好みはニューヨークとパリ2人のこだわりとセンスがシンプルな空間を見事に演出

好みはニューヨークとパリ2人のこだわりとセンスが
シンプルな空間を見事に演出

大田区・東急線沿線の住宅地に立つ城野邸。2階のリビングをメインの空間にするというのが設計時のいちばんの優先事項だったという。

「気持ちのいい空間にしたいということと、2人とも映画が好きで、好んで見るのが外国の映画だったりとか、あと、海外のインテリアに強い憧れがあるというのも建築家にお伝えしました」と妻の奈美さん。


額や鏡などが壁にセンス良くレイアウトされている。この面にはどこでも額が取り付けられるように下地材が入っている。

額や鏡などが壁にセンス良くレイアウトされている。この面にはどこでも額が取り付けられるように下地材が入っている。


映画では、お気に入りの監督が、夫の剛史さんが、スパイク・ジョーンズ、アレキサンダー・ペイン、ポン・ジュノ、奈美さんはロマン・ポランスキーやフランソワ・トリュフォー、ポール・トーマス・アンダーソンと、シネフィルが好みそうな名前が並ぶ。

海外インテリアに関しては、奈美さんが海外の雑誌から切り抜いた写真を建築家に見てもらったという。「それがいちばん手っ取り早いかなと思って、切り抜いたものをスクラップブック的に1冊のノートにまとめたのをお見せしました」


剛史さんは、ソファに座ってガラスブロックと階段を眺めるのがお気に入り。

剛史さんは、ソファに座ってガラスブロックと階段を眺めるのがお気に入り。

窓の脇の壁にカラの額縁。中に何も入っていないのが何気におしゃれだ。

窓の脇の壁にカラの額縁。中に何も入っていないのが何気におしゃれだ。


ニューヨークとパリのテイストも入れたい

この家の特徴的な縦長の窓は建築家とのそのあたりのやり取りから生まれたものだという。「海外だと格子になっている窓がけっこうあって、それがおしゃれですよねという話をしたら、このような窓を提案してくれて」と剛史さん。

切り抜き写真などで希望のイメージを伝えると同時に、夫妻の好きなニューヨークとパリのテイストも取り入れたいとリクエストした。

2つの都市の空気感はかなり異なるだけに難しいリクエストだが、どちらかのテイストをメインにするのではなく微妙なバランスを目指したという。奈美さんは「いいとこ取りじゃないですけど、どちらかに偏ってしまうのも違うかな」と思ったという。


天井をフラットにせず梁の形を見せる仕上げとしたのは建築家からの提案。モダンすぎない、パリらしいテイストを出すのに一役買っている。

天井をフラットにせず梁の形を見せる仕上げとしたのは建築家からの提案。モダンすぎない、パリらしいテイストを出すのに一役買っている。


ニューヨークテイストは剛史さんの好み。「ブルックリンあたりでよく見かけるようなごついアイアンとか、工場や倉庫の跡をうまく使ってるような空間がけっこう好き」という。このあたりの要望は階段の黒いスチールやガラスブロックなどで実現されている。

奈美さんはパリに代表されるようなヨーロッパっぽいテイストが好みで、それは縦長窓以外にも、幅木とかにも生かされているのではないかという。

さらに、天井の梁の形を見せる仕上げや、パリの屋根裏部屋を思わせる斜めの吹き抜け空間も、建築家が奈美さんのリクエストから汲み取って実現したもののようだ。


窓は既成のサッシにアングル鋼などのスチール材を組み合わせて製作したもの。

窓は既成のサッシにアングル鋼などのスチール材を組み合わせて製作したもの。

階段室の壁に造られたニッチには、『不思議の国のアリス』の白うさぎの置物が置かれている。

階段室の壁に造られたニッチには、『不思議の国のアリス』の白うさぎの置物が置かれている。

階段室の壁も斜めでパリの屋根裏部屋の空気感。

階段室の壁も斜めでパリの屋根裏部屋の空気感。


リビングに置かれるものがメイン

空間づくりに夫妻で積極的に関わって実現した城野邸だが、「空間ではなく、そこに実際に置かれるものたちがメインとなってこの家をつくっていく」、そんな共通認識が建築家との間にあったという。「箱はシンプルなものにして後はインテリアでがんばっていけばそういう風に近づけますよっていう提案は建築家からいただきましたね」と剛史さん。

シンプルにしすぎると無機質で素っ気ない感じにもなってしまうため、階段の踏み板のエッジを斜めにカットするなど、シンプルな中にも微妙な操作が加えられている。そうしたベースの上にどう味付けするのかは2人のセンスとがんばり次第ということだろう。


キッチンで料理をしているのが楽しくて気に入っているという奈美さん。キッチンからは部屋全体を見渡せるので、料理をしながら「いい家だなあ」と感じ入ることもしばしばという。

