Family

葉山を子どもの故郷に大きな吹き抜けを通して
家族のぬくもりが伝わる家

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引っ越しとともにライフスタイルも大きく変化

新居を建てる場所を探していた時、緑の多い葉山の中でも、特に静かな土地を見つけた小川謙治さん・妙子さん夫妻。
「ここは交通の便があまり良くないこともあり、葉山の中でも緑が残るのどかな場所です。最初にこの土地を見た時、故郷の福島に近い印象を受け、ピピッと来ました」と妙子さん。

TV番組のディレクターを務める謙治さんが東日本大震災の取材で福島に向かった時に、実家が酪農業を営む妙子さんと出会ったのだそう。

結婚する前は中目黒に住んでいたという謙治さん。
「震災を経験して生活環境を変えたい、落ち着いた仕事の仕方をしたいと思いましたし、なにより子どもに故郷となる場所を作ってあげたいという思いが強かったです」

幸い仕事は都内に通う必要がなく、家の仕事場でやれることが多いのだそう。

住まいは鎌倉に事務所のあるエンジョイワークス一級建築士事務所が手がける『スケルトンハウス』を建てることにした。

「『スケルトンハウス』シリーズで最初に建てた家をWEBで見て、外観が木の家もいいなと思いました。内部空間を自分たちで自由に決められるのも魅力的でした」


5mを超える天井高の吹き抜けが気持ちいい。ゲストルームを兼ねた小上がりは、畳の下が収納になっている。2階に仕事部屋と寝室がある。ブルーの壁は黒板塗装。壁に飾った木と夜空の絵は、秋山花さんの作品。玄関に置いてあるのはパドルボード。「SUP(スタンドアップパドルボード)は葉山に越してから始めました」
5mを超える天井高の吹き抜けが気持ちいい。ゲストルームを兼ねた小上がりは、畳の下が収納になっている。2階に仕事部屋と寝室がある。ブルーの壁は黒板塗装。壁に飾った木と夜空の絵は、秋山花さんの作品。玄関に置いてあるのはパドルボード。「SUP(スタンドアップパドルボード)は葉山に越してから始めました」
窓の外は隣地の庭のたっぷりとした緑。のんびりとした風景が心和む。「敷地の一部に畑を作りました。去年はソラマメ、今年はナス、トマト、シソ、レタスを植えました」
窓の外は隣地の庭のたっぷりとした緑。のんびりとした風景が心和む。「敷地の一部に畑を作りました。去年はソラマメ、今年はナス、トマト、シソ、レタスを植えました」
丸いランプシェードはイサム・ノグチのもの。「家の真ん中に太陽があるイメージです」。
丸いランプシェードはイサム・ノグチのもの。「家の真ん中に太陽があるイメージです」。
ソファは『TRUCK FURNITURE』のもの。「トラックの家具が大好きで、最初に買ったのが仕事用のデスクです」
ソファは『TRUCK FURNITURE』のもの。「トラックの家具が大好きで、最初に買ったのが仕事用のデスクです」


存在感のあるカップボードも『TRUCK FURNITURE』のもの。高い場所に開けた窓から明るい光がダイニングに差し込む。
存在感のあるカップボードも『TRUCK FURNITURE』のもの。高い場所に開けた窓から明るい光がダイニングに差し込む。
コーヒー豆を挽くお手伝いが上手にできてご機嫌の春ちゃん。キッチンの小物の収納にはカゴが活躍。
コーヒー豆を挽くお手伝いが上手にできてご機嫌の春ちゃん。キッチンの小物の収納にはカゴが活躍。


「このクリナップの流し台は、福島の工場で作られています。この製品を選んだ理由のひとつになっています」と福島出身の妙子さん。
「このクリナップの流し台は、福島の工場で作られています。この製品を選んだ理由のひとつになっています」と福島出身の妙子さん。

