フィギュアたちと暮らす家明るい部屋で自然に、気持ちは前向きに

フィギュアたちと暮らす家明るい部屋で
自然に、気持ちは前向きに

「このリビングのスペースは大好きですね。日を浴びながら犬とこうやって過ごしているとすごい幸せだなぁ~って感じます」。こう語るのは、丸山公世さん。千駄木の3.6×17.8mの敷地に立つ家で、お母様と娘さんの3人で暮らしている。

建物は敷地とほぼ同じ3.3×16mという奥に細長く延びる形をしている。周りに家が建て込んでいるため、元々ここにあった家は薄暗く、ほとんどの部屋が昼間から電気をつける必要があったという。建築家には、真ん中に中庭をつくるなどしてできるだけ光を採り入れるようリクエストしたが、試行錯誤の結果、中庭はやめて2階の吹き抜け部分の南北面に大開口のハイサイドライトをつくることに。


キッチンからリビングを見る。公世さんの膝の上には愛犬のマック。手前の大きなフィギュアはウルトラシリーズのカネゴン。南側のハイサイドライトにロールカーテンが引かれている時は、室内にやさしい光が拡散する。

キッチンからリビングを見る。公世さんの膝の上には愛犬のマック。手前の大きなフィギュアはウルトラシリーズのカネゴン。南側のハイサイドライトにロールカーテンが引かれている時は、室内にやさしい光が拡散する。

リビング南側のハイサイドライトからふんだんに光が入る。床は“フランスの農家風”をイメージしてパイン材に。

リビング南側のハイサイドライトからふんだんに光が入る。床は“フランスの農家風”をイメージしてパイン材に。

北側の窓からは青空がよく見える。手前のテーブルは結婚当時、サザビーで購入したアンティークもの。

北側の窓からは青空がよく見える。手前のテーブルは結婚当時、サザビーで購入したアンティークもの。


ほんとに自分の家?

拭くのは大変だが、この窓の大きさと天井の高さがすごく気にいっているという公世さん。「とにかく気持ちが良くて、引き渡しの日に娘と2人で、“これ、ほんとに自分の家?”というぐらいに感動してしまって」

あまりにもテンションが上がってしまい、引っ越し当初はホテルで出るような朝食を用意したというエピソードからもその高揚ぶりが伝わる。


リビングの吹き抜けを通して、家の前の通りまで視線が抜ける。

リビングの吹き抜けを通して、家の前の通りまで視線が抜ける。

左の長い棚により、棚と棚上に置かれたものに視線が行き、空間の細長さと壁に挟まれている感じが気にならない。

左の長い棚により、棚と棚上に置かれたものに視線が行き、空間の細長さと壁に挟まれている感じが気にならない。


中庭案は、1階まで明るくなるようにと考えられたものだったが、設計の途中まであったその中庭の役割は、リビング後方にある階段が果たしている。ハイサイドライトから採り入れられた光がまっ白の階段空間を下りていって1階まで十分な明るさをもたらしている。踏み面をエキスパンドメタルにしたのは光を透過させてより多くの光を届けるためだそうだ。

ほかにリビングの床材やキッチン周りのことなど、2階部分に関しては公世さんが主に建築家に要望を伝え打ち合わせを重ねたが、1階はこの家の竣工直前に病気で亡くなられた夫の哲司さんが担当したという。


階段の踏み面はより多くの光を1階まで落とすためにエキスパンドメタルを採用。

階段の踏み面はより多くの光を1階まで落とすためにエキスパンドメタルを採用。

寝室前の踊り場に置かれたマネキン。哲司さんが入手したもの。

寝室前の踊り場に置かれたマネキン。哲司さんが入手したもの。


フィギュアと昭和レトロ

哲司さんはTVや映画の人気キャラクターのフィギュアのコレクターだった。「元は円谷プロのウルトラQやウルトラマンシリーズものを集めていたんですが、そのうち『スターウォーズ』やら『猿の惑星』やらと拡がって増えていったんです」

コレクションには、ウルトラシリーズのほかに、タイガーマスクやマグマ大使、鉄人28号等々、懐かしい名前が並ぶが、夫妻が小学校くらいまでに観たTV番組が主体となっているという。


