楽しみながらリノベーション小物から空間まで、“あるもの”を工夫して再利用

楽しみながらリノベーション小物から空間まで、
“あるもの”を工夫して再利用

「友達を家に呼びたいなと思って」と石沢さん。「それで友達が集まりやすい感じの家がいいなと」

友達というのは石沢さんのカメラマン仲間のこと。家に招くときはその家族も一緒だ。多いときは4家族くらいが集まるという。「集まると、男が飲みながら料理を作って女の人はこのテーブルに座って喋っているみたいな感じで。子どもたちはリビングの方で遊んでいます」


ダイニング部分からリビング方向を見る。右に土間スペース。白と茶系のシンプルな色の組み合わせが心地の良いくつろぎ感をもたらす。

ダイニング部分からリビング方向を見る。右に土間スペース。白と茶系のシンプルな色の組み合わせが心地の良いくつろぎ感をもたらす。


0から作るより面白そう

数人でも調理ができる大きめのキッチンスペースとゆったりとくつろげるLDスペース。友人達と楽しく過ごせるスペースを実現した石沢邸は、中古の住宅を購入してリノベーションしたものだ。新築を選ばなかったのはコスト的なこともあったが、新築よりも改修の方に惹かれたのも理由のひとつだったという。

「たとえば柱とか、元からあったものを生かして空間をつくるのが、0からつくるよりも面白そうで…」。ダイニングテーブル近くの収納スペースは、以前出窓だったスペースを作り変えたもので、棚には撮影時に使用する小物などがディスプレイされている。テレビが置かれているスペースも、元は同じく出窓だったところだ。


ハンス・ウェグナーのソファ〈GE290〉でくつろぐ石沢夫妻。その斜め前にある椅子は、ボーエ・モーエンセンのスパニッシュチェア。ともに北欧デザイン。

ハンス・ウェグナーのソファ〈GE290〉でくつろぐ石沢夫妻。その斜め前にある椅子は、ボーエ・モーエンセンのスパニッシュチェア。ともに北欧デザイン。


白く塗られたX形のスチール材も2つの収納部分と同じ“転用組”だ。1階の空間デザイン上の大きなポイントとなっているこのX形のものは、元の家の壁に入っていた、構造補強用のブレース(筋かい)。残っていた図面からは分からなかったが、壁の中をチェックしたところ6カ所の壁に入っていたためそのすべてをデザインとして生かすことにした。

玄関とダイニングを隔てる壁が途中で折れ曲がり斜めになっているが、この壁、実は中が階段室になっていて、これも空間デザインにうまく生かされている。石沢さん曰く、「新築だとこういうデザインってなかなか思いつかないかないですよね」


リビング部分。道路側の開口の脇にあるのはウランベータというゴム系の木で、竣工祝いに建築家から贈られたもの。

リビング部分。道路側の開口の脇にあるのはウランベータというゴム系の木で、竣工祝いに建築家から贈られたもの。

X型のブレースは、改修前の家では壁の中に収まっていたもの。赤茶だったものを白く塗装しデザインとして再利用。

X型のブレースは、改修前の家では壁の中に収まっていたもの。赤茶だったものを白く塗装しデザインとして再利用。


リビングから土間を通してデッキを見る。ウェグナーのソファは、奥さんがこの家でいちばんお気に入りの場所。寝転んで、映画観たりとか本読んだりするのが好きという。

リビングから土間を通してデッキを見る。ウェグナーのソファは、奥さんがこの家でいちばんお気に入りの場所。寝転んで、映画観たりとか本読んだりするのが好きという。


家具がきれいに見える家

リノベーションをする際には、「友達が集まりやすい家」とともに、「家具がきれいに見える家」というのも大きなテーマだったそうだ。建築家は、石沢夫妻がすでにもっていた家具がきれいに見えるようにその周囲の空間をデザインしていったという。

内装材には、石沢家の家具には木の素材感が合うとオーク材が選択された。竣工後に新たに加わった家具や家のそここに置かれた小物たちもそのオーク材にとても馴染んで違和感がない。


訪れた友人達に「みんなで料理が出来ていいね」とよくほめられるというキッチンカウンター。正面の壁のブル―がほどよいアクセントとなって空間デザインに変化をもたらしている。

訪れた友人達に「みんなで料理が出来ていいね」とよくほめられるというキッチンカウンター。正面の壁のブル―がほどよいアクセントとなって空間デザインに変化をもたらしている。

