Style of Life
IKEAで遊ぶシームレスに楽しむ
家族との一体感
仕切りをなくして解放的に
建築家・中野憲昭さんの自宅兼事務所は、4年前、自らの思いと経験を凝縮して完成した。1階に事務所、2階にリビング&ダイニング、3階に主寝室と子供部屋。シンプルで機能的な空間に、4人の家族が集う。
「2、3階は吹き抜けで、バスルームの扉以外は仕切りのないひとつのつながった部屋になっています。敷地面積が狭いので空間を広く見せたいことと、子供が小さいので家族の気配が感じられることを考えました。可変性も高いので、将来的には間仕切ることもできます」
「子供部屋はいずれ成長に合わせて、真ん中に収納を置くなどして仕切ろうかなと思っています。でも、今はこの状態がちょうどいいですね」
南向きの窓から差し込む日差しで、この時期も昼間は暖房要らず。一体型の空間は、広々として明るく開放的で、温かさに満ちている。
IKEAとの出会い
家族のお気に入りの場所でもあるリビングは、木製ルーバーを利用してテレビを壁掛けに。配線はルーバーの間に挟み込まれ、すっきりと収まっている。このテレビで、埋め込みにしたスピーカーの臨場感のある音とともに、子供たちの大好きなサッカーの試合を楽しむのだという。団欒の場所のソファーはIKEA。中野邸は、インテリアや小物のほとんどをIKEAで揃えている。
「依頼主からIKEAの家具に合わせて設計してほしい、と言われたのが始まりでした。ストアに行ってみたら、デザインがシンプルでクオリティも高く、しかもコストが安い。これはあなどれないな、と思いました」
中野さんは住宅の設計の中で、造付の家具も提案している。
「箱だけではなく、居住空間を作るのが僕の仕事なので、収納やカウンターなども設計します。でも、コストの面でなかなかそこまで手を回せない人が多い。そこでIKEAは有効だな、と。やりようによっては造付家具に近いものができます」
家づくりを家族で楽しむ
そこで、自らの家でその有効性を実証。キッチンのシンクやカウンター、バックセットの引戸、キャビネットなど、ストアに行って寸法を測り、それに合わせて設計した。子供部屋の窓も予め選んだブラインドに合わせて大きさを決定。そうすることによって、空間に無駄が生まれず、ローコストでありながら、造付のようにすっきりとまとまる。
「家具なども、まだ足場を組んでいる工事の段階から、週末毎にやってきて、家族で組み立てていました。お弁当を現場で食べて。大変ではあったけれど、家族でつくりあげたという思いがあるし、家づくりに参加したことは、息子にとっても貴重な経験になったと思います」
手を加えて、味わい深く
白で統一された壁や家具は、家族が主役であるという、中野さんの考えに基づくものだ。
「人も住空間を構成する要素だと考えています。だから家族が着ている服だとか、使っているベッドシーツの色だとかがアクセントになるように、基本のカラーは主張しないものを選びたいと思いました」
シンプルな北欧のデザインは、そんなコンセプトにもぴったりだった。しかし、IKEAの家具をすべて、そのまま使用したわけではない。ダイニングテーブル、子供の勉強机、事務所の机の天板などは、市販のパイン集成材に、薄い白のペンキを塗装。それにIKEAで買った脚を取り付けた。
「すべてをIKEAで揃えると、どうしても樹脂系の素材が多くなってしまうんです。天板は人が手で触れるところなので、あえて木の趣きを残しておきたいと思いました。カタログに載せる部屋を作るわけではないので、やりすぎない工夫が大事です。メリハリを考えながら取り入れていきたいですね」
内装の色ともマッチしたテーブルが、洗練されたインテリアの中に、どこか温もりを加える。ダイニングのテーブルは、カウンターと組み合わせエクステンションすることもでき、子供たちの友達が来たときなどにも活躍するそうだ。機能的でありながらも温かく家族を包む空間は、子供の成長とともにまた進化を続けていく。
設計 TRUSTPLAN inc.
所在地 神奈川県相模原市
構造 木造
規模 地上3階
延床面積 112m2