、今は慣れました。人間ってすごいですね」と話すが、越してきた当時はいろいろと思うところがあったという。


お風呂前に植えられた〇〇でハワイアン気分を楽しむ。

お風呂前に植えられたジャカランダでハワイアン気分を楽しむ。

お風呂の前から棚の置かれた空間を見る。

お風呂の前から棚の置かれた空間を見る。

〇〇の脚元にはワニと恐竜のフィギュア。

ジャカランダの脚元にはワニと恐竜のフィギュア。

お風呂の壁にかけられた梯子にスパイダーマン。お風呂は外部にあるため、雨が降れば、出入り時に濡れることも。

お風呂の壁にかけられた梯子にスパイダーマン。お風呂は外部にあるため、雨が降れば、出入り時に濡れることも。


「雨が降ると水たまりが家の中にできる。だから雨の後は土間の水たまりを掻き出すんですね。雪が降った時もたまると掻き出ししたりとかして、なんなんだこの家は~と(笑)」。しかし現在では、普通の家よりも少し不便なほうが住んでいて楽しいし愛着が湧くのかなと思うようになったという。

正義さんは、この家のように四季を直に感じながら過ごすというのはなかなか体験できないのではないかと言う。「ほとんど外のようなものなので外の変化が直に来る。気象条件など外の変化に応じてこの家にはいつも何かが起こっているので、帰宅して“今日何があった?”って聞くんです。そういうのもあって家に飽きていないから、帰ってくるのが今でも楽しいですね」


長老猫のしまじろう。

長老猫のしまじろう。

入り口脇の猫窓で外の様子をうかがう福ちゃん。

入り口脇の猫窓で外の様子をうかがう福ちゃん。

通り側にも猫窓がひとつ

通り側にも猫窓がひとつ

〇〇の木とその脚元に洋子さんが大事に育てる〇〇、〇〇など。

ジューンベリーの木とその脚元に洋子さんが大事に育てるローズマリーとサルビアなど。


シンプルなホワイトボックスに木の扉が素敵にマッチング。

シンプルなホワイトボックスに木の扉が素敵にマッチング。


究極の一軍たち

こうして普通の家では持つことのできないような愛着を寄せる家の1階には、松本夫妻が強い愛着をもったモノたちが多く置かれている。コレクションは正義さんが結婚前から集めていたフィギュアを中心に瓶やマグネットやぬいぐるみなど多種にわたるという。

「この家を建てたことをキッカケに、集めた雑貨の中の一番のお気に入りたち、いわゆる一軍だけを飾ることにしました。他人から見れば、飲み終わった瓶だったり、安価な値段で購入できたりするものばかりで、価値はあまりないのでしょうが…」


2階のLDKは窓を開けるとこの通り。大きな開口に面しているため、ほとんど外部と言ってもいい開放感を味わいながら暮らしている。正義さんは「なにものにも替えられない開放感」と言う。

2階のLDKは窓を開けるとこの通り。大きな開口に面しているため、ほとんど外部と言ってもいい開放感を味わいながら暮らしている。正義さんは「なにものにも替えられない開放感」と言う。


さらに、フローリングやキッチン水栓、照明器具、洗面台、浴槽やシャワー水栓も、建築家と相談したり、自分たちがメーカーまで見に行って選び抜いた、“超一軍”のものばかりという。

「だから、今まで集めた一軍の雑貨を飾ってある我が家は、わたしたちにとって究極の一軍のお気に入りなんです」。開放感溢れる空間を猫たちと共に楽しく満喫し、かつ、お気に入りのものたちに囲まれて暮らす毎日…松本夫妻の笑顔からもその充実ぶりが伝わってきた。


松本邸
設計 保坂猛建築都市設計事務所
所在地 東京都葛飾区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 91㎡