Interior

マンションの中の小さな店-2-表参道「yumiko
iihoshi porcelain」

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シンプルながら温かみのある器で人気の「yumiko iihoshi porcelain」。2年前にオープンした東京店は原宿の名物ヴィンテージマンション「コープオリンピア」の一室にある。

東京オリンピックの翌年、1965年に完成したコープオリンピア。並木道に続くケヤキの緑が映えるようデザインされた重厚感のある外観が特徴だ。竣工当時としては珍しいエレベーターや空調設備を備え、ホテルのようなフロントサービスを取り入れたことも話題となり、時代の先端を行く集合住宅として注目を集めた。それから半世紀以上経った今も当時の趣を色濃く残しているコープオリンピアは、ヴィンテージマンションとしてさらに高い人気を集めている。ここに店を構えたのが「yumiko iihoshi porcelain」だ。イイホシユミコさんが「手づくりとプロダクトの境界にあるもの」をテーマに魅力的な器を発表しているブランドで、幅広い層から支持されている。建物に入ったらまずマンションのフロントで店の名を告げ、エレベーターで2階へ向かう。赤絨毯が敷かれた内廊下を進んだ先に店がある。東京店には全種類の器が揃うほか、人気シリーズ「un jour」の直営店限定カラー、ピンクも並ぶ。


オープンは2014年11月1日。店にふさわしい場所選びに時間をかけたという。大阪の直営店もヴィンテージビルに入居している。
オープンは2014年11月1日。店にふさわしい場所選びに時間をかけたという。大阪の直営店もヴィンテージビルに入居している。
イイホシさんのプロダクト第一作「un jour」。ピンクは直営店限定のカラー。
イイホシさんのプロダクト第一作「un jour」。ピンクは直営店限定のカラー。
磁器で作られたハットのような形をした照明。逆さまにして中に花を生けて花瓶としても。
磁器で作られたハットのような形をした照明。逆さまにして中に花を生けて花瓶としても。
「ReIRABO」のシリーズ。和にも洋にも合う人気の器だ。
「ReIRABO」のシリーズ。和にも洋にも合う人気の器だ。


イイホシさんが手がける器を眺めていると、「これには何の料理を載せようか」と日常で使っているシーンが自然と想像できる。それはイイホシさんがデザインするときに心がけていることの一つで、シリーズそれぞれにテーマを設け、それに由来した名前を付けている。まず「un jour」。フランス語で「1日」を表すこのシリーズは、その名の通り、朝、昼、夜それぞれのシーンで使いやすい器をデザインしている。たとえばカップは3サイズ。matinのカップはたっぷりのカフェオレを飲むのに最適な大きいサイズで、apres midiは昼下がりに飲む紅茶を入れ、nuitは夜更けに飲むコーヒーにぴったりの小さなサイズだ。そういうふうに何気ないふだんの食事を楽しませてくれる魅力がある。把手がついた珍しいプレート「bon voyage」は「旅に持っていく食器」をテーマに、ヒモをつけて旅に持っていけるように作られている。旅先でも外食だけでなく、自分で料理を作ったり、買って来た食事を器に盛り付ける楽しみを提案している。


「un jour」。色は写真のモクの他に、スモークブルー、ルリ、ナミ、スナ、ピンクの6色。
「un jour」。色は写真のモクの他に、スモークブルー、ルリ、ナミ、スナ、ピンクの6色。
「bon voyage」のS、Lサイズはホワイト、グレイ、グリーンの3色展開。さらに小さなSSサイズには3色のほかにイエローとブラウンがある。
「bon voyage」のS、Lサイズはホワイト、グレイ、グリーンの3色展開。さらに小さなSSサイズには3色のほかにイエローとブラウンがある。
鎌倉のカレーの名店「OXYMORON」のために作られた器のシリーズ。渋みのある色合いは男性にも人気だという。
鎌倉のカレーの名店「OXYMORON」のために作られた器のシリーズ。渋みのある色合いは男性にも人気だという。
急須は三重県の萬古焼の手法で作られたもの。吸水性が低いため、匂いが残りにくく、日本茶以外にも紅茶やハーブティなどさまざまなお茶を楽しめる。
急須は三重県の萬古焼の手法で作られたもの。吸水性が低いため、匂いが残りにくく、日本茶以外にも紅茶やハーブティなどさまざまなお茶を楽しめる。

「yumiko iihoshi porcelain」の器に合うカトラリーをセレクト。買いやすい価格、使いやすいサイズ感でさまざまな種類がラインナップ。横にあるのは小さなマグカップの形をした磁器のチャーム。
「yumiko iihoshi porcelain」の器に合うカトラリーをセレクト。買いやすい価格、使いやすいサイズ感でさまざまな種類がラインナップ。横にあるのは小さなマグカップの形をした磁器のチャーム。

新作は花の雌しべの形をした黒文字の「Meshibe」だ。ステンレスと銅の2種類があり、和菓子を食べる時はもちろん、チーズやフルーツを食べる時にはピックとしても活躍する。昨年、発表された「ReIRABO」は、伝統的な釉薬である伊羅保釉を用いてつくられたシリーズ。色の出具合に差があり、大量生産には不向きと言われていたが、あえてその個体差を魅力として打ち出し、生産化につなげた。独特の色合い、風合いがモダンなデザインに落とし込んだ器は、オーバルプレートとラウンドプレート、カップで展開をしている。ガラスのシリーズ「glass/tumbler」は木村硝子に依頼してオリジナルで作ったもの。職人がひとつずつ型吹きで作ったグラスは、ふだん使いにもフォーマルにも対応する人気のアイテムだ。
「手作りのものは手跡が残らないように。プロダクトのものは味気ないものにならないように」と作られている「yumiko iihoshi porcelain」の器。手作りのものは釉薬の色の出具合が違うものがあるので、気になる器があれば、スタッフが同じ器をいくつか出してくれる。色の出具合が微妙に違うからこそ、その中から一番好みのものを選んでもらえるようにしているという。店の中央に置かれた白いテーブルは客が自由に組み合わせて選べるスペースだ。「日本人の方はもちろん、最近は海外のお客様も多く、ここで真剣に器を選ばれている姿が印象的です」とスタッフ。ノスタルジックな空気が流れるコープオリンピアで器選びが堪能できる。


新作の黒文字「meshibe」。合わせているのはReIRABOのラウンドプレート。
新作の黒文字「meshibe」。合わせているのはReIRABOのラウンドプレート。
「ReIRABO」のシリーズ。食材を引き立てる色味と使い勝手のいいサイズ感。和洋折衷で、さまざまな食事に合う。
「ReIRABO」のシリーズ。食材を引き立てる色味と使い勝手のいいサイズ感。和洋折衷で、さまざまな食事に合う。

木村硝子店に依頼してオリジナルで作ったタンブラーとワイングラス。飲み物用としてだけでなく、デザートカップにも利用できる。ワイングラスはスタッキングが可能。
木村硝子店に依頼してオリジナルで作ったタンブラーとワイングラス。飲み物用としてだけでなく、デザートカップにも利用できる。ワイングラスはスタッキングが可能。

yumiko iihoshi porcelain
東京都渋谷区神宮前6-35-3 コープオリンピア221号室
03-6433-5466
12:00〜19:00
火曜休