Green
理想をカタチにするアメリカの古材を使った、
CAPE COD STYLEの家。
絵本に出てきそうな平屋建て
横須賀の高台に建つ、工藤さんの住まい。「それまでは都内に暮らしていたんですが、広い庭のあるところに住みたいと探しているうちに、この土地に出会ったんです」と話す雅子さん。「ここなら広い庭もあるし、都内に通勤する夫にとってもアクセスがいい。もともと平屋が建っていたんですが、その佇まいが良かったのも決め手になりました」。
横須賀は坂が多い街として知られるが、工藤邸も坂の上に建っている。アプローチである急な階段をのぼりきると、そこに現れるのは、外国の絵本に登場するような平屋建て。煙突のある屋根、淡いグレーのペンキが塗られた外壁、白い枠の上げ下げ窓……庭の豊かな緑を背景にした家を見ていると、日本にいることを忘れてしまいそうになる。
シャビーな味わいに魅せられて
「実は、この家を建てようと決める前は、夫も私もマンション住まいでもいいかなと思っていたんです」と話す雅子さん。そんな気持ちが変わったきっかけは、津久井湖でアメリカのアンティーク・プリミティブ家具を扱う『ラスティック・ゴールド』を経営する木堂夫妻と出会ったことだった。「木堂さんの家は、サンタフェスタイルでアメリカそのもの。その世界観のかっこよさに身震いしました」。
木堂夫妻が手がける家の特徴は、アーキテクチュアルサルベージと呼ばれるアメリカの建築廃材をふんだんに使っていることだった。1970年代をバークレーで過ごした木堂夫妻は、帰国後に日本で古着や雑貨を扱ううちに、やがてドアや窓などアーキテクチュアルサルベージを取り扱うようになっていったという。そして、ついには自分たちで集めた建材を使って家を建てるようになったのだ。
こんな家なら、自分たちでも建ててみたい
もともと新品よりも中古のものが好きだった雅子さん。「なかでもアメリカのさびれ感というか、やれた感じが大好きだったんです。木堂夫妻の家は、その大好きな世界がそのまま家になっていました」。
すっかり木堂夫妻のファンになった雅子さん。友人関係を続けるうちに、夫とともに木堂夫妻が当時九十九里に建設中だった家に遊びに行った。「夫はどちらかというと新築が好きだったんですが、すっかり木堂夫妻の世界が気に入って。ぜひ私たちも家を建てようという流れになりました」。
こうしたいきさつから、家づくりに関してはラスティック・ゴールドにおまかせ。上棟から竣工までの4カ月の間、工藤さん夫妻は毎週末現場を訪れ、木堂夫妻や工務店の仕事を手伝ったそうだ。「レンガを運ぶのを手伝ったり、外壁のペンキを塗ったり。とっても楽しい時間でした」。
名もなき誰かの愛したモノを受け継ぐ
建材をはじめ、家具や照明もアメリカのアンティークで統一。「蚤の市やガレージセールでの宝探しにときめく性分なんです。アメリカのどこかで、誰かの生活に寄り添っていたモノたちがこの家に集められ、パッチワークのように形になった。これからは私たちの暮らしの中で、大切に受け継いでいきたい」。
古いドアや窓枠は、ペンキを一度はがして無垢の板の状態にし、そこに再びペンキを塗るなど、ひと手間をかけている。白いペンキをはがしてみたら、思いがけずに「好みのやれた感じ」の木肌が顔を出し、そのまま採用になったケースもあるという。
その一方で、必要なところには新しいものを配することで、暮らしやすさにも配慮。「毎日の生活の場ですから、住むことの快適性は大切にしました。キッチンやバスルームなどは、日本のメーカーの最新の設備を組み合わせたオリジナルです。特にキッチンは、使い勝手を重視しました」。
ホームワークを楽しむ暮らし
工藤さん夫妻がこの家に暮らすようになって3年。家づくりと引越しを経て、雅子さんの暮らしは大きく変わった。「子どもが生まれたこともあり、今は巣づくりモードの日々を楽しんでいます。子育てしながら庭いじりをしたり」。
それまではインドア志向だった夫も、芝刈りや薪割りなどのホームワークを楽しむようになったという。
「マンションに暮らしていたときには感じなかった、家を育てるという感覚が芽生えました。住まいも庭も、建てたら終わりではなく、暮らしながら手を入れる必要がある。これからも、少しずつ手を入れることで、より自分たちにしっくりくる家に育てていければと思っています」。