Style of Life

裸足で過ごしたくなる家24坪の敷地に建つ
3階建ての木の家

裸足で過ごしたくなる家 24坪の敷地に建つ 3階建ての木の家

いつかは一軒家を

下町風情が残る東京都の谷根千エリア。緑や公園が多く落ち着いた住環境で、昔から住む世代と新しく住み始めた若い世代が共存し、幅広い層に住みやすいエリアとして人気を集める。
一方で、個性的な個人経営のカフェや居酒屋、雑貨屋も次々と出店。少し散歩をすれば、古き良き東京の下町の雰囲気を感じつつ、新しい刺激や発見もあるエリアだ。

この地に、2014年9月末に家を建てたのが、吉田さん夫妻。「元々は葛飾区のマンションを購入して住んでいたのですが、2人とも群馬や神奈川の一軒家で生まれ育ったこともあり、いつかは自分たちの家を建てたいと考えるようになりました。下町で色々な世代の人がいて、落ち着きもあるところがよくて、谷中・根津・千駄木の谷根千エリアで土地を探し始めました」と夫妻は話す。

そして見つけたのがこの土地。根津のシンボル「根津神社」や、上野恩賜公園にも歩いて行ける抜群の立地だが、旗竿地のうえ、24坪の狭小地。そこに建てる家として吉田夫妻が出した条件は、「3階建て・明るい家・自然素材の家」だった。


1階と2階をつなぐ階段から玄関を見る。玄関は引き戸、三和土はシックな墨色。
1階と2階をつなぐ階段から玄関を見る。玄関は引き戸、三和土はシックな墨色。
愛犬のポカラ。ご夫妻が旅行に行ったネパールの都市から名前をつけた。マンションにいたときよりも元気に動き回っているそう。
愛犬のポカラ。ご夫妻が旅行に行ったネパールの都市から名前をつけた。マンションにいたときよりも元気に動き回っているそう。
吉田邸外観。
吉田邸外観。


土地に縛られない自由なプラン

ところが、「木の家で3階建て」をやってくれる業者がなかなか見つからなかったという。
「色々調べたのですが、デザインが好きでなかったり、予算が合わなかったり、設計・施工者さんを探すのが大変でした。そんなときインターネットで見つけたのが鯰組さんだったんです」と吉田さん夫妻は話す。

「鯰組」は、昔ながらの大工の技を生かした木の温もりあふれる家づくりを得意とする建築事務所。「こちらの要望を伝えてあがってきたプランは、2階から3階にかけての吹き抜けや、あらわしの梁など、土地の狭さに縛られない自由なデザイン。どんな家になるんだろうとわくわくしました」。


2階から3階に大胆な吹き抜けをつくったことで、採光を確保し、開放感を出した。あらわしの梁から落ちる影も味がある。
2階から3階に大胆な吹き抜けをつくったことで、採光を確保し、開放感を出した。あらわしの梁から落ちる影も味がある。
3階から吹き抜けを通して2階を見下ろす。2階にいる人の様子が見えるのが面白い。
3階から吹き抜けを通して2階を見下ろす。2階にいる人の様子が見えるのが面白い。

キッチンは2階に。タイルの色を決めるまでには色々悩んだそう。
キッチンは2階に。タイルの色を決めるまでには色々悩んだそう。
3階は寝室兼書斎。木の香りに包まれてよく眠れそう。
3階は寝室兼書斎。木の香りに包まれてよく眠れそう。
柱の右手がキッチン。左手がリビング。リビングには吹き抜け部分から明るい日差しがさす。
柱の右手がキッチン。左手がリビング。リビングには吹き抜け部分から明るい日差しがさす。
奥の障子を開けると2階を見下ろすことができる。右手の階段の上にはたっぷりのロフト収納が。
奥の障子を開けると2階を見下ろすことができる。右手の階段の上にはたっぷりのロフト収納が。


日本家屋の良さを忘れない

完成した吉田邸は、モダンなデザインながらどこか懐かしさも感じる家になった。「私たちの持っていた戸建のイメージは、生まれ育った実家なんです。昔ながらの日本家屋の雰囲気を忘れたくないという要望も、鯰組さんに聞いてもらいました」とご夫妻は話す。

玄関は引き戸で、和室には床の間もあり、庭に面した縁側までついている。「戸建を建てるなら床の間つきの和室はマスト。庭も縁側も欲しいなあと思っていたので、とても気に入っています」。

吉田邸の間取りは使い勝手と居心地を熟考して決められた。1階にはお風呂、トイレといった水回りと、客間にもなる和室を配し、2階全フロアを広々としたリビングダイニングに。3階を寝室兼書斎とした。


1階につくった和室。窓を開けると縁側があり、そこから庭に出ることができる。
1階につくった和室。窓を開けると縁側があり、そこから庭に出ることができる。
愛犬のポカラを連れて縁側でくつろぐ吉田さん。奥の扉には庭仕事の道具がしまえるようになっている。
愛犬のポカラを連れて縁側でくつろぐ吉田さん。奥の扉には庭仕事の道具がしまえるようになっている。


木の手触り、足触りを楽しむ

天然木がふんだんに用いられ、木のぬくもりを感じられる吉田邸。その象徴とも言えるのが、玄関を入ってすぐに目に入る一本の杉の磨き丸太(樹皮をはいで表面を滑らかに磨いた丸太)の柱だ。空間のアクセントになっているだけではなく、触り心地もなんとも心地良い。この柱は、吉田さんと鯰組の担当者が一緒に材木屋に行って選んだのだという。

また、床は全て天然木の無垢材で、夫妻は「素足で過ごすのが気持ちいいんですよ」と声を揃える。さらに、場所ごとに杉、檜、松と、風合いや感触の違う木材を贅沢に使っている。「無垢材は素足で触れると柔らかくて温かい。木目も見ていて飽きないんです。傷がついてもそれがいい味になりそうで、これから時間が経つにつれ、味のある風合いに変化していくのが楽しみですね」。

限られた土地ながら、狭さを感じない明るい木の家を建てた吉田さん夫妻。家が気持ちいいので、家で晩ご飯を食べる割合が増えたそう。「この家を大切にして住んでいきたいです。小さいながらも充実した庭づくりをするのが目下の目標ですかね」と教えてくれた。


階段の踏み板まで、歩くところ全てが無垢材で気持ちがいい。
階段の踏み板まで、歩くところ全てが無垢材で気持ちがいい。
右手が脱衣所とお風呂。「ヒノキの香りがするお風呂場に憧れていたので、脱衣所の床はヒノキにしました」。
右手が脱衣所とお風呂。「ヒノキの香りがするお風呂場に憧れていたので、脱衣所の床はヒノキにしました」。
杉の磨き丸太の柱。これから味が出てくるのが楽しみ。
杉の磨き丸太の柱。これから味が出てくるのが楽しみ。
階段の手すりにも妥協のない大工仕事が施されている。
階段の手すりにも妥協のない大工仕事が施されている。


鯰組/株式会社 吉川の鯰

吉田邸
設計・施工 鯰組
所在地 東京都文京区根津
構造 木造3階
延床面積 95.22m2