Column
日本茶の新潮流-1-コーヒーの方程式で楽しむ
奥深き日本茶の世界
バリスタとデザイナーの視点から、日本茶の楽しみ方を伝えるブランド「green brewing」が旗艦店となる「東京茶寮」をオープンさせた。現代版の茶室をイメージしたミニマムな空間で、厳選した日本茶を丁寧に淹れ、茶の魅力を伝える。
その地名を、三軒伝いのお茶屋があったことに由来するという三軒茶屋。ここに、新しい日本茶の楽しみ方を伝える「東京茶寮」がオープンした。私たちにとっては身近な存在にもかかわらず、ふだん飲まない人も意外と多い日本茶。近年は急須がない家も増えたそうで、ペットボトルのお茶でなんとなく満足している人も少なくないだろう。一口に「日本茶」といっても、「産地」「品種」「蒸し・焙煎」によって、おいしさの違いが楽しめる奥深い飲み物。それを日常で多くの人に楽しんで欲しいと、二人のデザイナーによって日本茶専用のドリッパー「green brewing」が開発された。スチール製のスタンドに三角錐の磁器のドリッパーをセットしたもので、コーヒーをドリップするように、湯を注ぎ、蒸らし、茶を落とすというシンプルな工程で茶葉の旨味、風味を最大限に引き出すことができる。お茶のことをフルに考えて欲しいと、無駄をそぎおとしたミニマルな内装は、茶の世界を気負わずに楽しめるようになっている。
店で提供されているのは、静岡県、福岡県、鹿児島県の3県からセレクトした7種の日本茶。取り扱うのは基本的に単一農園、単一品種の「シングルオリジン煎茶」で、あまり日本茶を飲まない人でも味の違いがわかるよう、個性的な種類を厳選したという。ここでは7種類の煎茶のなかから2種類を選んで飲み比べるセットメニューを用意している。今回、選んだのは静岡県の「香駿」と福岡県の「やぶきた やめ」。針のように細長く揉み込まれた「香駿」の茶葉は抽出時に茶葉の膨らみが特徴で、湯を足した時にじっくりと開いていく。浅蒸しタイプで、爽やかな香りが広がる。一方、玉露の産地として有名な八女で作られる「やぶきた やめ」は、蒸しも火入れも程よく、調和した味わいが特徴で、玉露に近いまろやかな味わいが楽しめる。ここに合わせるのはパティシエが手がける和のスイーツ。コーヒーの世界で知られているペアリングのように、茶とスイーツを一緒に味わうことでまた一層違う味わいを楽しむことができる。
喫茶室の奥は物販のコーナーを併設し、7種類の茶葉、東京茶寮で使用している器を販売している。ここではスタッフとの会話もおもてなしの一つ。難しく構えてしまいがちな日本茶でも、スタッフとの会話の中から好みの味わい、淹れ方のポイントなどを細かく聞くことができる。また、茶を味わうときに一緒に出されるのが1種類ごとに作られた専用のカード。QRコードを読み込むと、茶葉がどんなところで作られているのか、生産者がどんな思いで作っているのか、そのストーリーを見ることができる。