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住まいと庭のハーモニーこだわりのインテリアと
開放感あふれる庭を愉しむ

住まいと庭のハーモニー こだわりのインテリアと 開放感あふれる庭を愉しむ

内と外をゆるやかにつなぐプラン

神奈川県の閑静な住宅街に建つT邸。玄関からリビングへ足を踏み入れると、そこにはシンプルな外観からは想像もつかない、贅沢な空間が広がっている。

十数年前に、古屋付物件としてこの土地を手に入れたTさん。「その古屋というのが、40年ほど前に著名な建築家が建てた自邸だったんです。ひと目見て壊すのはもったいないと、リフォームや修繕をしながら10年ほど住みました。けれども雨漏りとシロアリがどうにもならなくなって、建て替えることを決意したんです」。

「素晴らしい家を建て替える以上は、理想の住まいを実現させたい」と考えたTさん。その家づくりのパートナーには、かねてから注目していた建築プロデュース会社「ハウスアンドハウス」を選んだ。「プランをはじめ、素材や仕上げなどについても、自分の理想を細かく伝えました」とTさん。プランに関しても、以前の住まいの良いところをいかしつつ、新たな要素を付け加えた。「東南に向けて庭があるなど、敷地と建物の関係はさすがによく考えられていたので、そのまま生かしました。それに加えて、靴のまま内と外を自由に行き来できる開放感ある家にしたかったんです」。


2階からリビングを見下ろす。リビングにも庭にも同じテラコッタタイルを敷いているため、内と外に連続性が生まれている。
2階からリビングを見下ろす。リビングにも庭にも同じテラコッタタイルを敷いているため、内と外に連続性が生まれている。
リビングから吹き抜けを見上げる。吹き抜けは最も高いところで10メートルある。左手のタイルに囲まれた部屋はTさんの書斎。
リビングから吹き抜けを見上げる。吹き抜けは最も高いところで10メートルある。左手のタイルに囲まれた部屋はTさんの書斎。

テラコッタタイルや陶磁器タイル、漆喰といった土系の素材と、アルミニウムのメタリックな質感が引き立て合う。開口部を意識的に設けているため、室内を風が通り抜けていく。
テラコッタタイルや陶磁器タイル、漆喰といった土系の素材と、アルミニウムのメタリックな質感が引き立て合う。開口部を意識的に設けているため、室内を風が通り抜けていく。
特注のらせん階段。踏み板には床材と同じてラッコタイルを砕いて使った。「砕いたタイルの色や形のバランスをとるのに、左官の職人さんがとても苦労していました」(Tさん)。
特注のらせん階段。踏み板には床材と同じてラッコタイルを砕いて使った。「砕いたタイルの色や形のバランスをとるのに、左官の職人さんがとても苦労していました」(Tさん)。


アウトドアリビングとしての庭

こうして完成したT邸のメインとなるのは、吹き抜けの広いリビングとダイニングキッチンがひと続きとなった1階の大空間。床には一面に六角形のテラコッタタイルが敷かれ、リビングに続く庭にも同じタイルを敷き詰めている。「住まいと庭をつなぐ要素として、床材にはこだわりました。フランスの古城で使われていたタイルを船で運んだのですが、数に限りがあったので、リビングと庭の全面に敷いて足りるか心配しながらの施工でした(笑)」。

この庭を手がけたのは、インテリアやガーデンのプランニングを手がけるRUSTIC GOLD。「T邸のインテリアに調和する庭づくりを心がけました」と話すとおり、住まいと一体となった美しくモダンなガーデンをつくり上げた。

T邸の庭の特徴は、眺めたりガーデニングを楽しむだけでなく、アウトドアリビングとしてくつろげること。パーゴラやフェンスを設えることで安心感が生まれ、屋外にいながらゆったりとした気分で過ごすことができる。なかでもユニークなのが、植物を植え込んだガルバナイズ(亜鉛メッキ)の壁。奥さんは「まわりからの視線を遮るものがほしいとお願いしたら、この壁を提案してくださって。思いもつかない提案にビックリしたけれど、とっても素敵で気に入っています」と笑う。


