Style of Life

大人のための都会の隠れ家山を愛する二人の
シンプルかつソリッドな空間

大人のための都会の隠れ家 終の住処に選んだのは シンプルかつソリッドな空間

大人二人が暮らすためのミニマムな空間

ファッション関係の仕事をするSさん(50代・女性)と、写真家・山岳ガイドとして活動するKさん(60代・男性)。パートナーの二人が暮らすのは、品川区の住宅街にこの春完成したばかりの住まい。家を建てるきっかけは、Sさんが築50年の実家を受け継いだことだったという。「当時としてはモダンなRC造の建物でしたが、古さゆえ快適とは言い難い住環境でした。そこで、取り壊して新たに家を建てようと思いました」(Sさん)。

家づくりにあたっての二人のコンセプトは「都会の隠れ家」。「50〜60代の大人が、必要最小限のモノで暮らしていくためのシンプルな家を建てたいと思いました。私は写真家・山岳ガイドという仕事柄、東京を離れ自然の中にいることが多く、彼女も山登りを一番の趣味としているので、逆に住まいはアーティフィシャルな空間を楽しみたいと思いました。」(Kさん)。

間取りの面では、住宅密集地のため閉じたつくりとし、北側と北西側が道路に隣接するためベッドルームを南東角に配置した。さらに空間を有効活用するために廊下を設けず、リビングやダイニング、寝室など暮らしの中心となるスペースは2階にまとめた。2階は間仕切り壁を設けず、建具やカーテンで仕切っている。「限られた空間を有効に使うために、2階は部屋と部屋が直接つながるレイアウトに落ち着きました」(Kさん)。

キッチンの奥から二階全体を見渡す。2階はワンルーム的な設計。ダイニング・リビング・寝室を、アイアンのガラス吊り戸とカーテンで仕切っている。
キッチンの奥から二階全体を見渡す。2階はワンルーム的な設計。ダイニング・リビング・寝室を、アイアンのガラス吊り戸とカーテンで仕切っている。
2階やロフトへ上がる階段の手すりもアイアンで統一。北西側にスリット状の明かりとりの窓を設けている。ロフトへの階段下にはピアノを置いた。
2階やロフトへ上がる階段の手すりもアイアンで統一。北西側にスリット状の明かりとりの窓を設けている。ロフトへの階段下にはピアノを置いた。
ロフトからリビングを見下ろす。照明は、ルイスポールセンの「パテラ」。点灯していない時でも美しく光を演出する照明は、二人のお気に入りだ。
ロフトからリビングを見下ろす。照明は、ルイスポールセンの「パテラ」。点灯していない時でも美しく光を演出する照明は、二人のお気に入りだ。

NYのロフトをイメージしたインテリア

インテリアについては、主にSさんの好みが反映されているという。「ピンタレストなどでいいなと思う画像を集めていたのですが、その中で見つけたNYのロフトがイメージの源になりました」(Sさん)。アイアンを使ったモノトーンの空間に惹かれ、自宅にもアイアンのガラス建具を採用した。「アイアンの建具、階段、手すりをキーにして内装を組み立て、壁紙や床はグレイッシュな色調を選びました」(Sさん)。「モノトーンの壁は、陰影を楽しむことができて、また飾った写真がよく映えます」(Kさん)。

ほとんど外食をしないという二人にとって、キッチンは大切な場所。設計段階から悩み、こだわり続けた結果「使わない時には家具のように見え、それでいて機能的なキッチン」を目指したという。「フラットな棚板面、カウンタートップの質感や色合いなどが気に入って、クッチーナでオーダーしました」(Sさん)。

使わない時には家具のように見えるキッチン。キッチンのデザインは、天板をセンターにして、左右対称シンメトリーにした。ダイニングの照明は、ルイスポールセンの「アバーブ」をチョイス。
使わない時には家具のように見えるキッチン。キッチンのデザインは、天板をセンターにして、左右対称シンメトリーにした。ダイニングの照明は、ルイスポールセンの「アバーブ」をチョイス。
コーヒーをいれるKさんと、ダイニングでくつろぐSさん。テーブルは、ウォルナットの挽き板を巾接ぎした天板と特注のアイアンの脚の組み合わせ。
コーヒーをいれるKさんと、ダイニングでくつろぐSさん。テーブルは、ウォルナットの挽き板を巾接ぎした天板と特注のアイアンの脚の組み合わせ。
キッチンの収納。扉を開けると広い収納スペースが現れる。引き出しと扉は把手がないタイプを選び、スッキリと見えるように。
キッチンの収納。扉を開けると広い収納スペースが現れる。引き出しと扉は把手がないタイプを選び、スッキリと見えるように。

