暮らしの道具-2-西荻窪にひっそり佇む、食と道具の店「364」

暮らしの道具-2-西荻窪にひっそり佇む、
食と道具の店「364」

「食」にまつわる器や道具、食材を紹介する店「364」。一点ものの器や、昔から形を変えず作り続けられている土鍋や茶箱など、毎日の食が豊かになるような、長く使い続けたいと思えるアイテムが揃う。

西荻窪駅から歩くこと3分。個人商店が立ち並ぶ路地裏に「364(さんろくよん)」はある。ここは、作り手たちが手間をかけて丁寧に作る食材や、使い勝手のいい器、調理道具を中心に扱う店だ。
「日々を健やかに過ごすためには、「食」は欠かせないもの。できるだけ安心して、おいしいものを食べたいし、使っていて気持ちがいい道具で丁寧に料理をしたい。そういうシンプルな想いでものを選んでいます」と店主の駒井京子さんと二所宮佐代子さん。ここに並ぶものはすべて「二人が好きなもの」。商品を仕入れる際は必ず二人で作り手の元へ行き、どんな想いで作られているか、どんな環境で作られているかをきちんと確認して、ひとつずつ丁寧に選んでいるという。
「器はどんな料理をのせようか、想像力をかきたてられるものがいいですね。そして、他の器にも合わせやすく、収納したときに重ねたすがたが美しいものがいい。そういう用の美を兼ね備えたものに惹かれます」。
決して主張が強いわけではないが、置いてあるだけで存在感がある。それは器と同様に調理道具にも通じた「引き算された美しさ」があり、その引き算の美学は店名にも表れている。「364」とは、一年365日、毎日背伸びしすぎてがんばりすぎないようにと、肩の力を抜くという想いを込めて名付けられている。


「普通の家庭で毎日使えるもの」が並ぶ。使い勝手がいい器は長く使い続けたい、飽きのこないデザインが魅力だ。

「普通の家庭で毎日使えるもの」が並ぶ。使い勝手がいい器は長く使い続けたい、飽きのこないデザインが魅力だ。

古くから日本で使われている調理道具たちは職人たちの手で丁寧に作られているものばかり。凛とした表情がある。

古くから日本で使われている調理道具たちは職人たちの手で丁寧に作られているものばかり。凛とした表情がある。

正島克哉さんが364のために作った、オリジナルの入れ子碗。一汁三菜で使える器の5点セット。

正島克哉さんが364のために作った、オリジナルの入れ子碗。一汁三菜で使える器の5点セット。

寒川義雄さんの珈琲のためのマグカップ。普段、持ち手のあるカップを作らないという寒川さんが364のために特別に制作した限定品。(5400円)。

寒川義雄さんの珈琲のためのマグカップ。普段、持ち手のあるカップを作らないという寒川さんが364のために特別に制作した限定品。(5400円)。

小皿の2枚はそれぞれ茶碗、汁椀の蓋にもなる。マトリョーシカのように収納ができる。

小皿の2枚はそれぞれ茶碗、汁椀の蓋にもなる。マトリョーシカのように収納ができる。

「364」の呼び方はそのまま「サンロクヨン」一年を通して使えるアイテムがそろい、毎日の食卓を豊かにしてくれる。

「364」の呼び方はそのまま「サンロクヨン」一年を通して使えるアイテムがそろい、毎日の食卓を豊かにしてくれる。


二人が店を開いたのは2008年7月。下町の雰囲気が漂う西荻窪は古くから続く個人商店も多いが、最近ではセンスのいいギャラリーや人気の飲食店など新しい店も続々と増えている。週末になれば骨董市やイベントなどが開催され、街全体がさらに賑やかになるという。店主の駒井さん、二所宮さんは元々同じギャラリーで働いていた仲間で、お互い独立したあとも「みんなが集まれるスペースがあるといいね」と話しを膨らませ、店を開くことを決意。西荻窪に土地勘のない人でも足を運びやすいように駅近の物件で探していたところ、昭和30年代に建てられたというこの一軒家の物件に出会った。昔は飲食店として使われていた建物だそうで、自分たちでできることは最低限やろうと、塗装や立て付けなども改装はできる範囲で自分たちでやったという。「364」はそういう店主二人の想いがこもった空間であり、初めて訪れる人もどこかほっとする、心落ち着く雰囲気に包まれている。


