人がたくさん集まる場所に自宅につくり込んだ“カフェっぽい”空間

人がたくさん集まる場所に自宅につくり込んだ
“カフェっぽい”空間

「1階をカフェっぽくしたかったので、カフェはけっこういろいろと巡りましたね」。こう語るのは鹿島家のご主人。設計期間中に、夫婦で、青山や渋谷の、タイプの違うカフェを半年ぐらいかけて建築家と10軒ぐらい回ったそうだ。

「その頃、おしゃれなカフェが雑誌や本で紹介され始めていて、自分のなかでカフェブームだったんですね。あと、ちょっと人と違うことをやりたいという気持ちがふだんから強くて、ふつうのリビングっぽくしたくなかった」

2階はいわゆるふつうの住宅っぽく、1階はカフェのような感じで非日常的な場所に。そして、2階で生活しながらご飯のときに1階のカフェに行くみたいな感じ――建築家にはこんなイメージを伝えたという。


キッチンからリビング方向を見る。奥のスペースには、住宅らしからぬ、非日常的な浮遊感が漂う。

螺旋階段の脚元に見えるのは、カフェの店先などでよく見かける黒板のスモールヴァージョン。「Tico Cafe」と書かれている。

中庭で遊ぶ一人娘のひなちゃん。奥のガラスは強化ガラスにスリガラスのフィルムを貼っている。

リビングから1段下がったところに張り出したコーナー。椅子やテーブルは、イームズ以外はTRUCKやIDEEで購入したもの。


セレクトした家具でカフェを完成

建築家の秋山さんは、特定のカフェのイメージでデザインをつくり込まずに形だけをつくって、あとはインテリアでご主人が自分のイメージ通りのカフェ空間を完成できるようにしたという。

だから、椅子はほぼすべて新築に合わせてご主人が選んだものだ。

「最初はイームズとかのミッドセンチュリーのものがいいなと思ってたんですけど、途中でみんなと一緒だとやだなって思って。もっと違うものでいいものがないかなと探していたところ、友だちに大阪のTRUCKという家具屋さんの家具をすすめられて、カタログを買ってそこから椅子の7割ぐらいを購入しました」


リビングからキッチンを見る。家具はウッディなものが多いが、キッチン回りはメタリック。これは“DJブースと合体したようなキッチン”のデザインをリクエストしたため。メタルメッシュの戸を開けると中庭。この戸によってリビングに入る光量を調節できる。


好みの場所で好きなことを

「椅子がたくさん置いてある住宅ってあまり無いじゃないですか」。たしかに、鹿島邸にはソファのほかに、1階だけで椅子が10脚もある。しかしここまで集めたのには、「カフェっぽくしたい」というほかに、友人たちがたくさん集まれる場所にしたいというご主人の思いがあった。

そして、集まれるだけでなく、それぞれがお好みの場所を見つけて好きなことをする――ヨーロッパ映画には、パーティで客たちが台所で勝手に飲んで盛り上がリ、あるいは廊下でワイン片手に立ち話し、またあるいはソファで親密に話し込んだりと、それぞれ気ままに過ごすシーンがよくあるが、ああいうものをイメージしていたという。

そのために、1階にはリビングの他にガラスに三方を囲まれたコーナーがつくられ、キッチン前のカウンターには椅子が数脚。スリガラスのフィルムを通した光によって非日常的な浮遊感が漂う中庭や2階の屋外テラスも、人が訪れた時にはそんなふうに使用されることが想定された場所だ。


2階のテラスでお話をする奥さんとひなちゃん。2方向が外に開いている。

手前に1階中庭と通じた吹抜け。奥にテラス。テラスの右側にご主人の趣味&ワークスペースがある。


デジタルのターンテーブルを操作するご主人。右はロボットのフィギュアを飾るコーナーとしてつくられた棚だが、今は『マクロスF』や『化物語』のフィギュアも置かれている。

音楽雑誌の編集を手がけるご主人の趣味&ワークスペース。後ろにある棚も含めてマンガとアニメのDVDがぎっしり。DVDは300枚以上ある。


「みんながいろんな場所でそれぞれ好きなことをする。そういうイメージだったんですよ。でも、日本人ってみんなでいっしょに楽しむみたいのが好きで、どうしても1カ所に集まってしまう。せっかく来たんだから輪になってみたいな(笑)」

「だから、ここでも勝手にDVDとか観て楽しんでもらってもいいんですけど」。そう語るのは螺旋階段を上がってすぐのコーナーにある、ご主人の趣味と仕事のためのスペースだ。雑誌の編集関係の仕事をするほか、アニメを観たり音楽を聴いたり。トイレもすぐ脇にあって、ワンルームマンションの1室みたいに手近にいろんなものがそろい、生活のほぼすべてがまかなえる。

1階のカフェ空間のほかにも、さまざまなシーンがたくさん用意されたこの“住宅っぽくない”家で、このスペースは、ご主人にとって核のような存在、活動の拠点となっているようだ。


鹿島邸(Ka-2 house)
設計 秋山隆男/秋山建築設計
所在地 東京都
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 103.9 m2