Green
世田谷線の町に暮らす花とグリーンに満たされた
自然を身近に感じる暮らし
緩い空気感が漂う町
都心にあってどこか独特な雰囲気が漂う世田谷線・松蔭神社前。フラワースタイリストの平松朋子さんは、約1年半前にこの地の一戸建てに引っ越してきた。「この辺りのローカルな感じが気に入ったんです。商店街があって近所の人との距離が近いところ、静かで暮らしやすそうなところが、私が育った町と似ているなと思いました」
平松さんは京都生まれの京都育ち。町に漂う緩い感じの空気感が肌にしっくりとなじんだ。「京都といっても田舎の方で、まわりは自然に囲まれた環境でした。両親は今も無農薬のお米やレモンを栽培しているんです」
花の仕事に興味を持つようになったのも、豊かな自然環境の中で育ったため。現在暮らす家の中にもいつも緑を欠かさない。「仕事で使う植物以外にも、気に入ったお花やグリーンがあるとつい買ってしまいますね。この家は、中まで光が入って植物の環境にもいいというのが決め手でした」
素朴なグリーンに溢れる空間
1階には仕入れた植物を保管したりアレンジしたりするための作業部屋、2階は畳の部屋のあるリビング。広々としたスペースは仕事をするのにも好都合だった。「光が入り、周りの環境も緑が多いので普段の生活にもゆとりを感じます。心に余裕が生まれると、植物を愛おしむ気持ちも高まるんです」
リビングダイニングは、平松さんが愛でる植物に彩られている。ガラスの花瓶に活けられたアンティークアジサイ、ビバーナムティナス、天井から垂れ下がる多肉植物のホヤ。今はムスカリやヒヤシンスなど、春に咲く球根ものの花も楽しんでいる。
「花なのか何なのか分からない、どこかで摘んできたような感じの植物など、素朴で素材感を楽しめるものに惹かれます。アレンジにしても洗練されたバラにちょっと味のあるグリーンをミックスしたりするのが好きですね」
錆びたブリキの水盤に、アネモネが一輪浮かんでいた。リビングのテーブルにも何気ない飾り付け。「折れていたアネモネを浮かべてみたんです。お花ってフレッシュな時だけが美しいわけじゃないんですね。枯れていく様子も楽しみたいと思っています」。咲き頃の花から、枯れていく途中の花、ドライまで全ての過程の植物が混在する室内から、植物の生命そのものを楽しんでいる様子がわかる。
古い道具が植物となじむ
素朴な素材感のある植物になじんでいるのは、平松さんが昔から集めてきた古い家具や雑貨たち。「アンティークにこだわりはないけれど、味のあるものが好きですね。古いものだけではなく新しいものもありますが、どれも長く大事に使っていきたいと思うものばかりです」
アンティークショップや古道具屋、世田谷のボロ市などで見つけた傷のついたテーブルや棚、火鉢やこね鉢など、レトロなインテリアが味わいのある植物とマッチする。「カリモクのソファーにインドの刺し子の布やアジアのファブリックなどを合わせ、色使いを楽しんでいます」と、和の雰囲気にアジアンテイストもミックス。どこか癒しを与える雰囲気を醸し出している。
この家を購入するもうひとつの決め手となった畳の和室には、平松さんがひとり暮らしの時から使っているエジソン電球の照明。やわらかい光が、枯れ木となったドウダンツツジや、ご主人がひとつずつ集めている仏像などをやさしく照らしている。町と同じように穏やかな空気感が、家全体から漂ってくるようだ。
自然と調和する暮らし
「休日は主人と自転車で近所を散策したり、イベントや展覧会をのぞいたり、ゆっくり食事をしたりして過ごしています。この辺りは新鮮なお魚屋さんとか、手作りの食材のお店、おいしいケーキ屋さんなどもあって、とても楽しいんです」
実家から送られてくる無農薬の食材を使って、和食を中心とした料理づくりを楽しんでいるという平松さん。キッチンに立つと、近所の生活音などが自然と聞こえてくる。「秋になるとよそのお庭のどんぐりの木からどんぐりが落ちる音が聞こえたり、5時になると近所の小学校の放送が聞こえてきたり。そんな中で日常生活を送っています」
季節や時間の流れを感じる生活。そんな素朴で当たり前の日常が、都心にあって何より贅沢であるように感じられた。