Style of Life

組み合わせの妙を楽しみながら中古家具で、オリジナルで、
空間をカスタマイズ

組み合わせの妙を楽しみながら 中古家具で、オリジナルで、 空間をカスタマイズ
庫本(くらもと)邸は竣工してからまだほんの数年のお宅。しかし、いったん内部に入ってみると、空間に家具や小物がしっくりと馴染み込んでいて、もう少し長い時の経過を感じさせる。

ふつうなら長い間使い込んでいくうちに出てくる、そこにしかない“味”のようなものさえ感じさせるが、こうした空気感を醸し出すのには、庫本夫妻が2人でよく訪れるという宇都宮の古道具屋さんで見つけた収納家具や雑貨類がまずは一役買っているようだ。それらを使って自分たちの感覚にしっくりとくるように空間をカスタマイズしていく。その腕は、学生時代にはともにデザインを学んだというだけあって確かだ。


キッチンからダイニングとリビングを見る。
キッチンからダイニングとリビングを見る。
リビングからダイニングとキッチンを見る。
リビングからダイニングとキッチンを見る。


中古家具でカスタマイズ

夫妻がこれまで買い揃えてきたものの中には、確かに古道具ではあるけれど、“元々は何だったの?”と思うようなものも。ダイニングの壁には、引出しを立てて掛けられたようなものものがあり、中にはアクセサリーなどが納められている。これは和菓子屋さんなどで、作ったお菓子を入れて運ぶのに使われていたものではないかという。

「古道具屋の物がいいなと思うのは、それだけじゃない使い方ができるところ。これも立てて壁にかけたら何かに使えないかなみたいな感じで」と奥さん。


古道具を活用してネックレスなどをおしゃれにディスプレイ。和菓子屋さんで使われていたような入れ物を活用した。
古道具を活用してネックレスなどをおしゃれにディスプレイ。和菓子屋さんで使われていたような入れ物を活用した。
2階の収納棚の間に開けられた開口からダイニングを見下ろす。
2階の収納棚の間に開けられた開口からダイニングを見下ろす。
2階寝室の古い収納には、衣類などが納められている。周囲との色のコーディネイトにも気が配られているようだ。
2階寝室の古い収納には、衣類などが納められている。周囲との色のコーディネイトにも気が配られているようだ。
医院で使われていた長椅子はリビングの窓際に。そのお隣にはオレンジ色に塗り替えたシェルチェア。
医院で使われていた長椅子はリビングの窓際に。そのお隣にはオレンジ色に塗り替えたシェルチェア。


玄関を入って右側には、趣味などで何かを製作する時に使うアトリエ的な空間があるが、その間仕切りに使われているものも古道具屋さんで見つけてきたという。「あれはガソリンスタンドの建具だったかな。本当は数枚の引戸でアトリエを仕切れるようにしたかったんですけど、金額的に合わなくてあきらめたんです」と奥さん。

空間の雰囲気を「ちょっとお店のような感じ」にしたかったのだという。「よく行く古道具屋さんにああいうものが何枚か置いてあって、それを使えばイメージしていたような雰囲気になるかなと思って」購入した。そして、設置できるように横に立てる柱などを建築家に設計してもらったという。


将来はここで陶芸もしてみたいという、玄関入って右側のアトリエ空間。古道具や雑貨類にヴィヴィッドな色合いのものがそれとなく混じる。
将来はここで陶芸もしてみたいという、玄関入って右側のアトリエ空間。古道具や雑貨類にヴィヴィッドな色合いのものがそれとなく混じる。
さりげなくもセンスを感じさせる小物とその配置。
さりげなくもセンスを感じさせる小物とその配置。
 
寝室の壁の棚にもカラフルな雑貨が並べられている。
寝室の壁の棚にもカラフルな雑貨が並べられている。
黒い靴箱の向こう側にキッチン。左奥にダイニング。
黒い靴箱の向こう側にキッチン。左奥にダイニング。
手前の間仕切りはガソリンスタンドで使用されていた古いスチール製の建具。
手前はガソリンスタンドで使用されていた古いスチール製建具。
寝室の壁に開けられた窓からも1階の気配が感じられる。
寝室の壁に開けられた窓からも1階の気配が感じられる。