らせん階段側からリビングと庭を見る。周囲の視線を遮る壁の効果で、庭も室内の一部のように感じられる。
らせん階段側からリビングと庭を見る。周囲の視線を遮る壁の効果で、庭も室内の一部のように感じられる。
ダイニングからリビング越しに庭を見る。パーゴラが頭上を覆っているため、庭でもゆったりとくつろぐことができる。
ダイニングからリビング越しに庭を見る。パーゴラが頭上を覆っているため、庭でもゆったりとくつろぐことができる。

プランターも、室内のインテリアに合わせてブリキなどメタリックなものを使っている。
プランターも、室内のインテリアに合わせてブリキなどメタリックなものを使っている。
パーティカル・ガーデンには、くぼみの部分に土を入れ、多肉植物など多様な植物を植え込んでいる。
パーティカル・ガーデンには、くぼみの部分に土を入れ、多肉植物など多様な植物を植え込んでいる。


Tさん夫妻とRUSTIC GOLDの木堂夫妻は、以前からお互いの家を行き来する友人同士。パーゴラはイペ材を用い、オイルヒーターに使われる銅管にバラをはわせるなど、庭の資材にも徹底的にこだわっている。
Tさん夫妻とRUSTIC GOLDの木堂夫妻は、以前からお互いの家を行き来する友人同士。パーゴラはイペ材を用い、オイルヒーターに使われる銅管にバラをはわせるなど、庭の資材にも徹底的にこだわっている。

アンティークとメタルが融合したインテリア

Tさんの素材へのこだわりは、テラコッタタイルだけにとどまらない。漆喰の壁にはブルーの陶磁器タイルがふんだんに配され、空間に独特の表情を添えている。「お仕着せの建材はいやだったので、すべて本物の自然素材で、自分の納得のいくものを選びました」。

その自然素材で構成された空間を引き締めているのが、アンティークの風合いとメタルの質感が絶妙にマッチしたインテリアだ。年代ものの小物や革のソファといった重厚感あるモノにメタルを組み合わせることで、T邸ならではの軽やかな雰囲気が生まれている。

そんなインテリアを象徴するのが、暖炉を挟んだ壁に造り付けられた棚。これはなんと工事現場の足場板を利用したものだそう。「棚板に何を使おうかなとずっと考えていたんです。ある日施工中の現場を訪れたときに足場板を見て、これだ! と思いました」。


南側の壁に設えた暖炉。煙路は天井までフランス製のブルーのタイルで覆われている。
南側の壁に設えた暖炉。煙路は天井までフランス製のブルーのタイルで覆われている。
手前に見えるのは1900年頃につくられたモールス信号機で、船に載せられていたものだそう。
手前に見えるのは1900年頃につくられたモールス信号機で、船に載せられていたものだそう。
南側の壁は一部ガラスブロックとし、光を取り込んでいる。ソファをはじめ、家具の多くがHALOのもの。
南側の壁は一部ガラスブロックとし、光を取り込んでいる。ソファをはじめ、家具の多くがHALOのもの。
足場板を利用した棚板。強度も十分あるため、重いものを置いても問題ない。
足場板を利用した棚板。強度も十分あるため、重いものを置いても問題ない。


住まいは、生きざま

開放的なリビングに対して、キッチンとダイニングは天井高が抑えられており、落ち着いて食事が出来るように配慮されている。「キッチンに立っていると、リビングと庭をすべて見渡せて、とても気分がいいんですよ」(奥さん)。

日頃から「住まいは生きざま」だと考えているというTさん。新たな家で暮らして2年が経つが、「仕事から帰ってくつろぐ場として、ラフな感じで過ごせるところが気に入っています」と話す。「リビングから庭を眺めていると、住宅街にいるのに、なんだかリゾートにいるような気がしてくるんです」という奥さんの言葉が、この住まいの開放感を物語っていた。


天井が低く抑えられたダイニングとキッチン。印象的な照明はDULTONのもの。
天井が低く抑えられたダイニングとキッチン。印象的な照明はDULTONのもの。
ボストンテリアのサブローを抱く奥さん。背後のピアノは、奥さんと二人の息子さんが弾いている。
ボストンテリアのサブローを抱く奥さん。背後のピアノは、奥さんと二人の息子さんが弾いている。
キッチンは実用性を重視してヤマハのシステムキッチンを導入している。
キッチンは実用性を重視してヤマハのシステムキッチンを導入している。


シンプルな外観。四角い開口部がアクセントになっている。
シンプルな外観。四角い開口部がアクセントになっている。