間取りは自分たちで考えた

小川さん宅の『スケルトンハウス』は、頑丈でシンプルな構造や外壁などの骨格となる部分はエンジョイワークスにおまかせし、内部空間は自由に作ることができる。

間取りなどは小川さん自身が自分たちのライフスタイルに照らして考え、建築家には柱をなくす代わりに壁構造にして強度を確保するなどの相談にのってもらったのだそう。

「リビングを1階にするか2階にするかというところから悩んだ末、1階をキッチンから部屋全体を見渡せるリビングに、2階に寝室と仕事場、浴室や洗面所などの水まわりを作りました」

ほとんど仕切りのない家は、各部屋が伸びやかにつながる。吹き抜けを通して、1階と2階の家族の存在もゆるやかに感じることができる。

イラストレーターの秋山花さんの作品や、一緒に仕事をすることが多いクリエイターの箭内道彦さんのポスターなど、壁にたくさんの絵が飾られている。

「この家に引っ越してうれしかったのが、しまい込んでいた絵をたくさん飾れたこと。好きな場所に棚を壁にビス留めして取り付けたりなども、賃貸の家ではなかなかできませんでした」


吹き抜けに沿った廊下には壁一面に本棚を作った。本棚の上に明り取り用の窓を作った。
吹き抜けに沿った廊下には壁一面に本棚を作った。本棚の上に明り取り用の窓を作った。
寝室の模様ガラスの飾り窓は吹き抜けに面している。ベッドのマットレスは、妙子さんが仕事をしている地元葉山の「ボディドクター」のものを使っている。
寝室の模様ガラスの飾り窓は吹き抜けに面している。ベッドのマットレスは、妙子さんが仕事をしている地元葉山の「ボディドクター」のものを使っている。


謙治さんの仕事スペース。後ろの壁に貼ったポストイットを振り返ってチェック。バンカーズボックスを収めた棚は謙治さんのDIY。
謙治さんの仕事スペース。後ろの壁に貼ったポストイットを振り返ってチェック。バンカーズボックスを収めた棚は謙治さんのDIY。
洗面所は四角いフォルムのものが多い。壁の引き出しは、北欧のアンティークの引き出しを自分でビス留めして据え付けたのだそう。
洗面所は四角いフォルムのものが多い。壁の引き出しは、北欧のアンティークの引き出しを自分でビス留めして据え付けたのだそう。


葉山で庭仕事に開眼

2015年10月に竣工した小川さんのお宅。約2年半が過ぎ、外壁が美しいシルバーに変化してきた。

一昨年には庭造りをエンジョイワークスで家を作った仲間に手伝ってもらい、枕木で囲った畑も作った。

「今年は植栽にももう少し手を入れたいと思っています。ここに住む前は庭や畑のことはまったくわからなかったので日々勉強中です。園芸が仕事にもつながっています。地元で何ができるのか、模索しているところです」と謙治さん。

妙子さんは、葉山では数少ない地元企業で働き始めた。「ボディドクター」という、100%天然ラテックスを使ったマットレスを作る会社だ。
「娘と一緒に寝ても熟睡できるよう、長いサイズの枕を商品化し、神奈川なでしこブランド2018にも選ばれました」

新しい土地に意欲的に腰を据えることで、葉山がしっかりとお嬢さんの故郷となっていくに違いない。


月日とともに木の外壁がだんだんとシルバーに変わっていく。愛車は福島で購入したのだとか。「少しでも税金が福島に落ちるといいなと思いました」
月日とともに木の外壁がだんだんとシルバーに変わっていく。愛車は福島で購入したのだとか。「少しでも税金が福島に落ちるといいなと思いました」
雨風日光の影響を受ける場所は早くシルバーに。影響の少ない場所は竣工当時の木の赤みが残る。
雨風日光の影響を受ける場所は早くシルバーに。影響の少ない場所は竣工当時の木の赤みが残る。


「『ユーロ物置』は父と一緒に組み立てました。中には芝刈り機や工具、ベビーカーなどを収納しています」
「『ユーロ物置』は父と一緒に組み立てました。中には芝刈り機や工具、ベビーカーなどを収納しています」
小川邸
設計 エンジョイワークス一級建築士事務所
所在地 神奈川県三浦郡葉山町
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 60.97m2