Renovation
自宅でパン教室を開く愛着あるモノをしつらえて
楽しみながら暮らす
中古住宅を自分好みに
「リフォームで自分の好きなように手を加えたかったので、中古住宅を探していました」。
パン生地に色鮮やかな自家製バジルペーストを塗りながら話す、三木みゆきさん。さいたま市にある自宅の1階で開くパン教室「クラスカフェ」は、文字通りアットホームな雰囲気で楽しめる少人数制のレッスンが好評だ。
7年前、家族の生活スタイルの変化によって、それまで暮らしていたマンションが不便になったことから、中古住宅を探し始めた三木さん一家。半年ほど探して見つけたこの家は当時築22年。当初の希望より築年数が経っていたが、元の建て主が建築の仕事に携わる人だったことを知り、「それなら基礎や構造が丈夫だろうと思って」購入を決めた。
入居にあたり、床をタモの無垢材に張り替えたほか、川口市のオーダー家具店「アローズ」にドアや造作収納をオーダーするなどして、自分好みの空間にリフォーム。ビニールクロス張りだった家中の壁は、家族や仲間とともにDIYで漆喰を塗ることにした。マンション時代にも壁塗りを経験済みで、“マイ鏝”を持つほどの腕前である三木さんだが、クロスの下地を剥がす作業が難しく、すべての壁を塗り終えるまでに2カ月もかかってしまったという。
「工費削減のつもりだったんですが、大工さんに『そんなに日数がかかるなら、職人に任せて奥さんはパートにでも行ったほうがよかったね』と言われました(笑)」。
とはいえ、自分の手で塗った壁は愛着もひとしお。「きれいに塗れていないところもありますが、下手でも味が出るから自分で塗るのが好きなんです」。
暮らしを彩るモノたち
マンション時代から開いていたパン教室「クラスカフェ」は、1階のリビングダイニングで行うことに。キッチンとリビングダイニングの間の壁が構造上撤去できなかったため、ひとつながりの空間にしたいという希望は叶わなかったものの、キッチンと横並びの位置にパンづくりの作業台を配置することで、効率よく動けるように工夫している。
圧倒的な存在感を放つこの作業台は、洋服の仕立て職人だった三木さんのお父さまが長年裁断台として使っていた板をリメイクしたもの。分厚い板の表面には、無数の目打ちの跡があり、無骨ながら味わい深い表情が魅力的だ。「実家のベランダで雨ざらしになっていたのを見つけて、使わないならちょうだいと。この板だからほしいのに、父からは『新しいのを買ってあげるよ』なんて言われました」と笑う三木さん。造形作家の沢田英男さんの手によって建築資材のアングルと組み合わせられ、現代的なセンスが加わった唯一無二の作業台へと生まれ変わった。
このように、古いものを上手にミックスして暮らしに取り入れていることも、三木邸の特徴のひとつ。お母さまの嫁入り道具だった桐たんすも、知人から譲ってもらった棚と組み合わせて、リビングの飾り棚として活躍中だ。ご家族の思い出の品、古道具店やギャラリーで買い求めたものを、自由に組み合わせて楽しむ三木さん。「素敵なものを見つけた時、どこに使えるかな?と考えるのがおもしろいんです。とくに古いものは、買うのを迷っているとなくなってしまうことも多いので、その時の“出会い”を大切にしています」。
箱型水中メガネの中に彫刻作品を飾ったり、用途のわからない古道具をベルト掛けにしてみたり……。住まいのあちこちから、三木さんがモノとの出会いを存分に楽しんでいることが伝わって来る。
二人三脚のDIY
もうひとつ、三木邸を紹介するうえで欠かせないのが、ご主人によるDIYだ。“作品”の中でいちばんの古株は、20年ほど前にホームセンターで購入したキットでつくったというダイニングチェア。折れた背もたれもご主人自ら修理して、今でも毎日活躍中だ。
結婚してからDIYを始めたというが、もともと手を動かすことが好きだったこともあり、その腕前はどんどん上達。今では三木さんの要望に合わせて棚をつくったり、2階個室の押入れを解体してクローゼットに造りかえたり、大掛かりな作業もお手の物に。「デザインをああして、こうしてと言うので、いつも言い合いになります(笑)」と三木さん。ケンカしつつも、楽しみながら手を動かすご主人の様子が浮かんでくるようだ。
人が集まる心地いい空間
自分の感性に合うように、使いやすいように工夫し、モノ選びを楽しみながら暮らす三木さんの住まいづくりは、これからも続いていく。
「クラスカフェ」http://pantocurasu.jugem.jp/