家がすべて大きなワンルームふたりが目指したのはマルタン・マルジェラの世界観

家がすべて大きなワンルームふたりが目指したのは
マルタン・マルジェラの世界観

春になれば満開の桜の並木が美しい川の側に、理想的な土地を見つけた斉藤雅人さん愛さん夫妻。

「粗い素材感や、なんでもないものにペンキを塗ったり、そのペンキが剥げてくる感じを楽しんだり、ゴージャスは求めないけれどセンスがいい……そんなメゾン・マルタン・マルジェラのショップのイメージの家を作りたいと思っていたので、僕らの意図を理解していただける建築士を探すことから始めました」

出会ったのがフリーダムアーキテクツデザイン。

「マルジェラの作品集を持っていったら、すぐにその世界観を理解してくれて、コミュニケーションが上手くできたんです。設計に当たっては、ショップも見に行ってくださったようです。集成材の柱を使ったり、細長い吹き抜けを大胆に配したりと、僕らの想像の上をいく提案をしていただいたので、この家づくりは成功すると確信しました」


家の端から端まで吹き抜けが通る大胆なデザイン。上下階が分断されず、つながりが感じられる。

家の端から端まで吹き抜けが通る大胆なデザイン。上下階が分断されず、つながりが感じられる。

スチールの手すりのカーブと、白い床面を覆う素材のカーブの角度が揃っているのが美しい。窓は光が拡散するスリガラスを採用。

スチールの手すりのカーブと、白い床面を覆う素材のカーブの角度が揃っているのが美しい。窓は光が拡散するスリガラスを採用。

キッチンからリビングを臨む。ベランダの手すり壁の高さも高いので、カーテンをつけなくても隣家からの視線は気にならない。

キッチンからリビングを臨む。ベランダの手すり壁の高さが高いので、カーテンをつけなくても隣家からの視線は気にならない。

フローリングは白の塗料を塗って拭きとったような味のある仕上げ。階段の踏み板は板を貼る予定だったけれど止めたのだそう。

フローリングは白の塗料を塗って拭きとったような味のある仕上げ。階段の踏み板は板を貼る予定だったけれど止めたのだそう。


斉藤さん宅に個室はない。すべてがひとつながりの空間になっている。とはいえ、ただ広い空間を作るのではなく、集成材を使った壁やカーテンがゆるやかに居場所を分けている。

「1階と2階にもつながりが感じられるような、ひとつの大きな空間の家にしたいと思っていました。玄関から続く細長い吹き抜けがその役割を果たしています」

家を作る際には、素材感を大切にしたそうだ。

「鉄の階段の錆び止めの塗装がいい感じだったので、鉄の素材感を活かすために、踏み板に木を貼る予定だったのですが止めました。鉄部に木材を留めるための穴が開いているのですが、それもいい味になっています。集成材の仕切りのガサッとした感じ、カーテンの柔らかさなど、素材感の違いが面白くなりました。あと気に入っているのが床の色。もともとのフローリングにうっすらと白をかぶせて、少し無機質なトーンになっています。1階のガラス扉の前の柵は、木の素材感が感じられるくらいの微妙な加減のペンキ塗装にしてもらいました。ペンキを塗っている現場に来て、職人さんと相談しながら決めました」


グレイッシュな世界観がクール。「なくてもいいものは省くというポリシーを貫き、階段の踏み板に木を貼るのも止めました」

グレイッシュな世界観がクール。「なくてもいいものは省くというポリシーを貫き、階段の踏み板に木を貼るのも止めました」

「レンジフードやガスコンロも、シンプルで最低限の機能があればいいと思いました」

「レンジフードやガスコンロも、シンプルで最低限の機能があればいいと思いました」

小物の収納には白い箱を使っている斉藤家。中身が一目でわかるようにラベルを貼っている。

小物の収納には白い箱を使っている斉藤家。中身が一目でわかるようにラベルを貼っている。

家を作る際にイメージしたマルタン・マルジェラの世界観。「この家も使い込むうちにどんどんカッコよくなればうれしいです」

家を作る際にイメージしたマルタン・マルジェラの世界観。「この家も使い込むうちにどんどんカッコよくなればうれしいです」

「キッチンの収納も扉はナシです。でもちょっと目隠ししたかったので、後から布を下げました」

「キッチンの収納も扉はナシです。でもちょっと目隠ししたかったので、後から布を下げました」


「キッチンのコンロや蛇口も、必要最低限の機能があれば、ブランドにはこだわらないし豪華なものは必要ないので、このチョイスになりました。棚には目隠しの布を自分で下げました。でも個人でカーテンを買うのと高くつきますよね(笑)。なので1階に大量に使われているカーテンは、設計事務所に用意していただきました。シルクやウール素材のものより、ガシガシ洗えるものにしました」と愛さん。

照明器具はごくごくシンプルなもの。

「単純明快。ランプシェードはどれにしたらいいかとか悩むこともありませんでした。この家に越してきた時に買った家具はダイニングチェアのみです。掃除の時に楽に動かせるように、軽くて座りやすいものを探しました」

座面の素材は夫婦で意見が分かれ、愛さんはロープを編んであるもの、雅人さんはレザーシート派。意見がまとまらず、結局両方買ったのだそう。

それ以外は、家のコンセプトから細かな仕様に至るまで、意見の相違なし。

「豪華なものを予算に合わせて削ったのではなく、もともと要らないという考え方で家を作ることができたのは幸せでした」


「靴が多いので、靴を仕舞うスペースは玄関横にたっぷり確保しました」 正面に掛けてある草間彌生さんの額はなんと手ぬぐい。

「靴が多いので、靴を仕舞うスペースは玄関横にたっぷり確保しました」 正面に掛けてある草間彌生さんの額はなんと手ぬぐい。

寝室を囲むように、クローゼットと吹き抜けが回廊式に配置されている。正面が玄関脇の靴の収納スペース。

寝室を囲むように、クローゼットと吹き抜けが回廊式に配置されている。正面が玄関脇の靴の収納スペース。

中の明るく大胆な設計が想像できない、シンプルな箱形の外観。手前の壁にポツンと開いているのはポスト。

中の明るく大胆な設計が想像できない、シンプルな箱形の外観。手前の壁にポツンと開いているのはポスト。

寝室にも壁や扉はなく、カーテンで柔らかく仕切られている。ちなみに斉藤家で扉があるのは唯一トイレだけ。

寝室にも壁や扉はなく、カーテンで柔らかく仕切られている。ちなみに斉藤家で扉があるのは唯一トイレだけ。

「玄関脇の電球のライトは、私がIKEAで買いました。とても苦労して鏡に嵌め込んでくださいました」と愛さん。

「玄関脇の電球のライトは、私がIKEAで買いました。とても苦労して鏡に嵌め込んでくださいました」と愛さん。

1階の左側の窓は防犯も兼ねて木の柵がつけられている。柵の間隔は不規則で、ペンキもあえてムラを残した仕上げにしている。

1階の左側の窓は防犯も兼ねて木の柵がつけられている。柵の間隔は不規則で、ペンキもあえてムラを残した仕上げにしている。

敷石の上に転々と続く足跡。マルジェラのデザインしている二股の靴の跡になっている。

敷石の上に転々と続く足跡。マルジェラのデザインしている二股の靴の跡になっている。


斉藤邸
設計 フリーダムアーキテクツデザイン
所在地 千葉県市川市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 96.00㎡