充実した収納や全館空調もテーマに

必要最小限のモノでの暮らしを目指しつつも、洋服やアウトドア用品など、仕事柄持ち物の多い二人。家を建てる際には、「狭い家を広く使う」ことを重視し、収納スペースを十分に設けた。2階の寝室に続く3.5畳のウォークインクロゼットのほか、1階の多目的スペース奥にも3.3畳のウォークインクロゼット、階段下に2.4畳の納戸、さらに玄関にシューズクロゼットを設けている。

また、設計段階の当初から、全館空調を希望したという。「ワンルーム的なレイアウトにすると個別のエアコンでは効率が悪いこと、より高齢になった時にヒートショックなどを起こさないために、24時間全館空調を選びました。太陽光パネルも設置したので、晴れた日ならかなりの電力を賄えています」(Kさん)。この家で暮らし始めて約2カ月が経つが、「以前のRCの家は部屋によっては極端に夏暑く冬寒かったのですが、全館空調のおかげで快適です」とSさんが微笑む。

始まったばかりの「都会の隠れ家」での暮らし。これからこの空間で、シンプルかつ豊かな日々が紡がれていくのだろう。

寝室はシックな柄の壁紙を選んだ。ダウンライトを仕込んだ壁の向こうはウォークインクロゼットになっている。
寝室はシックな柄の壁紙を選んだ。ダウンライトを仕込んだ壁の向こうはウォークインクロゼットになっている。
寝室からからウォークインクロゼットに入るところに、造作のベンチと明かりとりの窓 を設けた。
寝室からからウォークインクロゼットに入るところに、造作のベンチと明かりとりの窓を設けた。
ウォークインクロゼットには、二人の衣類などを収納している。
ウォークインクロゼットには、二人の衣類などを収納している。
リビングから階段を上がったところにあるロフト。Kさんの山用のシュラフや書籍を置いているが、気分転換に読書や昼寝をすることも。
リビングから階段を上がったところにあるロフト。Kさんの山用のシュラフや書籍を置いているが、気分転換に読書や昼寝をすることも。
1階のバスルームは、洗面、トイレにランドリーコーナーを合わせて水回りを一箇所に。ガラス張りにして広さを演出。
1階のバスルームは、洗面、トイレにランドリーコーナーを合わせて水回りを一箇所に。ガラス張りにして広さを演出。
一階のフリースペースは、山に行く支度をしたり、ゲスト用のベッドルームに使う予定。奥にはウォークインクロゼットがある。
一階のフリースペースは、山に行く支度をしたり、ゲスト用のベッドルームに使う予定。奥にはウォークインクロゼットがある。
気に入った写真を額装して飾るためにもシンプルな内装に。「内装をグレーで統一した理由の一つは、写真が引き立つからです」(Kさん)。
気に入った写真を額装して飾るためにもシンプルな内装に。「内装をグレーで統一した理由の一つは、写真が引き立つからです」(Kさん)。
2階へ上がる階段にもアイアンの手すり。北西側にスリット状の明かりとりの窓。 ジムトンプソンのテキスタイルでシェードを。
2階へ上がる階段にもアイアンの手すり。北西側にスリット状の明かりとりの窓。 ジムトンプソンのテキスタイルでシェードを。
一階玄関ホールの照明は、FLOSの「IC LIGHT」。ショールームでひと目見て気に入り、 モノトーンの玄関のアクセントにした。
一階玄関ホールの照明は、FLOSの「IC LIGHT」。ショールームでひと目見て気に入り、モノトーンの玄関のアクセントにした。
外観。通りに面した玄関は、外扉と内扉を設け、ともに引き戸を採用した。
外観。通りに面した玄関は、外扉と内扉を設け、ともに引き戸を採用した。