Architecture
人が集まる開放的な家木の香り漂う
カフェのような空間
カフェのような空間
結婚して、家がほしいと思っていたという小川さん。しかし、建売りだと間取りや素材の選択に自由があまりきかないことから、同じコストをかけるなら自分たちの好きな間取りでつくれるほうがいいと、奥さんの大学時代の友人だった建築家の山路さんに相談。そして、設計を依頼することに。
小川夫妻からのリクエストは、開放的で人が集まれる家、そして“カフェっぽい家”だった。このリクエストがそのまま実現されたように見えるのが2階のLDKのスペースだ。3.64mと天井高のある空間は、薄い色合いの木と白色を基調としたしゃれたカフェのような空間。木のフレームが縦横に走って格子を構成する大開口から入る光が、そのゆったりとしてくつろぎ感の漂う空間を満たす。
1階から2階への変更
「人が集まれる」というのは、友人などを呼ぶことができるだけでなく、家の中心として家族が自然と集まる、という二重の意味があったそうだが、カフェのような空気感を湛えたこの2階のスペース、山路さんから最初に出された案では2階ではなく1階部分に設定されていたという。
木の格子が地面と同レベルから立ち上がり、また開口部自体も大きく取られたその案を小川さんはすごく気に入ったが、水回りを1階にするなどのリクエストを満たすと1階のボリュームが大きくなりすぎ、また、開放的にもならず庭も狭くなってしまうというデメリットがあった。
そこで山路さんは、総2階にしてスペースを十分確保した2階部分を家族の集まる場所にして、機能的なスペースは全部1階に納めるという案を提案し直して現状案が採用されたという。
想定外の大きなバルコニー
2階の開口部の木格子はその中央部分の1カ所が戸になっていて、そこから外のバルコニーへと出ることができる。ポーチのようなスペースがほしい、また庭を近くに感じながら暮らしたいという2つのリクエストを満足するようにつくられたものだが、このバルコニーによって、通常は庭とは離れた関係になる2階レベルでも庭を近くに感じることができるようになった。
このバルコニースペースで何をするか、住むまで想定していなかったという小川夫妻。今では、子どもたちは星や月を見たりして、また、大人は椅子を出して、ビールを飲んだり本を読んだりして、このスペースを楽しんでいるという。
木を多用した空間
小川邸は玄関スペースから木が多用されていて、家の中に入ると木の香りが漂う。「木を使ってほしい」という希望は伝えたが、ここまで木を多用したのはコストを考えての建築家側の判断もあったという。
その中で、山路さんは「部材をそのまま使うことをこの家でのひとつのコンセプトにした」という。その最たる例が天井に何本も走る垂木材で、長さ6m、12cm角の流通材を無塗装で使用している。無駄が出ない上に施工の手間も少なくなるということで、合理的かつコストも抑えられるというアイデアであった。
今年の夏もそうして毎日のように外遊びをして、リクエストでもあった「庭と近い暮らし」をしっかりと満喫したという。
設計 山路哲生建築設計事務所
所在地 埼玉県さいたま市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 79.5m2