Interior
生活に取り入れたい器-1-日常使いの器を提案する
神楽坂の「コハルアン」
器と道具の店「神楽坂 暮らす。」が今年3月1日に店名を「コハルアン」へ改名。創業時と変わらぬ視点で、暮らしを豊かにするいい器や美しい生活道具を提案する。
神楽坂の駅から徒歩5分。キュレーションストア〈la kagu〉の裏手にあるマンションの一室に「コハルアン」はある。店主のはるやまひろたかさんが営む店で、小じんまりとしたスペースに使い勝手のいい器や暮らしの道具が並んでいる。はるやまさんはもともと学生時代にグラフィックデザインを学び、その後、大手百貨店の器やインテリアなどを扱う部署で企画とバイイングの担当になったことを機に、日本のものづくりや民芸の世界に傾倒していったという。幾度となく日本各地の産地へ足を運び、作り手の話を聞くうちに、人の手から生まれたものの美しさをしみじみと感じとった。伝統を受け継ぎながら現代の暮らしに沿ったもの作りに励む作家たちを広く知ってもらいたいと、自身の店を開く決意をしたという。独立後は代官山で店をスタートし、その後、花街の雰囲気を残す神楽坂へ場所を移した。「神楽坂 暮らす。」という店名で、日常使いの器と道具を提案。そして、今年の3月1日に、「小さなはるやまがいとなむ庵」という意味を込めて「コハルアン」と改名。ミニマムなスタンスで暮らしに寄り添うものの提案を行っている。
店を始めた時からはるやまさんが大切にしてきたのは使い勝手がよく、見た目の美しさも兼ね備えた器や道具を提案すること。百貨店時代に培った人脈や、店を始めてから出会った作り手たちの作品を並べ、ここを訪れる人に日本の手仕事の素晴らしさを伝えている。器は主に越前、笠間や益子などの陶器、砥部、有田や波佐見の磁器、会津の漆器などを伝統産地のものを紹介。また、ガラスは日本各地の作り手による作品を並べている。料理好きのはるやまさんは、器を選ぶときに“料理を生かす”という視点を忘れない。主張は決して強くはないけれども、料理をしっかりと引き立て、「おいしそう」と自然に思わせてくれそうな情緒のある器を選ぶ。また、器だけでなく、東京近郊の伝統工芸にも視線を向けている。足立区で育まれた注染の手ぬぐいや神奈川の伝統工芸、中津箒なども紹介。関東でも古くから人の手によってものづくりが行われていることを多くの人に知ってもらいたいという。
店では二週間ほどのサイクルで展示を行っている。3月14日までは「Chic & Modern」をテーマに、山形県内に工房を構える3人の作家を紹介。3人とも東北芸術工科大学で学んだ若手の作家で、それぞれの個性が生きた美しいアイテムが並ぶ。陶芸家の矢萩誉大さんは白磁に銀彩をあしらった美しい器を制作。長年使い続けることで器に宿った色の変化やキズなどの質感を表現した装飾が特徴だ。吹きガラスの技法で美しいテーブルウェアを生み出すガラス作家の大内学さんはぽってりとした肉厚のガラスドームを制作。手持ちの器に合わせて使うことができ、見慣れた日常空間にガラスならではの透明感をもたらしてくれる。鍛金の作品を手がける金工作家の下山普行さんは錫の小さな器を中心としたアイテムを発表。成形するときにできる槌目をあえて模様のように生かした表情と、金属でありながら温かみを感じるフォルムが印象的な作品だ。それぞれ単体で使ってもいいし、それぞれ組み合わせて、新たな表情を感じ取るのも楽しい。
コハルアン
東京都新宿区矢来町68 アーバンステージ矢来101
03-3235-7758
12:00〜19:00(日・祝日・展示最終日は~18:00)
月・火休
東京都新宿区矢来町68 アーバンステージ矢来101
03-3235-7758
12:00〜19:00(日・祝日・展示最終日は~18:00)
月・火休