満足度は120%3層吹抜けのお店と一体化した“とても住み心地のいい家”

満足度は120%3層吹抜けのお店と一体化した
“とても住み心地のいい家”

北欧雑貨のお店を併設

塚本さんは、現在、フリーの編集者でライター。その仕事のかたわら、自宅の1階で週に3日、北欧雑貨のお店、Fikaを開く。木戸を開けて階段を4段下がったフロアにあるスペースには、スウェーデンのお茶文化“Fika”のコンセプトのもと集められたティーカップやソーサーなどが並ぶ。

北欧デザインは家具やインテリア雑貨など、いまや日本でその人気は定着した観があるが、塚本さんは、始めから北欧の雑貨を扱おうと決めていたわけではないという。北欧デザインへのアプローチはまずはインテリアのほうからだった。

「以前住んでいた家を雑誌に載っているようなおしゃれな感じにしたくて、アメリカのポップ調のインテリアにしてみたり、イギリスのアンティーク系の重厚なものでそろえてみたり。インテリア遍歴がいろいろあったのですが、北欧でやっと落ち着いた感じがしたんですね。それがいまの家でも反映されています」


吹抜けには大きな白い棚が設けられている。棚の奥がお店のバックスペース。

吹抜けには大きな白い棚が設けられている。棚の奥がお店のバックスペース。

入口を入ってすぐのお店スペース。大きな開口に面している。

入口を入ってすぐのお店スペース。大きな開口に面している。


入口を入ってすぐの階段上からお店のスペースを見る。3層分のスペースを確保するために、床は地面より掘り下げたレベルにある。窓の部分に置かれているのはスウェーデン・ダーラナ地方の民芸品で幸運を呼ぶ馬。

入口を入ってすぐの階段上からお店のスペースを見る。3層分のスペースを確保するために、床は地面より掘り下げたレベルにある。窓の部分に置かれているのはスウェーデン・ダーラナ地方の民芸品で幸運を呼ぶ馬。


店主になりたい

「けっこう飽きっぽい」という塚本さん。しかし、北欧系だけは他に目移りすることなく続き、やがて雑貨も集め始めることになった。ある時、家の中に並べた食器などを眺めていて、「あれっ?これだったらお店できるんじゃない?」と閃いたという。
塚本さんは、実は長い間、お店を持って店主になりたいという思いがあったそう。ただ、「店主になりたい」という思いだけが先走り、「なんのお店をやればいいんだろう?」という状態が長らく続いていたという。  
家を建てると決めたときに、家を建てるのなら賃料もかからないし、自宅兼店舗にしようと考えた。しかし、ゆくゆくはお店ができる家ということで、店舗スペースもつくっておこうかというぐらいのつもりだったという。


入口を入って左側の壁に掛けられた棚にはフィンランドのアラビア社のヴィンテージ物のカップ&ソーサー。

入口を入って左側の壁に掛けられた棚にはフィンランドのアラビア社のヴィンテージ物のカップ&ソーサー。

スウェーデンのグスタフスベリ社のスティグ・リンドベリのカップ&ソーサー。

スウェーデンのグスタフスベリ社のスティグ・リンドベリのカップ&ソーサー。

鮮やかな色合いのトレーはスウェーデンのアルメダールス社の製品。

鮮やかな色合いのトレーはスウェーデンのアルメダールス社の製品。


建築に背中を押されて

「お店のスペースはふつうに部屋としても使えるようなものをイメージしていた」という塚本さんに建築家から提示された設計案は、家の前面部分を3層吹抜けにして店舗スペースにするというもので、「これはすぐ始めるしかない」と、建築に背中を押されるかたちで店づくりに向けて始動したという。

吹き抜け部分には居住スペースとの間に3層分の巨大な白い棚が立つ。これは、塚本さんからの「明るくて、開放感があり、風通しもいい家」というリクエストを満足させつつ、かつ、雑貨を並べる棚として機能するというもの。この家の大きな特徴であるこの棚を通して、南側の道路に面して開けられた大開口からふんだんに光が入り、窓を開ければもちろん風も抜けていく。