オリジナル家具でカスタマイズ

家具などが空間に馴染み込んだ印象を受けるのは、そうした古い家具などが多く活用されているということだけではなさそうだ。家具の中には自分たちで製作したものもあるのだという。置く空間のサイズにピッタリと合わせて製作するから、余計な隙間や出っ張りが出来ず、元からそこにあったかのようにしっくりと空間に馴染んだものができる。さらに「もっているものに合わせてそれにふさわしい寸法で作れるというのもいいですね」と庫本さん。

空間をさらにカスタマイズする庫本夫妻オリジナルの家具たち。その中には少々不思議なものも。ガソリンスタンドで使われていたという間仕切りの隣に置かれたそれは、古い収納に脚がついたものだが、この脚が、元から付いていたものにはどうしても見えないのだ。「あれは、いらなくなった椅子を会社からもらってきて切って、その脚の上に収納を載せている」のだという。庫本邸に置かれたオリジナルのもののなかで一番の珍品ものだ。


「外に木があって、この窓から見える景色は気持ちいい」と奥さんが語るダイニングの小ぶりの窓。
「外に木があって、この窓から見える景色は気持ちいい」と奥さんが語るダイニングの小ぶりの窓。
半世紀以上も前の事務用椅子の脚の部分と古い収納とをドッキング。ヴィヴィッドな色の糸が空間のアクセントに。
半世紀以上も前の事務用椅子の脚の部分と古い収納とをドッキング。ヴィヴィッドな色の糸が空間のアクセントに。


「朝入ってくる光がきれいで、なにかをしながら料理を作ってる時もすごく気持ちいい」と奥さんが言うキッチン。窓側の棚はイケアの棚を使うと決めていたので、それに合わせて窓の寸法なども決めてもらったという。 
「朝入ってくる光がきれいで、なにかをしながら料理を作ってる時もすごく気持ちいい」と奥さんが言うキッチン。窓側の棚はイケアの棚を使うと決めていたので、それに合わせて窓の寸法なども決めてもらったという。 

空間をカスタマイズするのに、庫本家ではさらにもう一工夫がある。「基本的に古いものと新しいものを合わせるのが好きなんですが、それだけじゃなく、そこにきれいな色のものを置いたりするんですね」

そうすると「思いがけない組み合わせになるので、その雰囲気が好き」と奥さん。その組み合わせをとても楽しんで行っているように見えた。庫本家のカスタマイズ作業はこれからもずっと続くに違いない。


建築家の東端さんは奥さんの学生時代の友人。「自分が持っているものがそこにあることでより生き生きするような空間をつくるのが上手だなと思っていて」設計を依頼したという。
建築家の東端さんは奥さんの学生時代の友人。「自分が持っているものがそこにあることでより生き生きするような空間をつくるのが上手だなと思っていて」設計を依頼したという。
2階の寝室へと向かう廊下には、本や家族で製作した小物などが並べられている。
2階の寝室へと向かう廊下には、本や家族で製作した小物などが並べられている。
土いじりが好きな庫本さんと野菜作りが好きな奥さんは裏の敷地にある市民農園を借りていたが、今は自宅で家庭菜園を楽しむ。
土いじりが好きな庫本さんと野菜作りが好きな奥さんは裏の敷地にある市民農園を借りていたが、今は自宅で家庭菜園を楽しむ。
木製デッキの敷かれた広いテラス。休日の夕方などに壁際のベンチに座ってビールを飲むのが夫妻のお気に入り。
木製デッキの敷かれた広いテラス。休日の夕方などに壁際のベンチに座ってビールを飲むのが夫妻のお気に入り。
自然派の夫妻に建築家が提案したのがパッシブソーラーシステム。冬は屋根で暖められた空気が中央のダクトを通って床から吹き出す。
自然派の夫妻に建築家が提案したのがパッシブソーラーシステム。冬は屋根で暖められた空気が中央のダクトを通って床から吹き出す。


庫本邸
設計 straight design lab
所在地 栃木県宇都宮市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 107.64m2