Style of Life

古さを活かしてリノベーション昔ながらの暮らしの
温もりが伝わる平屋

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シンプルに暮らしたい

「古いものが好きなんです」。調布市の自宅でベーカリーを営む北川桂さんが選んだ住まいは、築約50年の平屋の日本家屋。
「以前、賃貸で住んでいた家も平屋でした。平屋のカタチ、佇まいが気になるんです」。
白い壁に木の床や天井、すりガラスの引き戸…。歩くとミシミシ床がきしむ音や、風が窓をたたく音もどこか懐かしい、温もりのある家に夫と4歳の長女とともに暮らしている。

「昔から新品を買ってもらうよりもお下がりをもらう方が好きで(笑)。古いものを必要なだけ取り揃えて、シンプルに暮らしたいですね」。


かつては寝室だった部屋は、リビングダイニングとして使用することに。ダイニングテーブルやラグは古道具屋で購入したもの。
かつては寝室だった部屋は、リビングダイニングとして使用することに。ダイニングテーブルやラグは古道具屋で購入したもの。
壁や天井の素材感が、昭和の雰囲気を残す。広く取られた開口部から日差しが優しく入る。
壁や天井の素材感が、昭和の雰囲気を残す。広く取られた開口部から日差しが優しく入る。
廊下の壁には、友人家族に手伝ってもらって漆喰を塗った。
廊下の壁には、友人家族に手伝ってもらって漆喰を塗った。
台所とダイニングの間には、リフォーム時に引き戸を設けた。
台所とダイニングの間には、リフォーム時に引き戸を設けた。


台所を中心にリフォーム

入居して3、4年経った頃、暮らしに合わせてリフォームを行った。
「以前、国立の『foodmood』で働いていて、その雰囲気が好きだったので、設計を手がけた建築家の井田耕市さんにお願いしました。変えたのは主に台所。いちばん長い時間を過ごす大切な場所だし、使いやすくしたかったんです」。
昔ながらのサイズでちょっと低かったキッチン台は、身長に合わせた高さにオーダー。キッチン台や吊り戸棚の扉は、床とともにシナベニヤで統一した。
「予算の中で大工さんにお願いできるところはお願いして、後は夫とふたりDIYで仕上げました」。
床にはふたりで上からクリア塗装をかけ、シンクの前の壁のタイルは夫が貼った。桂さんが好きだという青磁色のタイルが、木のナチュラルな雰囲気に溶け込む。
「壁のペンキ塗りもDIYです。廊下だけは雰囲気を出したくて漆喰で塗りました。光を廊下に通したくて、扉もガラスの引き戸を探しました」。
ネットで見つけたガラスの引き戸は昭和の風情。その上にはガラスの欄間を設けて、上からも光と風が通り抜けるようにした。


床とキッチン台の面材はシナベニヤで統一。西荻で買ったお気に入りのラグが似合う。
床とキッチン台の面材はシナベニヤで統一。西荻で買ったお気に入りのラグが似合う。
業務用のワゴンは作業台としても活躍している。会津の作家さんの白磁の器などが並ぶ。
業務用のワゴンは作業台としても活躍している。会津の作家さんの白磁の器などが並ぶ。


青磁色のタイルを貼った壁に、会津のマタタビを使った台所道具やカゴを。
青磁色のタイルを貼った壁に、会津のマタタビを使った台所道具やカゴを。
普段よく使うものは吊るして収納。素材を大切に調理する桂さん。食材入れは透明の容器を愛用している。
普段よく使うものは吊るして収納。素材を大切に調理する桂さん。食材入れは透明の容器を愛用している。
夫が取り付けた棚には、骨董屋で買ったデッドストックの鍋や、根曲がり竹で編んだカゴを並べて。
夫が取り付けた棚には、骨董屋で買ったデッドストックの鍋や、根曲がり竹で編んだカゴを並べて。


光を通すためリフォーム時に取り付けたガラスの引き戸と欄間。引き戸はサイズに合わせてカットしてもらった。
光を通すためリフォーム時に取り付けたガラスの引き戸と欄間。引き戸はサイズに合わせてカットしてもらった。
パンを焼くための業務用のオーブン。ホシノ天然酵母を使い、24時間発酵させて焼く北川ベーカリーのパンは大人気。
パンを焼くための業務用のオーブン。ホシノ天然酵母を使い、24時間発酵させて焼く北川ベーカリーのパンは大人気。


自然素材の味わいをかみしめる

「手を加えて少しずつ直しながら、ずっと住んでいきたいですね」。
そんな思いが溢れる家には、骨董品や古道具、作家ものの器や道具がたくさん。
「友達と物々交換したものとか、粗大ゴミに出されていたものとか(笑)。人の手の温もりが感じられるものが好きなんです」。
桂さんは福島県の会津出身。実家に帰る度に郷土で生まれた生活道具を買ってくる。特に愛用しているのは、マタタビで編まれたカゴやザルなど。
「プラスチックのものを使いたくないんです。自然素材の素朴で飾らない道具をいつも手元に置いておきたいですね」。
動物性の材料を使わず、小麦粉、酵母、菜種油などで焼き上げるパンが人気の北川ベーカリー。その滋味豊かなパンのように、優しく味わいのある空間が広がっていた。


玄関を入ったところにある小上がりの部屋は、長女・葉ちゃんの子供部屋に。
玄関を入ったところにある小上がりの部屋は、長女・葉ちゃんの子供部屋に。
家族で寛ぐダイニングのソファーは、結婚時にスタンダードトレードで購入。
家族で寛ぐダイニングのソファーは、結婚時にスタンダードトレードで購入。
古いショーケースのような棚は骨董屋さんの友人と物々交換をして入手したもの。
古いショーケースのような棚は骨董屋さんの友人と物々交換をして入手したもの。


玄関まわりも骨董屋のような風情。ミシンは粗大ゴミに出ていたものを譲ってもらったそう。
玄関まわりも骨董屋のような風情。ミシンは粗大ゴミに出ていたものを譲ってもらったそう。
民芸調の器が大好き。友人の松塚裕子さん、俊彦窯清水俊彦さん、ナマケモノ工房伊藤英明さんの器。コースターは手作り。
民芸調の器が大好き。友人の松塚裕子さん、俊彦窯清水俊彦さん、ナマケモノ工房伊藤英明さんの器。コースターは手作り。
インターホンは友人の作家に作ってもらった。パンの形が刻まれている。
インターホンは友人の作家に作ってもらった。パンの形が刻まれている。


台所に立つ桂さんと葉ちゃん。北川ベーカリーhttp://kitapan.exblog.jpは店舗を持たず、メールで注文を受付けた後、自宅で引き渡すスタイルで営業。イベントなどでも月に1、2回販売、自然食品店への卸も行う。自宅で教室を開くことも。
台所に立つ桂さんと葉ちゃん。北川ベーカリーは店舗を持たず、メールで注文を受付けた後、自宅で引き渡すスタイルで営業。イベントなどでも月に1、2回販売、自然食品店への卸も行う。自宅で教室を開くことも。