離れと庭のある暮らし豊かな緑に囲まれた世田谷モダンライフ

離れと庭のある暮らし豊かな緑に囲まれた
世田谷モダンライフ

「私はどちらかと言うと、金属とかガラスとか、ひんやりした素材が好きなんですが、家内はそれが嫌いで」

「嫌いというか、正確に言うと、この歳になって、かつ主婦で家にいる時間が長くなると、やはり木の温もりとか、布の暖かさとか、そういうものがまったくない生活はちょっと考えられなくなってしまって…」

こんなやり取りの後、「そこで、実は間を取ったのが今のこのかたちなんです」と奥さん。この家のインテリアの特徴でもある、白い壁に木の細いラインが走るデザインだ。


LDKでくつろぐご主人。ダイニングテーブルはモルテーニの製品。ガラスの天板が好みのご主人と木が好きな奥さんとで意見が分かれたが、あまりウッディな感じのしない材で天板の薄いものに落ち着いた。ソファは、フクラの製品。


モダンデザインへの思いとロスでの暮らし

ご主人の発言は単に素材の好き嫌いからのものではなく、そのベースには長い間培ってきたモダンデザインに対する思いがあった。

「母がデザイン関係の仕事をしていたので、子供の頃から建築やインテリアの写真集を結構見せられて、装飾は少ない方が美しいんだって繰り返し言われました。その影響もあって、やはりデコラティブなものよりはシンプルなものが好きだし、プロポーションの美しさもとても大事だと思っています」


アイランド型キッチンにしたのは奥さんのリクエスト。「前の家で、家族に背を向けて調理するのが寂しかったので」。

奥の椎の木を残すことが建築計画では必須条件だった。


2階の廊下から見ても庭の緑が美しい。

本好きのお子さん2人の本が並ぶ2階の本棚。この裏に子供部屋がある。


この家のインテリアのもうひとつの特徴である、白とベージュの色のコンビネーションは、2008年までの2年間、アメリカの西海岸で暮らした経験から生まれたものだ。「白いものはもともと好きでしたが、床や家具、それからテラスのパラソルなどの明るいベージュ系の色のトーンを好きになったのは、ロサンゼルスで暮らした家の影響が大きいですね」とご主人。

アメリカでの暮らしはまた、この家を建てることのきっかけのひとつともなった。

「上の子が小学校に入ったぐらい、下の子が幼稚園半ばぐらいで、大きな家で楽しく暮らしていました。日本で以前住んでいたのが今隣りの敷地に立っている家で、帰国したらまたそこに住むつもりだったんですが、子供に日本に帰るよって言ったら帰りたくないと。あの小さい家に戻りたくないって言われたんです」

ご主人は建て替え前にあった大きな家で生まれ育ったので、お子さんの発したその一言がすごく心に響いたという。「子どもが2人になって手狭だということもあって、すべてを解決するには建て替えるしかないと」。


「離れの1階は私や子供が本を読んだりとか自分の好きなことに没頭できるスペースになったらいいなと思ってます」とご主人。「あるいは、家内の知人が来てる時に私が向こうにいてもいいし、いわば自宅の中の別荘のように活用できたらいいな、と」。


離れのある暮らし

建て替えられたお宅にはテラスと半地下の廊下を介してつながる離れもつくられた。これは建築家の末光さんのアイデアだった。

敷地の周囲にある緑と離れでいい感じで囲い込んであげると、プライバシーが守られ、かつ、庭に向けて開放的なつくりにできる。また、離れとの距離を取ることで、森の中の別荘に行くような感覚があるんじゃないか。そしてそれはこの家での暮らしを豊かにしてくれるんじゃないか、そう末光さんは考えたという。


廊下からの眺め。「目の高さで庭が見えて新鮮で楽しいですよ。虫が目の前を飛んでいて、植物園の展示のようです」とご主人。

離れの1階。右の、お隣の緑が目の前に見えるスペースで洗濯物を干す。左の窓から見えるのが椎の木。下階は寝室。


ただ、家事動線に関してはかなり悩んだという。奥さんはふだんLDKにいることが多いので、洗濯機をどこに置いて洗濯物はどこで干すのか、等々……。ご夫妻も、離れが本当に必要なのかどうか、2人でかなり議論したという。

