古きよき千駄木の家ゆったりと時間が流れるオール畳のレトロハウス

古きよき千駄木の家ゆったりと時間が流れる
オール畳のレトロハウス

「谷根千」に帰ってきた

週末には下町の魅力を求めてやってくる観光客で賑わう千駄木。大通りから脇道に入ると、まるで昭和にタイムスリップしたかのような路地があった。道の両側には築50〜60年は経っているであろう家が立ち並び、古い家を大切にしている人々の息づかいが感じられる。

設計と大工施工を総合して請け負う建築事務所「鯰組」の広報を務める堀田智子(さとこ)さんは、5年ほど前からこの一角に一軒家を借りて住んでいる。

「『谷根千』エリア(文京区から台東区・荒川区にかけて位置する谷中、根津、千駄木周辺地区)に惹かれるんです。私は15年程前も根津に部屋を借りていて、その後山梨に10年暮らしました。5年ほど前、東京に戻ってくることになったときに、真っ先にまた『谷根千』に住みたいと思ったんです」と堀田さんは話す。


堀田邸外観。

堀田邸外観。

堀田邸のある路地。にぎやかな大通りから脇に入ると、一転して人々の生活圏。

堀田邸のある路地。にぎやかな大通りから脇に入ると、一転して人々の生活圏。


昔の姿のままがいい

「このお家は地元の不動産屋さんに紹介してもらって決めました。築60年くらい経っていて、色々な人が住み継いできた歴史を感じるところ、昔の意匠をいじらずにそのままに残してあるところが気に入りました。こぢんまりとしたつくりで、なんとキッチンまで全て畳なんです!」と話す堀田さん。

1階に4畳半とトイレ、2階には4畳半のキッチンと3畳間。以上がこの家の間取りの全てだ。「小さいところも愛せるお家です。お風呂は付いてないのですが、それでも住みたいと思える良さがこのお家とエリアにはありますね」。


小さいながらも使い勝手よく整えられたキッチン。

小さいながらも使い勝手よく整えられたキッチン。

調理道具は竹にひっかけて“見せる収納”にしている。

調理道具は竹にひっかけて“見せる収納”にしている。

2階の4畳半のキッチン。シンク前の一部以外は畳ばり。

2階の4畳半のキッチン。シンク前の一部以外は畳ばり。

トイレのタンクも昔のまま。中には銅板が貼られているそう。

トイレのタンクも昔のまま。中には銅板が貼られているそう。


1階の間取りはこちらの4畳半とトイレのみ。畳にソファやカーテンの赤がよく映える。

1階の間取りはこちらの4畳半とトイレのみ。畳にソファやカーテンの赤がよく映える。

2階の3畳間。夜は布団を敷き寝室として使う。

2階の3畳間。夜は布団を敷き寝室として使う。

1階の4畳半から玄関の方をみる。適度なほの暗さで落ち着く。

1階の4畳半から玄関の方をみる。適度なほの暗さで落ち着く。


屋号は「あゆちハウス」

堀田さんはこの家に「あゆちハウス」という屋号をつけている。

屋号をつけた理由は、同じ地番で家が何軒かあるので郵便屋さんが困らないようにと、そして何よりも家への愛情を込めて。「“あゆち”とは、水が湧く場所、知恵が湧く場所、休憩する場所という意味。来た人にリラックスして好きなだけ過ごしていって欲しい。そんな想いでこの屋号をつけました。このお家を気に入っているので、これから先も大切にずっと住み続けたいと思っています」。

あゆちハウスには、友人や知人がしばしば訪れるという。ここには、訪れた人にインスピレーションを与えるようなモノたちが集まっている。


堀田さんの友人のアーティストが作った舟のオブジェ。

堀田さんの友人のアーティストが作った舟のオブジェ。
 

キッチンシンク上のちょっとしたスペースには、調理関連の小物に混じりサボテンや貝殻が。

キッチンシンク上のちょっとしたスペースには、調理関連の小物に混じりサボテンや貝殻が。

玄関横の棚にはほおづき、松ぼっくりなど自然を感じるものをディスプレイ。

玄関横の棚にはほおづき、松ぼっくりなど自然を感じるものをディスプレイ。

神棚もあり、北口本宮冨士浅間神社のお札などが飾られている。

神棚もあり、北口本宮冨士浅間神社のお札などが飾られている。

気に入るデザインのコンポがないからと、壊れたままの機械でカセットテープを聴く。

気に入るデザインのコンポがないからと、壊れたままの機械でカセットテープを聴く。

こちらも友人アーティストの作品のひょうたんランプ。モチーフは“くらげ”だそう。

こちらも友人アーティストの作品のひょうたんランプ。モチーフは“くらげ”だそう。

古い桐箪笥が「あゆちハウス」にはよく馴染む。

古い桐箪笥が「あゆちハウス」にはよく馴染む。


デジタルから離れ、本を読み耽る

以前は編集やライター業をしていたこともある堀田さんは、とにかく本が好きだという。1階と2階合わせて3カ所にある本棚の他、昔ながらの急な階段もちょうど良い本棚と化していた。「あゆちハウスを訪れる友人にはとにかくまったりして欲しい。思い思いに好きな本を手にとって、好きな場所で好きなだけ読んでいってくれればいいと思っています。本に夢中になってそのまま借りていく人も多いんですよ」。

堀田邸にはテレビがなく、パソコンもしまわれていて見当たらない。そのせいか、あるいは味のある空間の成せる技なのか、あゆちハウスに入ると時間の流れがゆっくりになる気がする。のんびりまったりと過ごせるのだ。泊まりに来た友人が翌朝、「じゃあ帰るね」と言ってそのまま時間が過ぎ、夜までいることもあるという。

あゆちハウスの持つ、どこか懐かしくてずっと居たくなるような空気感は、家とエリア、堀田さんの三者がつくりだすものなのだろう。


1階4畳半のテーマは「赤い海の底」。カーテンを閉めると、友人達が1匹づつ付けていったという深海の生き物が姿をあらわす。

1階4畳半のテーマは「赤い海の底」。カーテンを閉めると、友人達が1匹づつ付けていったという深海の生き物が姿をあらわす。

好きな音楽のCDやカセットテープ、様々なジャンルの本を並べた本棚。

好きな音楽のCDやカセットテープ、様々なジャンルの本を並べた本棚。

階段には、そのときの気分や「あゆちハウス」を訪れる人に合わせた本を置く。

階段には、そのときの気分や「あゆちハウス」を訪れる人に合わせた本を置く。


「階段で読書をするのが落ち着くんです」と堀田さん。

「階段で読書をするのが落ち着くんです」と堀田さん。