Architecture
3 本の丸柱が立つ“ 白の家”建て込んだ敷地で自然の景色と
快適空間を手に入れる
スタートはホワイトキューブ
白を基調とした室内に、印象的な丸柱が3 本立つ佐藤邸。佐藤さんからのリクエストのひとつは、夫婦と子供2 人(兄妹)の「家族4人の息使いが感じられる空間」だった。
庭側につくられた吹抜けを通して1、2 階が通じる空間構成は、このリクエストに十分に応えているが、佐藤夫妻が家の形やインテリアに関してそのほとんどをお任せしたという建築家の岸本さんの念頭につねにあったのは、周りに家が建て込んだその敷地状況だったという。
そして外観の色を白にすることを決めたが、その提案に対して「主に奥さんが反応されたことをきっかけに、室内がどんどんそのまま勢いづいて白くなっていった」という。
3 本の丸柱
そのシンプルな白の空間で存在感を放っているのが木の丸柱だ。最初は細くて白い鉄骨の柱を考えていたが、最終的には木(集製材)の柱に至った。そして全体のテーマとして“ 白の家” が浮上してきたあたりから、この木の柱が象徴的な存在感をもつようになっていった。
吹抜け部分に立つ丸柱は3 本のうちいちばん長く、人が1階から2 階へ向かうときに上へ上へと誘うような伸びやかさが特徴。2 本目はリビングダイニングの中央に立ち、この空間の空気をぐっと引き締めている。そして最後の1 本はロフトスペースの床を貫きそのコーナー部分を支える。
ロフトから望む自然
敷地の状況から、佐藤さんは周囲の自然の景色を楽しむことはあきらめていたが、半分外部へと突き出したこの畳のロフトスペースのフルハイトの開口からは、丹沢山地に位置した関東百名山のひとつでもある大山の景色を望むことができる。
そして、窓のないリビングダイニングのスペースとこの狭小ながら自然へと開かれたスペースとの対比が、2 階部分に空間の多様性をもたらしている。
白タイルを選ぶ
1 階の寝室には濃紺の和紙が貼られていてこの家で唯一白以外の色を使った空間になっているが、実は計画段階では、玄関から吹抜け部分の途中の1階の床の部分にはダークグレーのタイルを張ることも検討されていたという。最終的に白いタイルを選んだのは佐藤さんだった。
「白だけでなくダークグレーのタイルも2m2くらい実際に置いてみて検討をしました。土間的なものとしてグレーという選択ももちろんあったのですが、白いタイルにすれば夏の暑いときに寝たりもできる。また子どもの遊び場的にも使えるようにしたいということから白を選択しました」(佐藤さん)
照明の設計
昼間は庭側に開けられた1 階の開口から入った外光が吹抜けの壁を伝って2 階スペースにやさしく拡散するが、夜には、この開口の上に仕込まれた間接照明が昼間とは異なるやわらかな光をもたらしてくれる。この照明の設計計画を担当したのは奥さんだった。
「建築照明のデザインをしていたので、出すぎていたかもしれませんが、岸本さんに掛け合って提案させていただきました」
「天井高があってもともと広がりのある空間をさらに広がりを感じつつ過ごしたいということから考えたものでした。岸本さんにプレゼンをしてOK をいただかないとここに自分の照明プランを置けないという気持ちでがんばりました」
「大人が立つと頭が当たるし幅も狭いあの空間にいっしょにいると、はじめてお会いした方でもお互いにすごくとけ込めるんですよ。お酒を飲みながらお話をしたら、たった30 分で距離が近くなってびっくりしました。あそこで作戦会議なんてしたらうまくまとまると思いますね」
設計 acaa
所在地 神奈川県伊勢原市
構造 木造
規模 地上2 階
延床面積 162.07m2