でも、この離れとともに、ちょっと長めの廊下ができてそこからも庭が眺められるというのを聞いた時に、「なんか楽しそうというか美しそうだなと、そんな感じがしました」とご主人。

離れをつくって、ふつうの一軒家にはないような移動を楽しむ家となった。「下からも行けるし外からも上がれるし勝手口からも上がれる。移動の経路によって庭がほんとにいろんな視点から見れる。その楽しさをすごく感じています」とご主人。離れをつくってどういう生活になるのか住むまで不安だったという奥さんも、いまは「移動するのが楽しいから、知らないうちに家の中をかなりな距離動いてしまっている」という。


テラスから庭へと下りる階段から見る。階段の左脇がハーブゼラニウムで、右脇がボックセージ。奥には、ヤエオグルマ、ミモザなどが植えられている。

庭には照明が仕込んである。夜、玄関脇の窓(右端)から見ると、「絵本のような静かな景色で、森と庭の照明と月だけになるので素晴らしく素敵です」。

庭は前面道路より1.2m程度上がったところにある。庭はもともとこの高さで、建築時に道路と庭の間の土を削って母屋を建てた。


グリーンって大切

このお宅では家に劣らず庭もとても魅力的だ。庭への思いは奥さんのほうが強かったようだ。「本当にベタなんですが、ハーブガーデンをやられてるターシャ・テューダーさんやベニシアさんの大ファンだったんですね。もちろん彼女たちは思いっきり手をかけてるんですが、ああいうものがあそこまで手をかけずにできないかなと思って」。

デザインはガーデニングデザイナーの江田俊子さんにお願いした。一見、自然のままのようでいてじっくりと考えてつくり込まれた庭というのが素人にも伝わる。こういうお庭になって大満足ではないですかと奥さんに聞いてみた。

「そうですね。毎日こんなにも庭が目に入ってくるのは家ができるまでわからなかったんですが、朝起きてLDKのブラインドを開けて最初に目に入るのがお庭だったり、寝る前も最後に玄関の電気を消すときに見えるのが夜のお庭だったりと、今の私の生活の中ですごく大きい存在ですね。水をあげる時間も長いし、雑草を抜いたりするのも大変ですが、思ったより自分がグリーンが好きなのにも気がつきました。ぐんぐん成長する姿や虫が草花に止まっている姿を見たりすると、やっぱり人にとってグリーンってすごい大切なんだなって改めて実感します」


庭を眺めながらのテラスでのひととき。「青い空に白いものが映えるときれいだとか、庭で食事をしたいとか思うのは、かなりロサンゼルス時代の影響がありますね」。


ビアガーデンもやってみたい

「朝、子供たちとテラスで朝食をとることが度々あるんですが、それはもう子供たちが大喜びで。本当にいつもの食パンと目玉焼きだけでもすごいハッピーな気持ちになってしまう」と奥さん。

これほどの庭であれば、テラスでのティーパーティーも楽しいだろう。「先週はじめてお友達をお呼びしたんですけれども、本当に病みつきになりそうな感じですね」。

「通りからは見えない庭がここに広がっているのにみなさんまず驚かれるんですね、えー、すごいね!って。だからまず話題にされるのが緑、お庭のことで、あとはこのLDKの空間。2階に上がってもわーっていう感じで、皆さん喜んでくださってる」。

「今年は引っ越したばかりでできてないんですが、来年はビアガーデンくらいやっちゃおうかなあなんて思っています」と楽しげに話す奥さんに、ご主人が付け加えた。「うちは2人ともお酒は飲まないんですが(笑)」。


ガレージ左側のアプローチ部分。庭までずっと、グリーンが続く。

クルマが2台分入るビルトインガレージをつくったのもアメリカ暮らしの経験から。


Birdy Terrace
設計 末光弘和 + 末光陽子
   /SUEP
所在地 東京都世田谷区
構造 木造+RC造
規模 地上2階地下1階
延床面積 203.99㎡