Style of Life
バイクガレージのある家条件の厳しいひな壇地で
快適住宅をつくる
バイクガレージが必須
家を建てようと思った大きなきっかけのひとつは、バイクガレージだったという馬場夫妻。バイクを3台所有しているため、車のほかにバイクのためのガレージが必要だった。
家とは別の場所に置くとなると駐車代がかかるうえに盗難も心配。さらに、「自分たちが乗りたいときにすぐ乗れるようにしたい、家にいてもバイクが見える」という希望を満たすには、自分たちでオリジナルな家を建てるしかないという判断に至った。
設計は建築家の齋藤さんに依頼。「バイクガレージをつくる、寝室などは小さくてもいいのでとにかく大きなリビングダイニングがほしい」に加え、和室や仕上げに関する要望を伝え、馬場家の家づくりが始まった。
厳しかった敷地条件
比較的安価ながら広めで、自分たちが通勤できそうな範囲にあるという条件のもと見つけた土地は、ひな壇上に家が建ち並ぶ住宅地の一角だった。土地に課せられた条件が厳しかったため、それらと格闘しながら要望に合い、かつ快適な住宅の実現をめざすことに。
建築法規のほかにも市の条例による規制があった。これらの中で苦労したひとつは、“開発行為”にならないようにすることだった。「道路からひな壇までがだいたい2mぐらい。でも、2m以上掘ったら開発行為になり、既存の古い擁壁を再評価しないといけなくなる。それで擁壁を全部やり直すことになると、それだけで何千万もかかってしまうんです」(齋藤さん)
「こういう土地は難しいけれども、逆に厳しい条件を手がかりに建築をつくっていくのはけっこう面白い」と語る齋藤さん。法規を逆手に取り、車とバイクのガレージと、そのほかの部分を別棟として建てることを考えた。そうすることで、ガレージ部分が地下扱いにならず、地上1階建て(ガレージ2つ)+地上2階建て(住居部分)の“2棟でひとつの家”となる。
階段がつくれない
3階建ての家を1棟つくるより、2棟に分けてガレージ以外の部分を2階建てにしたほうが家全体の高さをもっと高く取ることができるところから出されたアイデアだが、そうした恩恵がある一方で、別棟という扱いゆえの制約が発生した。
「別の建物になるので構造を切るのは納得できるんですが、“機能も切って下さい。あくまでもガレージの部分は離れだから行き来ができてはいけません”と言われたんです」(齋藤さん)。そのため、当初RCの跳ね出しで考えていた、リビングからガレージへと降りる階段をつくることができなくなった。
「それで行政にも納得していただいた。逆にそういうことにでもしないと、お2人がバイクが好きで、リビングにいながらガレージを見渡すことができて、気になったらすぐ整備に行けるということがこの家の設計条件だったから、リビングから出入りできないとそもそも計画が成り立たないんですね」
明るい色と暗めの色
ガレージやリビングダイニング、和室などに関してのほかには、夫妻からは仕上げに関する要望があった。「フローリングにはいい材を使いたいというイメージがお2人にあったので、いくつかサンプルを取り寄せて提案しました。その中からお2人が選ばれたオーク材は、190㎜と幅広のもので少しオーセンティックに見えて、硬くて傷がつきにくいものでした」
天井と床に明るめの仕上げを希望したのは夫妻だった。「いろんな雑誌を見ていて、暗いよりも明るい雰囲気のほうがいい」と考えていたという。
リビングからロフトにかけて大きな天井が斜めにかかっているのもこの家の大きな特徴だが、齋藤さんはこの天井と床の張り方にもこだわった。いわゆる“乱張り”というもので、そうすることで、空間に少し動きを与えることを狙ったという。
そのため、「朝などは明るくて、電気をつけなくても全然大丈夫」(馬場さん)という。奥さんも「最近だと、夕方6時半くらいにならないと電気はつけないことが多い」と話す。
そして、家の中を心地よい風が吹きわたっていく。これには取材中になんども感心させられた。馬場さんも「涼しいです。会社の人はみんなすでにクーラーをつけているって言ってますが、うちはまだつけていないですね」と話す。
馬場さんは、リビング前につくられた庭の横にロッキングチェアを置き、そこでゆったりと過ごすのが気持ちが良くて気に入っているという。たしかにこのリビング空間は爽やかで心地良く、行政との厳しいやり取りがあったことなど、微塵も感じさせなかった。
設計 齋藤隆太郎/DOG一級建築士事務所
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上2階(住居部分)+地上1階(ガレージ)
延床面積 123.78m2(ガレージ含む)