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住宅地の中の〈モダンな山荘〉家、庭、食、遊び、
基本はすべて“自然”

住宅地の中のモダンな山荘 家、庭、食、遊び、 基本はすべて“自然”
さいたま市与野の住宅地に立つ中村邸。この家を設計する際に、奥さんは、山荘のような家にしてほしいと建築家に依頼したという。

「私は田舎が柏崎なんですが、避暑地みたいに快適で、夏の家って感じなんですね。あと、大学のときのゼミの先生が八ヶ岳に山荘を持っていて、いつも行っていたんです。今も1年に2回ぐらい行きますが、そこも、夏の家みたいで、自然に溢れていて…」


2階の壁はこのように屋根の形のまま傾斜している。
2階の壁はこのように屋根の形のまま傾斜している。
吹き抜けになっているリビングを見下ろす。
吹き抜けになっているリビングを見下ろす。


テレビの置かれている壁面の裏が玄関。リビングには布製のブランコが吊るされている。
テレビの置かれている壁面の裏が玄関。リビングには布製のブランコが吊るされている。

遊びも家も自然志向

夏には緑があたりいっぱいに生い茂る自然環境のもとで育った奥さんは、自然遊びも大好きだという。キャンプに釣りに、春先にはクロスカントリーも。夏には、7、8回は泊まり込みで海、山、川へ家族で遊びに出かける。

「うちの旦那さんが登山が好きなんですが、子どもがまだ5歳なので去年あたりからの旅行は登山をかねたハイキングが多いですね。それと川遊び」


リビングからダイニングを見る。21cmと深さのある梁が特徴的な空間。
リビングからダイニングを見る。21cmと深さのある梁(一番手前の大梁のみ、30cm)が特徴的な空間。
キッチンのトップをタイルにしたのは掃除のしやすさを考えてと、パン屋さんでステンレスに囲まれて仕事をしているので違いを付けたかったから。
キッチンのトップをタイルにしたのは掃除のしやすさを考えてと、パン屋さんでステンレスに囲まれて仕事をしているので違いを付けたかったから。

この“自然大好き”の家族には山荘風の家がいかにもふさわしい。方形屋根を持つこの家は、1、2階とも21cmと深さのある梁を小屋裏風にそのまま見せ、2階部分の壁は、屋根の形のままに傾斜してダイナミックな印象も与える。

奥さんのお友だちなどには、白塗装の壁でモダンなテイストの加わった室内が“素敵”と評判がいいそうだが、その子どもたちはと言えば、山荘風のつくりに野生の血が呼び覚まされるのか1階の布製のブランコに大喜びで取り合いになり、中には、2階から1階リビングのソファまで飛び降りる猛者までいるという。

この家の道路側には奥さんが経営するパン屋さんが隣接して立つが、家と同時に竣工したこのパン屋さんのコンセプトも、同じく“自然志向”で、山小屋をイメージしたものだという。


山小屋のような板張りのこのパン屋さんは7年ほど前に開業した。その後ろには中村邸が見える。
山小屋のような板張りのこのパン屋さんは7年ほど前に開業した。その後ろには中村邸が見える。
カレーパンやあんパンなどのほかに、さつまいもやとろろ明太子を使ったものなど、多種類のパンが並ぶ。
カレーパンやあんパンなどのほかに、さつまいもやとろろ明太子を使ったものなど、多種類のパンが並ぶ。
トップライトの光が内部空間に変化をもたらす。
トップライトの光が内部空間に変化をもたらす。
暖色系のインテリアがお客さんを温かく迎える。角食パンや、パンドミー、胚芽の食パンなどが人気という。
暖色系のインテリアがお客さんを温かく迎える。角食パンや、パンドミー、胚芽の食パンなどが人気という。
左が乳酸菌酵母を使った食パン。独特の風味としっとり感が特徴だという。
左が乳酸菌酵母を使った食パン。独特の風味としっとり感が特徴だという。
パン屋さんの左脇を進むと中村邸の庭へと通ずる。
パン屋さんの左脇を進むと中村邸の庭へと通ずる。


食も自然がいちばん

“自然志向”は、家だけにとどまらない。家の裏手にある畑では野菜を無農薬で栽培して、レタス、ミント、バジル、ナス、ブロッコリーなどは、パン屋さんでもけっこう使っているという。

自然な食へのこだわりが生まれたのは柏崎時代にさかのぼる。「私の子どもの頃から、母が無農薬の野菜を取り寄せて食べさせてくれていたんです。そういう野菜ってすごくおいしくて甘みが違うんですよ。それでたぶん食への関心が強いのかなと」


屋根・外壁はガルバリウム鋼板。壁際にはバーベキュー用の煉瓦が積まれている。奥に見えるのはパン屋さんの屋根。
屋根・外壁はガルバリウム鋼板。壁際にはバーベキュー用の煉瓦が積まれている。奥に見えるのはパン屋さんの屋根。
レタス、ミント、バジル、ブロッコリーなど、裏手にある畑で作った野菜は、パンにも使われる。
レタス、ミント、バジル、ブロッコリーなど、裏手にある畑で作った野菜は、パンにも使われる。
この塀を右に折れると玄関。デッキの手前の木はシマトネリコ。
この塀を右に折れると玄関。デッキの手前の木はシマトネリコ。
手前の塀の向こう側にケヤキ、奥の塀の手前にはユーカリの木。庭には、ラベンダーやローズマリーなどのハーブ系も多い。
手前の塀の向こう側にケヤキ、奥の塀の手前にはユーカリの木。庭には、ラベンダーやローズマリーなどのハーブ系も多い。
木だけのパン屋さんの外観と対照的な、中村邸の金属屋根が見える。
木だけのパン屋さんの外観と対照的な、中村邸の金属屋根が見える。


庭のテーマは香り

竹やミョウガ、クチナシなど、柏崎の実家から持ってきた植物のほか、多種類の草木が植えられた庭には、バラの名所だという近くの与野公園にちなんだバラのほか、ジャスミンやクチナシなど香りの強いものが多い。「パンのいい香りとお花のいい香りを嗅いで帰ってもらえたらいいなと思って」選んだものだ。

「実際、パンを買いに来て庭を見て行かれる人がけっこう多くて、いい香りねってお店の人に言ってきたり、あと、家に植えたいので名前を教えてくださいなんていう人もいらっしゃいますね」


パン屋さんの壁際のブルーベリーの木。
パン屋さんの壁際のブルーベリーの木。
庭でサンショウの葉を摘む奥さん。
庭でサンショウの葉を摘む奥さん。
5月の満開時のバラ(写真=中村さん提供)。
5月の満開時のバラ(写真=中村さん提供)。
パン屋さんとの間のスペースに植えられたモミジ、竹と、奥にミョウガ。
パン屋さんとの間のスペースに植えられたモミジ、竹と、奥にミョウガ。


その庭の一角には、バーべキュー用に煉瓦が積まれていた。パン屋さんのスタッフや大学時代の友だち、さらに最近では保育園のママ友を呼んでいろんな食材を焼くのだという。

山荘風の家の、草木に囲まれた庭先でのバーベキュー。大自然のもとでのように、さぞ食が進むことだろう。


中村邸
設計 ファロ・デザイン
所在地 埼玉県さいたま市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 92.75m2