キッチンカウンター前にあるのは、石沢さん手作りの椅子。

キッチンカウンター前にあるのは、石沢さん手作りの椅子。

数人でも調理ができるゆったりとしたキッチンスペース。

数人でも調理ができるゆったりとしたキッチンスペース。


リビングからDKを見る。パーティなどで大人数になったときは、テーブルの天板を左右にスライドさせて大きくして対応。左の壁の中身は階段室+収納。

リビングからDKを見る。パーティなどで大人数になったときは、テーブルの天板を左右にスライドさせて大きくして対応。左の壁の中身は階段室+収納。


手作り感覚とリノベーション

家具同様、小物も年季の入ったものがほとんどだが、一部には手を加えてつくったものも。

テレビと同じ棚に置かれたフレームには、モダンアートのパピエ・コレ(コラージュの一種)のようなものが収まっているが、実はこれ、リビングに置かれたスパニッシュチェアの裏に貼ってあったペーパーを使って作ったもの。「椅子の革をメンテナンスするときにはがしたものを、なんかいいなあと思って再利用したもの」だという。

自分の手を動かしてモノを作るのが好きだという石沢さん。キッチンカウンター前の、革と未加工の木からなるシンプルな椅子もお手製で、ソファのクッションはミシンで自ら縫ったものだ。


収納棚横の壁には、ハワイや代官山で撮った写真が貼ってある。テープの色にもこだわり貼り方も一工夫。

収納棚横の壁には、ハワイや代官山で撮った写真が貼ってある。テープの色にもこだわり貼り方も一工夫。

オレンジの本はペンギンブックスの古いものがほしくてイギリスで購入したサマセット・モームの『月と六ペンス』。

オレンジの本はペンギンブックスの古いものがほしくてイギリスで購入したサマセット・モームの『月と六ペンス』。

玄関ホールの収納の上のフレームには、J・シュトラウスほかの楽曲を収録した楽譜の表紙が収められている。

玄関ホールの収納の上のフレームには、J・シュトラウスほかの楽曲を収録した楽譜の表紙が収められている。

アウトドアフェスティバルでのフリーマーケットで見つけたラジオ。「NATIONAL PANASONIC」の文字がある。

アウトドアフェスティバルでのフリーマーケットで見つけたラジオ。「NATIONAL PANASONIC」の文字がある。

中央のパピエ・コレ作品のように見えるものは、椅子の裏に貼られていたペーパーを使って作ったもの。

中央のパピエ・コレ作品のように見えるものは、椅子の裏に貼られていたペーパーを使って作ったもの。


そうした手作りを好む感覚とリノベーションというのは通ずるところがあるのかたずねてみた。

「ありますね。これ使って作ったら面白いかなみたいな感じ。あるいは、あるものを工夫してなにか違うものにするというか。もったいないというのもあるんですけどね」

石沢邸に心地の良いリラックス感とともに漂うどこか楽しげな雰囲気は、小物の製作から家のリノベーションまで、楽しみながら行ったことから自然に醸し出されているものなのかもしれない。


石沢さんのコレクションを収めたカメラ棚は以前から持っていたもので、この家の空間デザインの基となった家具のひとつ。

石沢さんのコレクションを収めたカメラ棚は以前から持っていたもので、この家の空間デザインの基となった家具のひとつ。

石沢さんは主にファッション系で活躍するカメラマン。

石沢さんは主にファッション系で活躍するカメラマン。

カメラ棚の上には、ウィリアム・エグルストンとロバート・フランクの写真集。

カメラ棚の上には、ウィリアム・エグルストンとロバート・フランクの写真集。


奥さんはフリーの編集者。土間の道路側開口に面したテーブルが仕事スペース。

奥さんはフリーの編集者。土間の道路側開口に面したテーブルが仕事スペース。

土間は、石沢さんの仕事用の機材を外から運び入れやすいように作った。外のデッキは中の床と同じ高さ。

土間は、石沢さんの仕事用の機材を外から運び入れやすいように作った。外のデッキは中の床と同じ高さ。

土間の本棚奥の壁に貼られた写真が納まるようにフレームが置かれている。左はキャパ撮影のヘミングウェイ親子の写真。

土間の本棚奥の壁に貼られた写真が納まるようにフレームが置かれている。左はキャパ撮影のヘミングウェイ親子の写真。


愛車も中古を購入。フォルクスワーゲンのタイプ2(1968年式)。

愛車も中古を購入。フォルクスワーゲンのタイプ2(1968年式)。

石沢邸
設計 ファロ・デザイン
所在地 東京都世田谷区
構造 軽量鉄骨造
規模 地上2階
延床面積 119.5㎡