サイズ違いの木箱は、現在はほとんど流通には使用されていない、貴重な手作りの茶箱。デリケートな緑茶のための湿気や害虫排除、においの付着などを防御するために作られた昔からの知恵が詰まった商品。湿気を嫌う食品の保存に。

サイズ違いの木箱は、現在はほとんど流通には使用されていない、貴重な手作りの茶箱。デリケートな緑茶のための湿気や害虫排除、においの付着などを防御するために作られた昔からの知恵が詰まった商品。湿気を嫌う食品の保存に。

店主二人が立つ囲いの中には小さなキッチンがあり、家のような雰囲気が漂う。

店主二人が立つ囲いの中には小さなキッチンがあり、家のような雰囲気が漂う。


2階は小上がりになったスペースで、ここでは展示を行ったり、作り手やものづくりに関わる人を招き、ワークショップを行っている。たとえば、毎年冬になると鎌倉の菊一伊助商店店主による包丁研ぎ教室を開催する。「昔の家庭では、包丁研ぎはお父さんの仕事で、それは父から子へ教え、伝えられるものだったそうです。でも、今はそういう家庭は少ない。切れなくなったら新しいものを買うのではなく、きちんと手入れをすれば長く使えるということをここでは実感できます。研ぎ方を一度身につければ、自分で包丁の手入れができるようになるのでとても好評です。決していい包丁(高級な包丁)でなくても、きちんと研げば驚くほど切れ味がよくなりますし、いい道具は料理をさらに楽しくしてくれます」と教えてくれた。また、別の日には、鷲塚貴紀さんのガラスのボトルの発表を兼ねて、実際にボトルの中に果実酒やビネガーを入れたエキシビションを行った。どのように使うか、ドリンクのレシピも含めて、実生活で取り入れたいと思えるシーンを提案し、とても好評だったという。
このように、ここではただ商品を紹介するだけではなく、使い方や、手入れの仕方など、奥行きのある伝え方が魅力だ。それは、ものに対する理解や大切に扱う気持ちも再確認できる。今後もさまざまなものやイベントを通じて、ここでしか体験できない出会いを提供していく。


「毎日使う包丁の切れ味はどのようにして手入れをしているのか、刃研ぎをしているのか、ということが決めて」と研師の菊一公明さん。いい道具は料理が楽しくなる。料理が美味しくなる秘訣のようだ。

「毎日使う包丁の切れ味はどのようにして手入れをしているのか、刃研ぎをしているのか、ということが決めて」と研師の菊一公明さん。いい道具は料理が楽しくなる。料理が美味しくなる秘訣のようだ。

高知県四万十川中流域にある農家「桐島畑」のジンジャーシロップ。炭酸で割ったり、お湯で割ったり、さまざまな楽しみ方ができる。

高知県四万十川中流域にある農家「桐島畑」のジンジャーシロップ。炭酸で割ったり、お湯で割ったり、さまざまな楽しみ方ができる。

山形県東村山郡のえん工房を営む、遠藤玲子さん手作りのジャム「えんjam」。自ら畑を耕し、育てた果実のジャムは、素材本来の味わいがしっかりと伝わる。

山形県東村山郡のえん工房を営む、遠藤玲子さん手作りのジャム「えんjam」。自ら畑を耕し、育てた果実のジャムは、素材本来の味わいがしっかりと伝わる。


shop info
364
東京都杉並区西荻北3-13-16
03-5856-8065
12:00〜19:00
火、水曜休