Style of Life
本物で構成された住まいの魅力アンティークの家具が映える、
サンタフェスタイルの家
ライフスタイルから住まいを考える
津久井湖を一望できる高台に建つ、サンタフェスタイルの家。木堂勝弘さん・久美子さん夫妻は、約20年前に自然に恵まれたこの地に暮らすことを決意。純和風の日本家屋を手に入れ、自分たち好みのスタイルに大改築した。
木堂夫妻が家づくりで大切にしたのが「どんなライフスタイルが心地いいか」ということだったという。「犬と一緒に、ジーンズで暮らせること」(久美子さん)、「ワークブーツを履くことが多いので、靴を脱がないこと」(勝弘さん)と希望を話し合ううちに、学生時代にふたりが過ごしたアメリカのサンタフェスタイルの家に落ち着いた。
「20年前は輸入建材がとにかく高くて。でもそれ以上に大変だったのが、工務店に私たちのイメージを理解してもらうことでした」と当時を振り返る夫妻。「言葉や写真だけでは本当のところはわかってもらえないから」と、工務店の人をアメリカまで連れて行ったこともあったという。
アメリカで学んだ家づくりの楽しみ
学生時代を1970年代のLAやバークレーで過ごした木堂夫妻。ヒッピーカルチャー全盛のアメリカに暮らしたふたりは、やがて古着の輸入販売を手がけるようになった。「ふたりで車に乗って、アメリカの地方のお店をまわってリーバイスを仕入れるんです。その頃からふたりとも家を見るのが大好きで、各地で家を見学するツアーによく参加しました」(久美子さん)。「アメリカでは、外に遊びに行くよりも家で楽しむ文化が定着している。だから家のつくりにも余裕があるし、フリープランの楽しさがある。いい家を建てれば、古くなるほど価値が高くなっていくんです」(勝弘さん)。
アメリカでの経験から学んだことを、自分たちの家づくりでは各所にいかした。「そのひとつが、住まいはロケーションが大切ということ。だから、自然に恵まれたこの場所を選んだんです」(久美子さん)。夫妻は当時、渋谷で古着ショップを経営していたため、毎日津久井湖から通勤していたそうだ。「ガレージからキッチンに直接アクセスできると便利だとか、火があると冬も楽しいから暖炉を作ろうとか、自分たちにとって暮らしやすい間取りや設備をどんどん取り入れました」(勝弘さん)。
本物の素材が生み出す心地よさ
こうしたこだわりが実を結び、もとは日本家屋だったとは思えない住まいが完成した。「玄関を入って、まっすぐ湖の見えるパティオに出られる動線がほしかったので、構造的に可能な限り、壁をつくらないようにしました」と勝弘さんが話すとおり、1階はホール・リビング・ダイニング・キッチンがひと続きとなっている。2階の一部を吹き抜けにしたこともあり、開放感あふれる空間だ。
建材や素材も「なになに風、とかなになに調はイヤだから、すべてアメリカからもってきました」と言うとおり、本物ばかり。リビングの床は土を焼いたテラコッタタイル敷きで、壁はすべてスタッコ仕上げだ。
木堂夫妻のすごいところは、モノを単に輸入するだけでなく、空間でどう活かすかまでを考えていること。例えばリビングのアクセントにもなっている木製のコラム(飾り柱)も、サンタフェで見つけて日本に持ち帰ったものだが、コラムの高さに合わせて梁をかけるなど、プランづくりの段階から効果的な配置を検討した。こうした工夫の積み重ねにより、見た目だけでない心地よさが生まれているのだ。
家で過ごす時間こそ、豊かなものに
空間の完成度をさらに高めているのが、部屋の至るところに配されたアンティークの家具。改築にあたってアメリカ各地で集めた家具を、コンテナで日本に輸送した。「ダイニングテーブルは、とにかく重くて、ピックアップトラックに載せるのにも一苦労。道を歩いていた人たち3人に声をかけて手伝ってもらいました」(勝弘さん)。このテーブルが大きかったため、ダイニングを当初より50㎝ほど広げることになったという。「古いものには、我々が見つける前の持ち主の思いがあるのがいいし、宝探しのような楽しみもあります」(久美子さん)。
家づくりがきっかけとなり、夫妻は古着からアンティークの家具の輸入へと仕事をシフト。渋谷の古着ショップは人に譲り、現在は自宅近くで輸入家具や什器などを扱う「RUSTIC GOLD」を営みつつ、ハウスプランナーとして活動している。「買い付けなどで海外にいくことも多いので、家で過ごす時間はかけがえのない楽しい時間です」。もともと人を招くことが多かったというが、パーティのときなどはこの家に50〜70人もが集まることもあるそうだ。木堂夫妻がアメリカで体験した「家で楽しむ」カルチャーは、そのステージとなる住まいを得て、日々の暮らしに息づいている。
アメリカから輸入したアンティーク・プリミティブ家具・什器・装飾品などを販売する「RUSTIC GOLD」