居住空間半分ガレージ半分の家 ミニマムデザインの家をカスタマイズして暮らす

居住空間半分ガレージ半分の家 ミニマムデザインの家を
カスタマイズして暮らす

内と外をガラリと変える

大口邸の外観は、ガラス壁の上に黒い箱が載った、とてもミニマムな表現が印象的だ。しかし、家の半分を占めるガレージの上につくられた2階の居住スペースに上がると、180度印象が変わるような光景が目の前に広がる。
「外観はとてもモダンな佇まいですが、中はがらりと方向性を変えています。アンティークの家具や小物などを入れて、新旧を織り交ぜたものにしたいと思いました」と大口さんは話す。


正面から見た大口邸外観。1階がガラス壁のためガレージになっているのがわかる。裏には隣地の緑が広がる。

正面から見た大口邸外観。1階がガラス壁のためガレージになっているのがわかる。裏には隣地の緑が広がる。


個性を前面に出して

設計を担当した建築家の布施茂さんの住宅作品は、内外ともにモダンな表現で仕上げたものがほとんどだが、この家では内部は大口さんの個性でまとめられるよう、細部まではきっちりと納めずに全体構成のスタディに注力したという。

「インダストリアル」も家づくりの際のキーワードだったという大口さん。2階の住空間をカスタマイズすべく、家具や小物だけでなく内装材にもこだわり、ネットで探し出したものを自ら購入していった。


長さ16m、幅3m、高さが4mの2階の居住スペース。床材は100年前の綿工場で使われていたものを輸入して張った。右のガラスの開口は高さが2mほどある。

長さ16m、幅3m、高さが4mの2階の居住スペース。床材は100年前の綿工場で使われていたものを輸入して張った。右のガラスの開口は高さが2mほどある。

リビングに置かれているバイクはKTM 250 EXCR。

リビングに置かれているバイクはKTM 250 EXCR。

『ティファニーで朝食を』をモチーフにしたタブローの脇にはアンティークの椅子などが置かれている。

『ティファニーで朝食を』をモチーフにしたタブローの脇にはアンティークの椅子などが置かれている。


小梁から、バイクを2階にあげるためのホイストクレーンが吊り下がる。バイクの上げ下ろしはその下の床を取りはずして行う。壁の仕上げは構造用合板に白ペンキ拭き取り。

小梁から、バイクを2階にあげるためのホイストクレーンが吊り下がる。バイクの上げ下ろしはその下の床を取りはずして行う。壁の仕上げは構造用合板に白ペンキ拭き取り。


そのうちのひとつ、2階の空間でもとりわけ強い印象を与える床材は100年ほど前のアメリカの綿工場で使われていたものだという。「柱や天井の色なども考えて古材でいこうと決めました。本物じゃないと嫌だったのでかなり費用がかさみましたが」

この床材とともに、布施さんが「どこから見つけてきたのか」と感心したもののひとつが、円いガラスのテーブルの脚に使われている重さ100キロほどもあるアイアンのプロダクト。約100年前にフランスでガス灯として使われていたものの地中に埋められていた部分だという。これを探し出したのにも感心するが、テーブルの脚に使おうというそのオリジナルな発想力にも驚かされる。


リビングに置かれたテーブルの脚の部分はガス灯の地下に埋まっていた部分という。

リビングに置かれたテーブルの脚の部分はガス灯の地下に埋まっていた部分という。

階段の途中につくられたトイレ。この窓からも裏の緑が見える。


キッチンのタイルも大口さんが探したものを張った。目地の幅も指定。ドアはこの家のために製作したものでノブはドイツ製。

キッチンのタイルも大口さんが探したものを張った。目地の幅も指定。ドアはこの家のために製作されたものでノブはドイツ製。

キッチンの後ろの浴室も白タイルを張っているが「同じ表情だと面白くないので」こちらはフラットなものを使用。

キッチンの後ろの浴室も白タイルを張っているが「同じ表情だと面白くないので」こちらはフラットなものを使用。


緑の眺望を生かす

空間の構成でポイントになったのは、大きいところでは2点あった。ひとつは、敷地の裏に林があるため、この緑の眺望をできる限り生かすこと。
「せっかく裏に緑があるので、これに沿ってできるだけ長い距離を取るようにスタディを行いました。はじめは裏表ともにガラス面だったのですが、コスト面とプライバシーを考慮して、裏側の肝心なところだけにとどめ、なおかつ、開けっ放しにしても内部が見えないような現在の構成に落ち着きました」(布施さん)


