施主自らインテリアをデザイン「外に出たくなくなる」、暖かくて開放的なコージー空間

施主自らインテリアをデザイン「外に出たくなくなる」、
暖かくて開放的なコージー空間

K邸の設計プロセス

中央線の阿佐ヶ谷駅から歩いて10数分ほどの住宅街に建つK邸。奥さんの望(のぞみ)さんはこの家を建てるのに際して、「日差しが明るくて、風が抜けていくような気持ちのいい家にしたい」と思ったという。そしてKさんは、「アジアンリゾートが好き」ということで、家づくりの基本的なコンセプトはこうした方向で進むことになった。

家づくりの要望として特別に変わったものとはいえないが、望さんがインテリアデザイナーであるため、設計のプロセスが一般的なものとはだいぶ変わったものとなった。

まず、望さんが自分たちの要望に沿った間取りを考えて、それをCAD図面に落とし込んでいったという。50案ほど作成し、その中から10案程度にまで絞り込んで建築家の坂野さんに建築サイドからの検討をお願いした。

ZA DESIGN STUDIOというインテリアデザインの会社を主宰する望さん。やはり腕の振るいどころはインテリアのデザイン。カフェをイメージしたキッチンは、白タイルの張る向きを横だけでなく縦を混在させて変化をつけている。

ZA DESIGN STUDIOというインテリアデザインの会社を主宰する望さん。やはり腕の振るいどころはインテリアのデザイン。カフェをイメージしたキッチンは、白タイルの張る向きを横だけでなく縦を混在させて変化をつけている。


「部屋数や部屋と部屋との関係のほか、ロフトを付けようかとか、いろいろな案を提案し、Kさん夫妻と何度もやり取りをして、そのなかから一番気持ちのいい案を選んでいただきました」(坂野さん)

さらに坂野さんが斜線制限に当たった部分や構造部分との関係の調整などをして基本設計がまとまった。
実施設計からは坂野さんの事務所で作成した図面をもとにインテリアのデザインを詰めていったが、その際には模型を自ら作成したという。この模型の仕上がりは建築家も驚くほどにきれいなものだったという。

ダイニングからリビングを見る。左のカーテンは、空間に少し変化を付けるために2色を選択。布とサイズを指定して製作してもらった。

ダイニングからリビングを見る。左のカーテンは、空間に少し変化を付けるために2色を選択。布とサイズを指定して製作してもらった。

階段室の壁をガラスにしたため、通常の壁で仕切ったよりも空間が広く開放的に感じられる。

階段室の壁をガラスにしたため、通常の壁で仕切ったよりも空間が広く開放的に感じられる。

望さんが自ら製作した模型は、朝鮮張りのフローリングまでつくり込まれていた。

望さんが自ら製作した模型は、朝鮮張りのフローリングまでつくり込まれていた。

リビング側から見る。天井高は3.6mと高めにした。右の開口のサッシは空まで見えるように高さのあるものにした。

リビング側から見る。天井高は3.6mと高めにした。右の開口のサッシは空まで見えるように高さのあるものにした。


こだわりにこだわったインテリア

3.6mと天井を高く取った2階は、木を多用して暖かみがあり、かつ落ち着いた雰囲気が特徴だ。そのキッチン部分では「カフェのオープンキッチンをイメージして」大きめの白タイルを壁に張ったが、一様に横張りするのではなく縦張りを混在させている。
「横張りだけだとどうしても住宅っぽくなってしまう」ので、あえてそのような張り方を選択したのだという。坂野さんが作成した設計図面から展開図のデータを引き出してそこにタイルの目地を自ら描き入れた。チーク材を張ったフローリングも同じような考えから縦横の向きが混在しているが、この朝鮮張りと呼ばれるフローリングによってアジアンチックな雰囲気も醸し出されている。


2階の浴室はホテルの浴室をイメージしたものという。

2階の浴室はホテルの浴室をイメージしたものという。
 

浴室の壁に付けられた棚にも望さんが集めていた古材が使用されている。

浴室の壁に付けられた棚にも望さんが集めていた古材が使用されている。

ダイニングのコーナーにはペンギンとカラスのかわいい置物が置かれていた。

ダイニングのコーナーにはペンギンとカラスのかわいい置物が置かれていた。

浴室前からLDKのほうを見る。

浴室前からLDKのほうを見る。


真っ白の漆喰壁の中でリビングの壁の一面にだけ濃いグレーの壁紙が貼られているが、これは空間に変化を少し付けたかったのと、濃いトーンがあると空間が締まるだろうと判断してのKさん夫妻の選択だった。

この壁に棚が4枚設置されているが、これは望さんが集めていた材で、オーストリアで建設用の足場板として使われていたものという。
その右隣の階段室の壁面をガラスにしたのも望さんのアイデアだった。「本当は1階と2階とで声が通るようにしたかったんですが、冬や夏場のことを考えてガラスで仕切りました。それと、LDKから階段室までできるだけ広く見えるようにしたかったんです」


玄関部分。左にゲストルームとして使われている和室があるが、その一部をガラスにして玄関に視線が通るようにした。

玄関部分。左にゲストルームとして使われている和室があるが、その一部をガラスにして玄関に視線が通るようにした。

格子戸を開けると、クローゼットと2つの寝室がある。階段の手摺りはモダンなテイストにしたかったためスチールに。

格子戸を開けると、クローゼットと2つの寝室がある。階段の手摺りはモダンなテイストにしたかったためスチールに。


クローゼットの前から玄関を見る。

クローゼットの前から玄関を見る。

正面奥が和室。

正面奥が和室。


お気に入りは2階のダイニング空間

バルコニーは家の裏手(南側)につくられた。ダイニングからこのバルコニーに出ると、大きな木で羽を休める鳥たちの囀りがよく聴こえるという。

「季節は今が気持ちいいですね。朝起きたときに1階から上がってくると、ダイニングの大きな開口から入ってくる光でまぶしい。それがとても気に入っています」(望さん)


中央部分の柱はマツの集成材で、塗装屋さんに現場で調合してもらって塗装色を決めたという。

ダイニングは、リビングと外部、そして階段室へと視線が抜けてこの家でいちばん開放感な空間。中央部分の柱はマツの集成材で、塗装屋さんに現場で調合してもらって塗装色を決めたという。


2階は明るい上に冬でも暖房がいらないほど暖かい。また静かなためとても過ごしやすく、休日の午前中などには、ダイニングで4歳になる息子さんと家族3人でずっと話し込んだりすることもあるという。

気持ちが良くて休日でも外出をせずに2階のLDKで過ごす日も多いというが、インテリアのプロがこだわって自らつくり上げたインテリア空間はたしかにコージーで、はじめて訪れた人間にも「外に出たくなくなる」そんなKさん一家の気持ちを十分に感じとることができた。


アプローチの木がポイントになった外観。前の庭では近所の子どもたちが遊んだりと地域の広場のようになっているという。

アプローチの木がポイントになった外観。前の庭では近所の子どもたちが遊んだりと地域の広場のようになっているという。

K邸
設計 ZA DESIGN STUDIO+フラットハウス
所在地 東京都杉並区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 82.7㎡