Green
アーバン・ガーデニング五感に働きかける
ガーデンづくりの楽しみ
空間、人とマッチしてこそ植物が活きる
「高校生の頃、建築の本でフランク・ロイド・ライトの落水荘の写真を見て、建築やインテリアにも興味を持つようになったんです」
と話すのは、今話題のプランツショップを営む「SOLSO」の代表、齊藤太一氏。当時からすでにガーデニングの仕事にも携わっていたが、この出会いが庭づくりへの思いを変えた。
「庭って、絵や風景として楽しむものというのが定義だけれど、自分は平らなスペースに庭というものを考えたことがないですね。デッドスペースだから花壇を造る、というようなことでは成功しない。建築、人、植物、3つの関係性がイコールになって初めて良いものが生まれると思っています」
「ここは農場だから、温室と一体化したオフィス、温室の進化型としてのオフィスを考えました。壁面にはビニールハウスのイメージで透明なプラスチックの素材を使ったり、インテリアも自分でデザインして、作家さんに発注しました」
天井から吊るされたエアプランツ、壁にかけられた原種の蘭、室内のガラス窓をはうつる…。温室のような明るい室内に、グリーンが映える。空間と一体となった植栽へのこだわりは、もちろん仕事で発揮され、店舗でも個人宅でも、建築段階からかかわっていくという。1年近くかけて建築家や依頼主の意向を聞き、プランニングするのだそうだ。
植物を五感で感じる庭づくり
「自分が大切にしているのは五感です。門を入ってドアを開けるまでの間に、草木が足に触れる感覚だとか、花の香りがどこからか漂ってくる感覚だとか、庭は人の五感を目覚めさせるものであってほしい。家であれば、庭が育っていく感覚も楽しんでほしいから、あえて2年後くらいに完成するようなものをプランニングしたりしますね。でも、それぞれのライフスタイルや環境があるので、ストレスにならず育てられることも大切です」
齊藤さんが提唱する“アーバン・ガーデニング”は、忙しい日常の中で、ちょっとしたアクションが起こせるグリーン空間造りだ。
「シンボルツリーが1本あれば、その下でバーベキューをしたり、オリーブの木があるなら、実をとって塩漬けにしたり。庭から何かアクションを起こすことができればいいと思うんです。自分は庭を“アウトドアリビング”と考えているんですが、建物とマッチしたベンチを置いたりして、外にあえて部屋を持つことで、中と外との境界線を取り払う。庭での出来事が、生活の中に何かアクションを起こすことにつながればいいなと思います」
自由な発想で楽しみたい
では、そのような庭づくりは、個人ではどのように実現させていくのだろうか。
「ベースをプロに頼み、楽しむところは自分たちでやるのがいいと思います。まず、大きい木を植えてもらって、後は好きなように自分で下草を植えていく。もちろん環境があるので、アドバイスを受けながらですが」
9月にオープンしたばかりの「BIOTOP NURSERIES」には、インドアからアウトドアまで、DIYにふさわしいグッズや、植物を自由にアレンジして楽しめるアイデアも満載されている。
おすすめはエアプランツ。根のない植物で葉から水分を吸収するため、水やりは霧吹きなどでOK。吊るすなら、ひもに麻や毛糸など好きな素材を使ったりして、インテリアに合わせてアレンジを楽しむのもいい。ドライフラワーやボタニカルアートを飾り、植物と組み合わせるというコーディネートも人気だ。
「ツールを揃えるところから始めるなど、ファッションから入っても全然OK。ファームでは、うちのスタッフも、デザイナーさんに発注したTシャツなどのユニフォームを着て仕事しています。自分が楽しめるやり方で、自由に発想してチャレンジするのが、僕らからのメッセージです」