Kitchen
創造性豊かに住まう エスプリの効いた楽しさに
温かくなれる家
眼下に中庭を眺める
都心の住宅街。狭い路地を入ると、思いがけず開ける緑の中庭。
「200軒くらい物件を見て回ったのですが、この庭が気に入って、5分で購入を決めました」
フランス人のジャックさんの家は、この庭に面する築30年の物件。ごく普通の日本家屋だったものを、ジャックさんのこだわりを活かしてリフォームした。
「もともとリビングは1階にあったのですが、日当たりを考え、南側全面を窓にしたリビングを2階にもってきたいと考えました。そうすることで地面からではなく枝や葉から木々を鑑賞できるし、バードウォッチングしたり、風や季節を感じたりできる。仲間が来ても気軽に過ごせます。ベッドルームは寝るだけなので1階でいいと思ったんです」
窓の外にグリーンが広がるリビングは、ここが新宿にほど近い都会の真ん中だということを忘れさせる、癒しの空間だ。
木を活かした寛ぎの部屋
和める雰囲気はリビングだけではない。節のある木材の床や壁に、むき出しになった梁。山小屋風のインテリアも、どこか寛げる雰囲気。
「壁紙が好きではないんです。何でも覆うのが嫌で。木をそのままむき出しにした方が温かいし、外の緑とも合うと思いました。それに、後からペンキを塗ることもできます。いつか白にしたいと思っていますが、少しずつやっていけばいいかなと」
キッチンとダイニング、リビングがワンフロアになった2階は、広々とした空間だ。
「人が集まる箱のような家が理想でした。友人をたくさん招いても大丈夫なように、空間はなるべく広く、家具はいつでも可動できるよう、フレキシブルにしておきたいんです」
天井はリビングの上だけ少し低くなっていて、ここは、使わないものをしまっておける収納棚となっている。
「便利だし、ワンルームの部屋の雰囲気に強弱がつくでしょう? 自分らしい家にしたいので、まず引っ越して住んでみてリフォームの構想を練りました。耐震補強、断熱など必要なものと、後でも変えられるものを分けて考えましたね。そして今も少しずつ変化しています」
オリジナリティあふれるキッチン
ジャックさんはトゥールーズ出身。街でレストランを開いていた祖母の手伝いで、小さいときからキッチンに立っていた経験を活かし、自宅で料理教室を開いている。
「ブイヤベース、クネル、カスレ、ポトフ、ブッフ・ブルギニヨンなど、地方の家庭料理が中心です。生徒さんは一度に7~8人集まるので、キッチンは使いやすさも大切にしました」
シンク、コンロ、キャビネットなどはすべてイケアで揃えた。アイランドも、イケアの収納棚を、同じものをふたつ背中合わせにして使っている。
「奥行きが深くて、いちばん収納しやすそうなのがイケアだったんです。木の素材で探していたのですが、なかなか木のキッチン家具は見つからなくて、あっても高いんですよね。イケアは理想的でした」
そしてナチュラルな木の空間に、鮮やかに映えるのがタイル!
「前に住んでいたマンションのキッチンに、黄色のタイルが張ってあり、明るい雰囲気だったんです。それを活かしたいと思い、代々木のタイルの店で買ってきて貼ってもらいました」
5色のタイルがパッチワークのように貼り巡らされたキッチンは、明るく、オリジナリティ豊か。部屋の中のアクセントにもなっている。
趣きあるアンティークが随所に
そんな心弾むキッチンでは、アンティークの調理器具が活躍している。例えば、年に一度帰る故郷のフリーマーケットで買った器具を使ってのソーセージ作り。時間と労力がかかるが、手作りのおいしさに、友人などを招けばあっという間になくなってしまうという。
「“VIDE-GRENIER”というのですが、家の前に要らないものを出して売る市があるんです。そこで古いものを探すのが好きですね。ル・クルーゼの鍋なども、今はない形のものが出てきたりして、おもしろいです」
ジャックさんの審美眼で選んだアンティークは、インテリアにも活かされる。玄関には“Petanque”というゲームのための古いボード。窓にはこれもアンティークのバティックを、自ら裁縫してカーテンに。“ものは増やさない、必要なものだけを大事に長く使う”というジャックさんだが、その厳しい目で選ばれた、エスプリの効いたインテリアが、温もりのある家の味わいを増している。