DIY
手作りカフェ空間人とつながる
和みのキッチン
友人の力を借りてDIY
料理家、カフェプランナーとして活躍する柚木さとみさんの自宅は、2年程前、築55年の民家をセルフリノベーションして完成した。
「前に住んでいたところを急に立ち退かなくてはならなくなって、慌てて探したんです。ここは条件の上でも、本当にラッキーな出会いでした」
閑静な住宅街。砂利の小道を入ったところに建つ木造の古い一軒家の中に入ると、カフェのような温かな空間が広がっている。
「当初は古民家なんて素敵なものではなくて、とにかくボロボロ。それを友人に手伝ってもらって、限られた時間と予算の中で大改造しました」
畳を全て取り外し、床、壁、天井を落とすなど解体に2日。ガスや水道の位置も移動し、土台となる根太だけ大工さんに張ってもらい、断熱材を入れてフローリングを敷いた。塗装や壁を補修したりするのに数週間かけ、木の梁をむき出しにした天井はきれいに仕上げた。
「いろんな分野の友人の力を借りられたことが大きいですね。建築家の友人には私が考えた図面を起こしてもらい、耐震性などを見てもらいました。ほかにもアーティストや鳶職人の友人などもいて、ウッドデッキやキッチンカウンター、収納棚などを作ってくれました。みんな学生時代の友人だったり、そのつながりだったり。いつも2~3人来て作業をしていましたね」
廃材利用でコストカット
急な引っ越しの為、予算の面でも大奮闘。
「家の下から出てきた廃材を使って棚にしたり、友達が住んでいたアパートが取り壊されるというので、そこにあったドアやキッチンのシンクをもらってきて使用したりしました。使えるものはなんでも使う、可能な限りもらえるものはもらう、という感じでしたね(笑)」
フローリングは床材ではなく、より廉価なものをホームセンターで購入。
「ビスを打ってやすりをかけ、体に優しいという自然塗料を塗りました。赤ちゃんを連れて遊びにくる友人もいるので」
バスルームは年季の入ったバスタブを取り外し、タイルを敷きつめてシャワールームに改造した。
「タイルもお得な商品を見つけて(笑)。その予算でよくここまでやったねって感心されます」
廃材の味わいや手作りの温かさ、それがこの家のいちばんの魅力となっている。
仕事場のキッチンをメインに
もともとカフェの店長をしていた柚木さん。その後、カフェプランナーとして空間づくりをしていく中、料理にも興味が広がり、仕事も自然と変化していったという。自らの家づくりには、その経験が結集したようだ。
「プランニングの仕事はコンセプトありきで考えるので、モダンな空間も造りました。自分の住まいは物件ありきで考えますが、ここは、もともと古い日本家屋で梁や柱にとても存在感があったので、そこを活かして味わいのある感じに仕上げました。いちばんのメインはキッチンスタジオ。暮らすだけではなく、仕事のこともイメージして考えました」
3m×1mの大きなキッチンカウンターに、ずらりと調味料の並ぶラック、大きな食器棚。リビングの横にどんと構えるキッチンがこの家の主役。
「料理教室や商品開発の仕事、撮影などに使うのでキッチンは広く取りました。仕事もしやすくなりここで全て行えるので、効率がよくなりましたね」
キッチンカウンターは白く塗装。何重にも塗装をかけてつるつるに仕上げている。
古さが味を出すインテリア
インテリアはエイジングを感じさせる雰囲気が、古びた家屋になじんでいる。リビングのダイニングセットは、インドネシアの廃材を使ってリメイクされたもので、これも友人の作品。
「ドラム缶をシェードに使った照明も、友人の作品です。椅子、テーブル、照明など色々と取り揃えました。どれも味わいがあって、とても気に入っています」
ただ、全てを古びた家具で統一しているかというとそうではない。アメリカのモダンなソファ-、ナチュラルな白い木の戸棚、スポーツ選手用の無骨なロッカーなど様々なものをミックス。しかし、なぜか統一感が感じられる。
「柄のない無地のものが好きだということと、木、革、アイアンなど素材がしっかりしていてシンプルなデザインのものを選んでいるためだと思いますね。古いものや骨董品が好きだというわけではないんです。ひとり暮らしを始めた20年近く前に買ったものをずっと長く使っていて、それが今になって出している味を楽しんでいます」
本物の素材が年月を経て醸し出す魅力。スピーカーから流れる緩やかな音楽とともに、カフェのような和めるムードが部屋中に広がっている。
人を招き寄せる家
「“ここをこうしたらいいんじゃない?”など、友人たちが今でもいろいろアドバイスしてくれます。この家づくりに携わったのは計15人くらい。みんなで造り上げた家だと思っています」
そんな仲間を集めてもてなすのが、柚木さんの楽しみでもある。
「たまに“宴”と呼ばれるごはん会を開いています。人数によっては2日くらい前から仕込みをしたりすることもありますよ。接客業からスタートして現在に至りますが、人が集まること、人と接することがやっぱり好きなんですね。この家に住んで、ここで毎月料理教室を開けるようになったこと、みんなが寛げる場を持てたことが、何よりも良かったことですね」