店舗の壁に設置された長い棚には、フィギュアがずらりと並ぶ。フィギュアの収められていた箱にはマグマ大使、鉄腕アトムなど懐かしい名前が並ぶ。

店舗の壁に設置された長い棚には、フィギュアがずらりと並ぶ。フィギュアの収められていた箱にはマグマ大使、鉄腕アトムなど懐かしい名前が並ぶ。


以前に住んでいた梅ヶ丘の家のリビングはこれらのフィギュアに囲まれていたが、新築する家のリビングにはフィギュアを入れないと決めていたので、1階部分の設計では、お母様が営まれている床屋さんのスペースになるべくたくさんのフィギュアが置けるようにするというのがポイントだったという。

コレクションのレイアウトを考えながら採用されたのが、約5.5mある壁の長さを生かして長い棚を設置しそこにフィギュアを並べるという案だった。これならばたくさんのフィギュアを並べられ、かつ、フィギュアをじっくりと見て楽しむこともできる。


店舗の出窓部分を中から見る。いちばん上の棚の真ん中は、『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじ。

店舗の出窓部分を中から見る。いちばん上の棚の真ん中は、『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじ。

照明をはじめ、昭和レトロな雰囲気にこだわった店舗部分。手前は公世さんのお母様。昭和32年から床屋を続けられている。

照明をはじめ、昭和レトロな雰囲気にこだわった店舗部分。手前は公世さんのお母様。昭和32年から床屋を続けられている。

『猿の惑星』のフィギュアとともにタイガーマスクやピグモンなども並ぶ。

『猿の惑星』のフィギュアとともにタイガーマスクやピグモンなども並ぶ。

2階寝室の収納には、ウルトラシリーズのフィギュアなどが収められている。

2階寝室の収納には、ウルトラシリーズのフィギュアなどが収められている。

1階の床屋さんに入ると、ウルトラセブンやブースカたちが迎えてくれる。

1階の床屋さんに入ると、ウルトラセブンやブースカたちが迎えてくれる。

椅子は『スターウォーズ』のストーム・トルーパーのイメージで張り替えた。

椅子は『スターウォーズ』のストーム・トルーパーのイメージで張り替えた。

フィギュアの収められたケースを通して入り口を見る。

フィギュアの収められたケースを通して入り口を見る。
 

存在感抜群のカネゴンは型から起こして30体製作されたうちのひとつ。

存在感抜群のカネゴンは型から起こして30体製作されたうちのひとつ。


コレクションのレイアウトと同時に哲司さんがこだわったのは、このスペースを昭和レトロな雰囲気でまとめることだった。昭和にこだわったのは、“谷根千”の街のもつ昭和の雰囲気に触発されてという。

そのため、照明や収納などに昭和レトロ風なデザインのものが採用されているが、1階の店舗部分で、どこか懐かしさの漂う独特な空気感がつくり出されているのは、もちろん、タイガーマスクや鉄腕アトムといった昭和の人気キャラクターたちの存在も大きいだろう。


1階の店舗側から奥を見る。クリスマスヴァージョンの服を着たウルトラマンの後ろにはマンガなどを収めた棚が長く続く。

1階の店舗側から奥を見る。クリスマスヴァージョンの服を着たウルトラマンの後ろにはマンガなどを収めた棚が長く続く。

棚の一部とも見られるようにつくられた収納。中には、鏡と化粧品などが収められている。

棚の一部とも見られるようにつくられた収納。中には、鏡と化粧品などが収められている。

ものを“見せる”棚のため、食器類もこの通り、きれいに並べられている。

ものを“見せる”棚のため、食器類もこの通り、きれいに並べられている。

戸の色にもこだわり、公世さんが塗料メーカーのショールームまで行って色を作ってもらったという。奥のイエロー部分は納戸の戸。

戸の色にもこだわり、公世さんが塗料メーカーのショールームまで行って色をつくってもらったという。奥のイエロー部分は納戸の戸。


1階、2階と、家族のそれぞれの思いが込められて建てられたこの家。公世さんは、以前とは打って変わり明るく広くなったここでの生活では、気持ちが自然に前向きになる、と語ってくれた。

「家によって自分自身が変わっていくこともあると思うんですね。生活とともに自分の体が家にフィットしていく…その通りだなって実感しています」


丸山邸
設計 ikmo
所在地 東京都文京区
構造 木造
規模 2階
延床面積 107.22㎡
床屋のサインポールは古いものを修理して使用している。これも昭和レトロの雰囲気をつくるのに一役買っている。

床屋のサインポールは古いものを修理して使用している。これも昭和レトロの雰囲気をつくるのに一役買っている。