Hobby
吹き抜けをはさんで趣味の家が2つサーファーズハウスと音楽室
ドールハウスのような家
そんなまったく違う夫婦ふたりの趣味の空間を、“空き地”と呼んでいる大きな空間をはさんで向かい合うように置くことで、ご夫婦どちらの大事な時間も両立させる素晴らしい発想の家だ。
家づくりの難題は、ふたりの趣味の違いだけではなかった。瀬邸が建つ敷地は、四方を住宅に囲まれた旗竿敷地なので、自由な間取りへの制約もあった。にもかかわらず周囲の家からの圧迫感をまったく感じないのは、天井高6.5メートルの気持ちのいい大空間が、家の真ん中にぽっかりあいているからだろう。
雅一さん側はサーファーズハウス
天井高6.5メートルの大空間は、瀬邸の室内“空き地”。その広場をはさんで両サイドに、雅一さんのサーフハウスと、志乃さんの音楽室がある。まるでドールハウスのように、ご夫婦のまったく違う趣味が違和感なく……否、趣味が違えば違うほど、さらに楽しくおもしろく、空間を構成できる家だ。
高い天井から下がるライトは少しづつ高さが変えられていて、北欧の静謐な教会を思わせる。まんまるの電球が可愛らしい。
サーファーの雅一さんは、趣味をとことん楽しめるガレージを作りたかったのだそうだ。
「敷地の形状からすると諦めざるを得なかったんです。けれど、建築家の稲山さんの発想で、クルマこそ家に入りませんが、こんな形で男の趣味の空間としてのガレージの夢が実現して、ほんとにウレシイです」と雅一さん。
「サーフボードは部屋の中を通らずに外から直接“ガレージ”に入れたかったので、外階段からアクセスできるようにしてもらいました」。
海から帰って部屋の中を通らずにシャワーが浴びられるように、外から浴室に直行できるようにもなっている。
志乃さん側は、フルート演奏を楽しむ家
“空き地”をはさんで反対側の3階に、防音が施された志乃さんの音楽室がある。
3階は春の空の色を思わせる水色の壁。2階は落ち着いた紫色の壁。1階は夜明け前の空のような紺色に塗り分けられている。
実際に木に塗ってもらった色見本を建築現場に持ってきて、最終的に色を決めたそうだ。「光が当たる部分と影になる部分で見え方が違うので、ここで色を確かめたんです」と志乃さん。
ほとんどの家具が志乃さんのお見立てだ。「ソファはこの家に越した時に買いました。天井の高さを楽しめるように、低いソファを探しました」
瀬邸の魅力のひとつでもある大きな白い壁面に、プロジェクターで映像を投影し、ゆったりとソファに座って映画を楽しむことも。季節に合わせて、ソファーのファブリックの色やラグマットを変えて楽しんでいるそうだ。
「なかなか響く提案がなかったんです。もっと突き抜けた家を建てたいと知人に相談したところ、紹介されたのがオンデザインパートナーズでした」
自分たちの趣味やライフスタイルなどを知ってもらうための打ち合わせの際に、「ビックリしたいんです」と家づくりに対する気持ちを伝えた。そしてできあがってきたプランにただただ驚き、惚れ込んでしまったそうだ。
「部屋数や間取りなどの注文はしていません。お願いしたのはただひとつ、朝慌ただしいので洗面ボウルは2つ欲しいということだけでした(笑)。
せめぎ合いがあったのもただ一点、吹き抜けのリビングの床の素材でした。建築家には“空き地”らしさをより強く感じられるタイル張りを提案いただいたのですが、私は床に座った時のぬくもりを求めました(笑)。結局、正方形にカットしたラーチ合板を敢えて斜めに貼って、空き地感を出すという案に落ち着きました」
今、念願のダイニングテーブルを、建築家の方にお願いして制作してもらっている最中なのだとか。
「敷地の形と同じ形のテーブルになりそうです。空き地をはさんだ両サイドに自分らしい居場所のあるこの家を、板の木の素材を変えて表現するテーブルになりそうで、今からとても楽しみにしています」