Architecture
シンプルライフ・イズ・マイウェイ室内でも手軽に戸外を楽しめる
都会の中の贅沢空間
「TVはどうしようかと思ったんですが、台を置くのもいやですし、壁に架けるのもどうかなと。大きければ大きいなりに存在感があるし、元々見なければ生活できないということではなかったので、いちど無い状態を試してみようと。すると、それが自然になったので、そのままTVの無い生活が続いてますね」
モノの少ないシンプル空間
「できるだけモノを外に出したくない」という八木さんは、モノはぜんぶ壁の中に隠して「できれば一面壁だけにしてほしい」と建築家に頼んだのだという。
ここまで「余計なモノがない空間」への思いが強い八木さんが、高校で同期だった建築家の富永さんに設計を依頼したのは、そもそも、そのデザインのシンプルさが気に入っていたからだった。
「それと、彼がご両親のために建てたお家がキューブの形で前面にキャンチレバーのある建物で、窓も大きくて、そういう要素を全部自分のところにもほしいなと思っていました」
スリット状の開口から戸外を味わう
空間への強いこだわりをくんで富永さんが表現してくれたものがとても自分に合っていたという八木さん。この家のお気に入りのひとつはスリット状の開口で、この家は3方の壁と天井に設けられたこの開口によって、大きく4つの空間に分割されている。
この開口からの光で、1日の移り行き、季節の中での変化を楽しみたかったが、実際には残念ながら日中は仕事でほとんど家にいられないという。「でも夜は、お月見をしてたりもしますし、星も良く見えるので、そういうことで外の気配を楽しむってことはしていますね」
屋上も活用して
夜空はお酒をお供に眺めて楽しむが、座って飲むことは割と少ないという。「だいたいここ(キッチンのカウンター)に肘をついて外を眺めたり、あるいはスリットのところで立ち飲みですね」。腰かけてしまうと1カ所からの風景になるので、移動して、眺めるものを変えてるということらしい。
都会の街中で、室内にいて夜空を楽しめるこの環境はいかにも贅沢だが、さらに、外に出た方が気持ちいのいい時には、ロフトから屋上へと出て友人たちと食事をしたり飲んだりもする。
「逆に、そうしたいけど、あまりにも暑くて蚊がうっとおしいとか、真冬で寒い時などにそういうことがしづらいときにも、こういうスリットなり天窓が活躍してくれるんですよね。上に行くにはそれなりのものを全部持っていかないといけないですが、ここに準備してあればお手軽に外を感じられますから」
高校以来の友人で気心の知れた建築家の富永さんによると、こうしたスタンスには、八木さんの趣味の車と通ずるところがあるという。家の前に駐車しているのがフィアットのパンダで、ほかにマセラッティのギブリも所有している。ともに、通好みの車だ。
「どちらも最先端の設備が整ってるようなものではないですが」と富永さん。「かわいらしいというか愛着がわくような車で、暑いなら暑いで我慢できる。それと同じような思いがこの家全体にも現れている気がしますね」
設計 富永哲史建築設計室+OUVI
所在地 東京都杉並区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 77.09m2