2階の畳スペースとフローリングのレベル差でできた隙間からお店部分を見下ろす。吊り下がるライトは、塚本さんがオリジナルでつくってもらったもの。

2階の畳スペースとフローリングのレベル差でできた隙間からお店部分を見下ろす。吊り下がるライトは、塚本さんがオリジナルでつくってもらったもの。

お店側から居住スペースを見る。北欧を想わせる色合いでまとめられている。

お店側から居住スペースを見る。北欧を想わせる色合いでまとめられている。

1階から階段室を見下ろす。壁には収納を造り付け、また外出用の服や帽子などを掛けて狭いスペースを有効活用。

1階から階段室を見下ろす。壁には収納を造り付け、また外出用の服や帽子などを掛けて狭いスペースを有効活用。


狭いけど狭く感じない

この吹抜け案を塚本さんは気に入り、とても斬新ですごいアイデアだと思いつつも、実は家が竣工するまでずっと不安なことがあったという。「建つまでは、こんなに狭い家に住めるのかなという思いが消えなかったんです」。しかしそれも、竣工と同時に霧消したという。

「“壁を白く塗れば大丈夫です”って、建築家の方にずっと言われていたんですが、壁を塗った瞬間にまさにその通りで、まったく狭さを感じない空間になりました」


1階のリビングからキッチンと吹抜けのほうを見る。キッチンの壁がリビング側のプライバシーを守る。

1階のリビングからキッチンと吹抜けのほうを見る。キッチンの壁がリビング側のプライバシーを守る。

1階のキッチン脇から吹抜けを見る。棚を通して大開口から光がふんだんに入り、視線も外へと抜ける。

1階のキッチン脇から吹抜けを見る。棚を通して大開口から光がふんだんに入り、視線も外へと抜ける。

2階の畳側から階段のほうを見る。家具やクッションが北欧テイストでまとめられている。

2階の畳側から階段のほうを見る。家具やクッションが北欧テイストでまとめられている。


2階の階段側から小上がりの畳スペースのほうを見る。畳の下は収納になっていてふとんもこの中に収納している。

2階の階段側から小上がりの畳スペースのほうを見る。畳の下は収納になっていてふとんもこの中に収納している。

階段途中から3階を見る。

階段途中から3階を見る。

1階コーナー部分。さりげなく北欧の空気感が漂う。

1階コーナー部分。さりげなく北欧の空気感が漂う。


1階のリビングスペースで取材をさせていただいたが、実際狭いとはまったく感じなかった。棚を通して外まで視線が抜けて、外の気配まで感じられるつくりにしたこともきっと利いているのだろう。

住みはじめた時からとても気に入り、「満足度120%」というこの家にいるときは、リビングで過ごすことがいちばん多いという。「ここで仕事もしますし食事もします。3階があまりにも居心地が良すぎて何もしたくなくなってしまうので、仕事はなるべくこのリビングでするようにしています」

「2階は休むスペースにして、1階と2階でオンオフが少しゆるくある感じ」だという塚本さん。フリーになって家で仕事することが多くなったため、オンオフでスペースをうまく使い分けているようだ。

竣工してから4年ほど、「住み心地が本当によくて、家をほめられるのが自分のことのようにうれしい」という塚本さん。満足度は、実は120%以上なのかもしれない。そのようにも見えた。


青い縁のFikaの看板は営業日には外に出されている。

青い縁のFikaの看板は営業日には外に出されている。

敷地は台形で手前側がいちばん幅が広い。

敷地は台形で手前側がいちばん幅が広い。

塚本邸
設計 ondesign
所在地 東京都豊島区
構造 木造
規模 地下1階地上2階
延床面積 58.58㎡