2柱リストを入れた分高くなったガレージ部分の上につくられた寝室。梁から下げられた時計はBrillieの製品で1920年製。ダブルフェイスになっていてリビングからも時間を確認することができる。

2柱リフトを入れた分高くなったガレージ部分の上につくられた寝室。梁から下げられた時計はBrillieの製品で1920年製。ダブルフェイスになっていてリビングからも時間を確認することができる。

寝室に上がるための階段からそのままテラスにも出られる。

寝室に上がるための階段からそのままテラスにも出られる。

大口邸の裏手には緑が豊かに広がる。

大口邸の裏手には緑が豊かに広がる。


天井からぶら下がるライトもすべて大口さんがネットで見つけて購入したもの。手前の2つはフランス製Holophaneで上の球状の部分には安定器が入っていた。

天井からぶら下がるライトもすべて大口さんがネットで見つけて購入したもの。手前の2つはフランス製のHolophaneで、上の球状の部分には安定器が入っていた。


居住スペース半分ガレージ半分

もうひとつのポイントは、いかに住空間とガレージとを構成するかで、布施さんはこれがスタディのメインの作業になったという。

大口さんは「バイクが8台と車も2台あってどれも昔から思い入れがあるものたちばかりでなかなか手放せなかったんですね。しかも、どうしてもすべてを家の中に入れたかったので、居住スペース半分ガレージ半分ということになりました」と話す。

「バイクや車が好きだという気持ちはわかるので、ガレージ部分が日常の生活動線とどういうふうにからむように全体を組み立てたらいいのかというのはだいぶスタディしましたね」(布施さん)


大口さんが整備をしているのはVespa ET3。バイク類はすべてカスタマイズしている。

大口さんが整備をしているのはVespa ET3。バイク類はすべてカスタマイズしている。

右側のガレージでは整備も行うことができる。すぐ左手にあるドアを開けると階段がある。

右側のガレージでは整備も行うことができる。すぐ左手にあるドアを開けると階段がある。

一番右はMBK STUNT。シートは大口さん自身がデザインしたものに張り替えている。一番左はヤマハ マジェスティ125。

一番右はMBK STUNT。シートは大口さん自身がデザインしたものに張り替えている。一番左はヤマハ マジェスティ125。


バイクを上げ下げするために床を取り外すことができるようにしている。

バイクを上げ下げするために2階の床を取り外すことができるようにしている。

リビングから見える車はキューベルワーゲンのレプリカ。メキシコ製で空冷エンジンを搭載。

リビングから見える車はキューベルワーゲンのレプリカ。メキシコ製で空冷エンジンを搭載。


1階のガレージでは2柱リフトを入れるのがマストだったという。「車を中に入れるとどうしてもスペースを食われてしまう。2柱リフトだったら整備にも使えるし車を上げておけば下にバイクも置けるということで、リフトを入れたいという要望は初めのころにお伝えしました」(大口さん)

「2柱リフトありきだったので車が上下する高さとかにうまく住空間の床レベルや視線がからむほうが面白いだろうということなどを考えて空間構成を詰めていきました」と布施さんは話す。


左側のガレージには車1台とバイク3台が収まっている。

左側のガレージには車1台とバイク3台が収まっている。

フィアットABARTH 500 esseesseの左側にあるのがハーレーダビッドソンXLCR 77年製。その奥にスズキGS1200SS。

フィアットABARTH 500 esseesseの左側にあるのがハーレーダビッドソンXLCR 77年製。その奥にスズキGS1200SS。


念願だったガレージを手に入れ、さらに、自分がこだわって集めたものに囲まれた暮らしを始めて1年と8カ月。「ここでの生活は最高です」と話す大口さん。お気に入りの場所はリビングで、奥さんとのおしゃべりを楽しむのもリビングに置かれたテーブルでのことが多いという。
そして、リビングから見える自然に癒されるとも。「ここから見える緑は素晴らしいです。さらに、夏にはきれいな蝶も飛ぶし、夜はベッドに横になって上を見ると星も見えるんです」。寝ながらにして星が見えるというのはまったく考えていなかったというが、この意外な楽しみも加わって、「ここでの生活は最高」という大口さんの表現に少しも誇張はない、そのように感じた。


ホイストクレーンのチェーンが目立たないように服が掛けられている。

ホイストクレーンのチェーンが目立たないように服が掛けられている。


大口邸
設計  布施茂/fuse-atelier+武蔵野美術大学布施スタジオ
所在地 千葉県袖ヶ浦市
構造 鉄骨造
規模 地上2階
延床面積 104.2 m2