Outdoor

車庫をギャラリーに鎌倉の森の隣に
人が集まる場所を作る

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2階は家族の共有空間

稲村ヶ崎の海が望める小高い丘の上。敷地の後ろが鬱蒼とした森になっている。なんと百瀬さんのお宅は、敷地の4分の3が森なのだそうだ。家の裏の斜面を上がった遊歩道まで百瀬さんのお宅なのだとか!

「森への入り口のような場所が気に入って、東京の千駄木から越して来ました。実家が茅ヶ崎で高校が鎌倉だったので、江ノ電沿いには馴染みがありました」と晶子さん。
夫の龍輔さんは横浜出身。ここから片道2時間かけて都内まで通勤している。そして5歳の花ちゃん、3歳の空くんの4人家族だ。

土地は鎌倉R不動産で見つけた。
家の設計は4件ほどの建築事務所に連絡をとり、最終的にフジワラテッペイアーキテクツラボにお願いすることにしたそう。

「ここを人が集まる場所にしたいという想いがありました。その希望に寄り添っていただき、また、森を活かした提案をしてくださったのが決め手になりました。
この辺りに住んでいる方はご高齢の方も多いのですが、いろんな世代の方が集まれる場所にしたいと思っています」

2階が居住空間。大きな窓いっぱいに森の濃い緑が広がる。
天井の高い、気持ちのよい空間の中央に洗面とバス・トイレがある。その周りは仕切りのないフリースペース。
「いろんな場所に布団を持っていって、毎晩違う場所で寝ています(笑)」


大きな窓から、尾根沿いの遊歩道まで続く敷地の森が見渡せる。
大きな窓から、尾根沿いの遊歩道まで続く敷地の森が見渡せる。
リビングの中央に、洗面所とバス・トイレがある。引き戸を閉めれば脱衣スペースとなる。
リビングの中央に、洗面所とバス・トイレがある。引き戸を閉めれば脱衣スペースとなる。
天井までたっぷりと高さがある。上から明るい光が差し込む気持ちのいいバスルーム。
天井までたっぷりと高さがある。上から明るい光が差し込む気持ちのいいバスルーム。


出窓に机を作った。目線を上げれば深い緑。右の縦長の窓の向こうには、稲村ヶ崎の海が見える最高の立地だ。
出窓に机を作った。目線を上げれば深い緑。右の縦長の窓の向こうには、稲村ヶ崎の海が見える最高の立地だ。
森が近い。窓の外はすぐに稲村ヶ崎の森だ。「アリ、蜘蛛、ムカデ……。虫は多いです(笑)」
森が近い。窓の外はすぐに稲村ヶ崎の森だ。「アリ、蜘蛛、ムカデ……。虫は多いです(笑)」
「1階のカフェと、2階の居住空間をきちんと分けるために、後からここのベランダから1階に降りる階段を作りました」
「1階のカフェと、2階の居住空間をきちんと分けるために、後からここのベランダから1階に降りる階段を作りました」


1階をカフェに。

1階がカフェ「INAMORI」。現在は週に2日のペースでオープンしている。

いつかお店を持ちたいと考えていた晶子さんは、東京でもお店を出せる場所を探していたのだそう。

「最初は、暮らしていた東京の千駄木で探していたのですが、千駄木の人気が高くなるにつれ、どんどん賃料が高くなってしまいました。住んでいた家は雰囲気がよくて気に入っていたのですが、築40年の古い家で住宅密集地でもあったので、東日本大震災の時にこのまま住み続けることに不安も感じ始め、思い切って東京以外の場所で家を探すことにしました」

百瀬さんのお宅は、SE構法で建てられている。耐震性能が高く、開放的な大空間を作ることができる。

「最初は鉄筋コンクリート造で提案いただいたのですが、予算が合わない。次に木造の在来工法で考えていただいたのですがまだ高い。何度も設計変更していただいて、現在の形になりました。
窓掃除が大変そうなので、窓はもう少し少なくてもよかったかなと思っていますが(笑)、大胆な空間を作ることができて、結果的によかったと思います」


壁は自分たちで塗ったのだそう。「ポーターズペイントの塗料を使い、3度塗りしました」
壁は自分たちで塗ったのだそう。「ポーターズペイントの塗料を使い、3度塗りしました」
コートハンガーは、古い建具をDIYでリメイクしたもの。
コートハンガーは、古い建具をDIYでリメイクしたもの。
テーブルとイスは空間に合わせて小さめに作ってもらったのだそう。「建築家のお知り合いの方に製作していただきました」
テーブルとイスは空間に合わせて小さめに作ってもらったのだそう。「建築家のお知り合いの方に製作していただきました」
本棚やテーブルもDIYしたもの。
本棚やテーブルもDIYしたもの。
カフェの一角には本棚も。「小さいお子さんから、近くに住む高齢者の方まで、気軽に来ていただけるような場所にしたいと思っています」
カフェの一角には本棚も。「小さいお子さんから、近くに住む高齢者の方まで、気軽に来ていただけるような場所にしたいと思っています」


車庫をギャラリーに。ピロティには工房も

この土地の前のオーナーが作った半地下の車庫をギャラリーにした。
「私の周りにものづくりをしている人が多く、そういう人たちから作品を展示する場所が欲しいという話を聞いていたので、いつかギャラリーを作りたいと思っていました」

家の裏手には、広い土間スペースを確保。
「今は主に薪を割ったり、DIYで家具を作ったりしています。将来的に、このスペースを使ってワークショップができたらと考えています」

敷地の樹々を活かすプランも考え中とのこと。
「今年のGWに、ツリーハウスクリエイターの小林崇さんをカフェにお招きして、稲村ヶ崎の山の散策イベントを行いました。斜面になっている土地には建物を建ててはいけない決まりになっていますが、ツリーハウスを作ることは可能です。いつか作ってみたいと思っています」


駐車場として使われていた半地下の車庫を念願のギャラリーに。「照明を増設した程度で、ほとんど手を入れていません」
駐車場として使われていた半地下の車庫を念願のギャラリーに。「照明を増設した程度で、ほとんど手を入れていません」
ギャラリーの奥の階段を上がっていくと、カフェの前庭に出る。
ギャラリーの奥の階段を上がっていくと、カフェの前庭に出る。
ギャラリーの階段と前庭をまたぐように半透明の波板のパーゴラがかかっている。
ギャラリーの階段と前庭をまたぐように半透明の波板のパーゴラがかかっている。
パーゴラの下は、雨の日でも子どもたちが遊べるスペースになる。
パーゴラの下は、雨の日でも子どもたちが遊べるスペースになる。


パーゴラの下には、薪ストーブ用の薪が積まれている。真砂土のたたきと芝生の境目が曖昧なデザインが素敵。菜園を囲う大谷石は、もともと擁壁として使われていたもの。
パーゴラの下には、薪ストーブ用の薪が積まれている。真砂土のたたきと芝生の境目が曖昧なデザインが素敵。菜園を囲う大谷石は、もともと擁壁として使われていたもの。
軒下の広い土間スペースは、DIYを楽しめる作業場になっている。手前の大谷石で作った炉は、周りに板を渡してベンチを作り、バーベキューを楽しんでいる。
軒下の広い土間スペースは、DIYを楽しめる作業場になっている。手前の大谷石で作った炉は、周りに板を渡してベンチを作り、バーベキューを楽しんでいる。

木の外壁は、年月が経つうちにシルバーに変わっていくに違いない。
木の外壁は、年月が経つうちにシルバーに変わっていくに違いない。

百瀬邸
設計 フジワラテッペイアーキテクツラボ
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 地上2階地下1階
延床面積 164.35m2