キッチンで料理をしているのが楽しくて気に入っているという奈美さん。キッチンからは部屋全体を見渡せるので、料理をしながら「いい家だなあ」と感じ入ることもしばしばという。

友人からの贈り物という大きな鏡のフレームの上に、小さな赤いリンゴが3つ。

友人からの贈り物という大きな鏡のフレームの上に、小さな赤いリンゴが3つ。

ジェルデというメーカーのアンティークのランプ。インダストリアルな雰囲気だが空間にしっくりとはまっている。

ジェルデというメーカーのアンティークのランプ。インダストリアルな雰囲気だが空間にしっくりとはまっている。

フランス製のメタルラックの上にはペンギンブックの背を写したペーパーが貼られたボードが立てかけられている。

フランス製のメタルラックの上にはペンギンブックの背を写したペーパーが貼られたボードが立てかけられている。

窓際にはイギリス製のアンティークの秤。

窓際にはイギリス製のアンティークの秤。


ソファの背後の壁には写真や絵を納めた額などがきれいにレイアウトされてかかっている。床に並べて、建築家と3人で話し合って決めたレイアウトそのままに壁にかけたという。

その壁の右手にあるメタルラックはフランス製。古いものの表面を磨いたものという。雑多なものを外に出しておくと生活感が出てしまうことから、リビングで必要なCDや文房具などが収められている。

そのラックの上には何十冊もの洋書の背を並べて撮った写真がボードに貼られて立てかけられている。「ペンギンブックスのラッピングペーパーとして1枚いくらで売ってたのを購入したものです。イギリスの雑貨を扱っているお店で買ったんですが、色合いもかわいいくて気に入ってます」と奈美さん。


こちらにもカラの額縁がかけられている。

こちらにもカラの額縁がかけられている。
 

 ダイニングテーブルに置かれたフルーツがまるで絵画のよう。

ダイニングテーブルに置かれたフルーツがまるで絵画のよう。
 

玄関には、イスラエルから取り寄せたというミニチュアのペインティングが3点。

玄関には、イスラエルから取り寄せたというミニチュアのペインティングが3点。

キッチンの棚に置かれた食器類などのセレクションにもセンスとこだわりを感じさせる。

キッチンの棚に置かれた食器類などのセレクションにもセンスとこだわりを感じさせる。

階段の踏板のエッジは斜めにカットされている。ちょっとした操作で印象が変わる。

階段の踏板のエッジは斜めにカットされている。ちょっとした操作で印象が変わる。


窓際に置かれた古い秤はイギリス製。アイアン系の素材が好きな剛史さんが見つけてきたアンティークものだ。

建築家に紹介してもらったイギリス製のソファはそのやわらやかなテイストがこの空間にとてもしっくりとくるデザイン。そしてそのかたわらには「家全体としては少しハードなテイストも入れた方が合うんじゃないか」とスチール製のアンティークのライトを置いた。こうしたバランスの取り方にも2人のセンスが光る。


階段の踊り場に置かれた映画フィルムの保存用缶のようなものは、ポランスキーのDVDの特別仕様版。

階段の踊り場に置かれた映画フィルムの保存用缶のようなものは、ポランスキーのDVDの特別仕様版。

北側の斜線制限などから生まれた斜めの壁にハイサイドライトがパリの屋根裏空間を想わせる。

北側の斜線制限などから生まれた斜めの壁にハイサイドライトがパリの屋根裏空間を想わせる。

2階のベッドルームからリビングを見下ろす。

2階のベッドルームからリビングを見下ろす。
 

ガラスブロックの前に置かれたグリーン。窓からの光で緑が美しく映える。

ガラスブロックの前に置かれたグリーン。窓からの光で緑が美しく映える。


空間とインテリアの両方にこだわりにこだわってつくり上げたリビング。城野夫妻も2階全体の雰囲気をとても気に入っているという。

第3者から見ても2人の希望が完璧に近いほどの完成度で出来上がっているように感じられるのだが、ご本人たちは、意外にも、理想の空間には「まだ途中」と口を揃えて言う。

よりしっくりと来る空間を焦らず時間をかけてつくり込んでいく、そのようなお2人の気持ちが感じられた。数年後にこのリビングがどのような空間になっているか、ぜひ見てみたいと思った。


ソファでくつろぐ城野夫妻。旗竿敷地で家が建て込んでいるが、南側の家が平屋のため光がふんだんに入る。

ソファでくつろぐ城野夫妻。旗竿敷地で家が建て込んでいるが、南側の家が平屋のため光がふんだんに入る。


城野邸
設計 こぢこぢ一級建築士事務所
所在地 東京都大田区
構造 木造
規模 3階
延床面積 90.75㎡