Renovation
古民家をリノベーション農園に建つ古民家を、
コミュニティスペースに
嫁ぎ先の建物に惚れ込んで
田園都市線の梶が谷駅から徒歩5分ほどのところに位置する澁谷農園。都市部にある希少な農園として、近隣のレストランや住民に新鮮な野菜を届けている。
その澁谷農園の敷地内に建つ「母家」は、築100年以上という古民家をリノベーションしたスペースだ。このリノベーションを行った同農園の澁谷直子さんは、「この建物は、私が嫁いできた17年前には義理の父母が住んでいたんです。その後は敷地内に新築した離れに住まいを移しましたが、いつかはこの建物を再び住めるようにしたいと思っていました」と話す。
直子さんのご主人が生まれ育ったという建物は、囲炉裏の煤にいぶされた太い柱や梁に支えられた堂々たる佇まい。「貴重なものなので、次世代に引き継げればと思っていました」。
多くの人が交流できるスペースに
正確な年数はわからないものの、「築100年以上は経っていた」という建物は、寒さや雨もりなど住むには改修が必要な箇所が多く、さらに台所は近年システムキッチンにリフォームされていたという。そこで澁谷さん夫妻は、できるだけ元の姿に戻しつつ、より多くの人が使いやすいようなスペースに再生したいと考えた。
10歳の双子のお母さんでもあり、ジュニア野菜ソムリエの資格をもつ直子さんは、それまでも地域の子どもたちを対象に「農園キッズ」というイベントを開催していた。「子育てする中で、子どものお友達のお母さんから『畑で野菜が育つ様子を子どもたちに見せたい』という声が寄せられたことから始めたイベントなんです」と直子さん。こうした経験から、母家を再生したら、家族だけでなく、広く地域に開いたスペースとし、多くの人と共有できたらと思うようになったという。
そのためリノベーションでは、イベントなどを開催しやすいようにと靴のままで入れるコンクリートの土間スペースを広くとり、その土間にキッチンを併設。また、奥に続く15畳・15畳・30畳の畳敷きの広間も開放できるようにした。
手芸や料理、ヨガ……多彩な教室が開講
「澁谷農園 母家」がオープンして約2年。今では農園体験のほか、曜日ごとの場所貸しでヨガやこども向けの英語やそろばん、ベビーマッサージなどさまざまな教室が開催されている。
取材当日は、午前中に料理教室が、午後には「農園キッズ」と「あそまめ創作教室」が開催されていた。「あそまめ創作教室」は、グラフィックデザイナーでありフェルト作家でもある遠藤祐子さんがレクチャーする創作教室。この日は初心者向けのフェルト教室がひらかれていた。
広間では大勢が集まるイベントを開催
15畳・15畳・30畳の畳敷きの広間は、かつては寝室や居室として使っていたスペース。現在は畳敷きであることを活用し、ヨガやベビーマッサージの教室が開催されている。
また、建具を開け放てば百人近くが集える大空間になることから、人がたくさん集まるイベントの開催もできる。「昨年の10月には1周年記念として、入船亭扇辰師匠をお招きして落語会も開催しました。そのときは50人を超える人が集まったんですよ」(直子さん)。
農園の野菜を使った料理教室
母家で力を入れているイベントのひとつが、澁谷農園の採れたて野菜を使った料理教室。シチリア料理のシェフによる料理教室を定期的に行っている他、「豆金の日」にはプチランチ教室も開催。取材当日も、工藤洋子さんを講師に野菜をふんだんに使った料理をつくり、食べる会が催されていた。
「いろいろな人が集まる場になってくれて嬉しい」と話す直子さん。長い歳月を経た空間は、新たな息吹が加わることで、今後がますます楽しみな空間に育っていた。