Style of Life
中庭がもたらす贅沢な時間空のうつろいを愉しむ
モダンリゾートハウス
リゾート感たっぷりの中庭
都心からも程近い閑静な住宅街で暮らすKさんご一家。「今まで住んでいた家が手狭になったため、3人目の子どもが生まれるにあたり、新築を決意しました。まだまだ子どもに手がかかるので、近くに住んでいる母に時々来てもらい、助かっています(笑)」(奥さま)
3年前に建てたというK邸は、天然石の重厚感と、白く大きな物体が浮かんでいるような浮遊感とが同居したモダンな外観が一際目を引く。南西の角地という好立地ではあったが、道行く人や周囲の住宅からの視線が気になるところだった。それを解決したのが中庭を設ける案。「家を建てるにあたり、カーテンを閉めっぱなしの生活は嫌だね、と妻と話していました。幸い土地が広く、中庭のスペースが取れたことで、希望どおりのオープンで明るい家になりました」
リビングとひと続きの中庭の壁面には、表情豊かな天然石・クインが貼り付けられている。アジアを代表するリゾートホテル「AMAN JIWO」でも使用されている天然石だけに、高級リゾートホテルで過ごすような非日常とくつろぎをもたらせてくれる。
“光の芸術家”タレルの作品がモチーフ
K邸の最大の特徴は、中庭の上部が正方形に切り取られ、常に空や光を感じ取れることだろう。それはまるで額縁のようで、吸い込まれるように視線が自然と空へと向かう。
この空間は、建築や美術に造詣が深いご夫妻が、新潟県の越後妻有で3年に1度開催される「大地の芸術祭」に訪れた際に宿泊した、ジェームズ・タレルの「光の館」内にある作品がモチーフだそう。「中庭を作るなら、空や光の変化をいつも感じられる、“光の館”の『Outside In』みたいのも面白いね、と妻と意見が一致したんです」と話すご主人。リビングのソファに座り、刻々と変わる空や雲、星などを眺めていると、時間を忘れて見入ってしまうそう。「1日の時間の変化や天気、季節の移り変わりに敏感になり、家族の会話もそれらの話題が増えましたね」とご夫妻。「外部からの視線はカットしていますが、外との距離はかえって近くなりました」と、人目を気にせず、空の気配を存分に感じながら、心地よい時間を過ごされているようだ。
ウォールナットと天然石を効かせて
「ウォールナットの濃い目の茶色が好き」というご主人。キッチンや棚、建具など、随所にウォールナットを使用することで、あたたかみのある落ち着いた空間に導いている。
こだわりがのぞく洗面所には、ウォールナットで縁どりをした鏡があり、その後ろの壁には天然石のライムストーンを貼り付けた。また、来客用として用意した1階のトイレは、ウォールナットのカウンターにリバーストーンの洗面ボウルを設置するなど、木材と天然石の自然を意識した組み合わせが、リゾート感を盛り上げる。それは、設計を依頼した「Kaja Design」の得意とするところでもあり、Kさんご夫妻のイメージを具現化する良きパートナーとなったようだ。
広いスペースでも家族の距離が近い
リビングの上は大きな吹き抜けになっている。可能な限り高く設計してもらったという勾配天井は、最も高いところでは5m以上もある。「なるべく開放的にしたいという思いから、大胆な吹き抜けは私の強い希望でした」とご主人。2階のスタディールームや寝室、書斎、将来の子ども部屋までがつながったダイナミックな空間となった。
「子どもたちが大きくなり部屋に籠るようになっても、気配を感じられるようにしたかったんです」とご主人。夜、リビングでテレビをつけていると、2階の寝室から、「うるさいから音を小さくして」と言われるとか。「家は広いですが、思った以上に距離は近いですね。気配を感じすぎちゃいますから」と笑う。
結婚後、育児をしながら保育士の資格を取得したという奥さま。一番下のお子さんが就学したら自宅で保育施設を開く予定であり、区の保育ママ制度の要件を満たした部屋をすでに用意している。また、いずれは、2階の子ども部屋に留学生などの受け入れも考えているそう。
空や木、石など自然に囲まれた上質な空間で、心豊かに暮らすKさんご一家。子どもさんたちの成長に加え、時間の経過とともに風合いが深まる自然素材の住まいや暮らし方がどのように変化していくのか、それもまた楽しみである。