シンプルだけど味があるこだわりが創り出したオンリーワンの空気感

シンプルだけど味があるこだわりが創り出した
オンリーワンの空気感

「シンプルだけど味がある家」が希望だったというKさん。

「最近の家ってけっこうデザインとか頑張りました!的なところが逆にかっこ悪いなと思っていて。“シンプルで味がある”というのはすごい難しいことですが、今のこの時代からすると貴重なことなのかなって気がしますね」


ダイニングからリビングを見る。Kさんの希望を実現するのに、1階の3分の2程度を占める土間ははずせないポイントだった。1階はすべて土間でいいとリクエストしたが、建築家の東端さんがリビングは寝そべったりすることもあるのでフローリングを提案した。

ダイニングからリビングを見る。Kさんの希望を実現するのに、1階の3分の2程度を占める土間ははずせないポイントだった。1階はすべて土間でいいとリクエストしたが、建築家の東端さんがリビングは寝そべったりすることもあるのでフローリングを提案した。


倉庫と古民家

「シンプル」ということでは 倉庫のような空間がイメージとしてあったが、これは家の中が壁で仕切られていない空間をイメージしていたときに出てきたものだったという。メインのスペースである1階のリビングとDKは2階分近くの高さがある吹き抜け空間だが、一室空間的につくられ、しかも必要最低限のデザインに押さえられていて、倉庫的な空気感を醸し出している。

倉庫とともにこの家のイメージの源泉となったのが、古い民家だった。

「鎌倉とか、古い建物があるところが好き」というKさん。1年ほど探して巡りあった敷地も、古い神社や昔からの建物が多くて雰囲気が気に入っていたこの近辺を中心に探していた時にたまたま通りかかって見つけたのだという。


 リビングとダイニングの間に設けられた大黒柱。Kさんはこの柱に寄りかかりTVを見るのが好きという。

リビングとダイニングの間に設けられた大黒柱。Kさんはこの柱に寄りかかりTVを見るのが好きという。

リビングのフローリングの端に座ってダイニングにいる家族ともお喋りができる。

リビングのフローリングの端に座ってダイニングにいる家族ともお喋りができる。

2階寝室前から1階を見る。ダイニングテーブルはフィリピンで使用されていたもの。

2階寝室前から1階を見る。ダイニングテーブルはフィリピンで使用されていたもの。

リビングに置かれた椅子はハンス・ウェグナー。高めの場所に開けられた窓が壁の圧迫感を和らげる。

リビングに置かれた椅子はハンス・ウェグナー。高めの場所に開けられた窓が壁の圧迫感を和らげる。


こだわって集めた家具・雑貨

しかし、「古民家のような家」というオーダーは出さなかったという。「昔の古民家風にして建具とかいろいろとこだわり始めると予算的に難しいかなというのもあって…」

その分、古い家具や雑貨にこだわった。

「古民家を改装したようなカフェとかの雰囲気がすごい好きで、そういうところでインテリアとか部屋の雰囲気を参考にしましたね」


キッチンもKさん夫婦のお気に入り。Kさんは「タイルの雰囲気を見ながらお酒を飲んだりするのが好き」という。

キッチンもKさん夫婦のお気に入り。Kさんは「タイルの雰囲気を見ながらお酒を飲んだりするのが好き」という。コンロの下に古引出しがいくつか見える。古いものにこだわったのには「新品で買うというのが逆に魅力を感じないというところもある」と奥さん。


家具・雑貨類はすべてインターネットで購入。全国で10店ほど押さえてある古道具屋さんの中から時間をかけて探し出した。キッチンの食器棚兼カウンターと食器棚、古引出し類は小金井の古道具屋さん。ユーティリティスペースのテーブルと椅子は国立のお店だ。どれも時の作用で独特な存在感をまとっているが、変に自己主張をせずずっと以前からそこにあったかのように空間にうまく融け込んでいる。

天井から吊るされたライトも、食器棚兼カウンター上のガラスのライト以外は多くが中古。なかでもこだわったのはダイニングテーブルの上のもので、長野の北欧雑貨屋さんで見つけたルイス・ポールセンだ。

2階入り口前のカプセル状のライトは国立の古道具屋さんで見つけたもので、20~30年くらい前に製造されたドイツ製のものだという。どれもテイストが異なるがバラバラで寄せ集めた感じがしないのにはKさん夫婦の高いコーディネイト力を感じる。


浴室前の洗面コーナー。鏡も古いものをネットから購入した。

浴室前の洗面コーナー。鏡も古いものをネットから購入した。
 

奥がユーティリティのスペース。コーナー部分のカーテンが独特の柔らかい雰囲気を創り出す。

奥がユーティリティのスペース。コーナー部分のカーテンが独特の柔らかい雰囲気を創り出す。

キッチンとともに奥さんのお気に入りの場所。個室ではないが、個室的に「自分の空間と時間」に浸れるという。

キッチンとともに奥さんのお気に入りの場所。個室ではないが、個室的に「自分の空間と時間」に浸れるという。

カーテンは麻素材の生地を切ったままで使用。レールは家具デザイン・製作のcampに特注した。

カーテンは麻素材の生地を切ったままで使用。レールは家具デザイン・製作のcampに特注した。


シンプルだから味がある

こだわったのは家具・雑貨類だけではない。壁面の多くを覆って空間の雰囲気を大きく左右するカーテンは、麻のいい素材のものを購入。それを縫わずに生地を切っただけで使用しているが、その自然でさりげのない感じが空間にとてもマッチしていてこれも見事なコーディネーションだ。

キッチンのタイルにもこだわった。「丸い形にしたいと言ったのはちょっとレトロ感が出るかなと思って」。濃いグリーン系の色は、建築家が出してくれた候補の中から一発でこれがいいと決めたものだという。浴室には同じ形の色違いを採用した。色味が少なめのK邸でこの2箇所のタイルが目に心地の良いアクセントになっている。

初めて訪れた人には「新築の家じゃないみたい」とよく言われるというK邸。竣工後まだ半年ほどだが、自分たちでこだわりつくして集めた古い家具や雑貨でこの家にしかない空気感をすでに創り出している。

こうしたことが可能になったのは、入れ物としての建築空間がシンプルだからこそだ。「シンプルだけど味がある家」は、シンプルだから味がある家になったのだろう。


静岡の古道具屋さんで購入した時計。ゼンマイ仕掛けの物が電動式に改造されている。

静岡の古道具屋さんで購入した時計。ゼンマイ仕掛けの物が電動式に改造されている。

ユーティリティの入り口から吊るされたエアプランツ。こんなところもさりげなくおしゃれ。

ユーティリティの入り口から吊るされたエアプランツ。こんなところもさりげなくおしゃれ。

これは兵庫のお店で新品のものを購入。

こちらは兵庫のお店で新品のものを購入。

浴室にもキッチンと同じ丸形のタイルが張られている。こちらは深いブルー系の色。

浴室にもキッチンと同じ丸形のタイルが張られている。こちらは深いブルー系の色。

2階寝室の壁・天井に使用されている木毛セメント板は「味がある」ということでリクエストしたもの。

2階寝室の壁・天井に使用されている木毛セメント板は「味がある」ということでリクエストしたもの。

国立の古道具屋さんで購入したドイツ製の古いライト。

国立の古道具屋さんで購入したドイツ製の古いライト。


平屋に見えるようにしたのは古民家的にしたかったから。屋根の色もこだわって濃いオリーブ色に。

平屋に見えるようにしたのは古民家的にしたかったから。屋根の色もこだわって濃いオリーブ色に。

K邸
設計 straight design lab
所在地 神奈川県秦野市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 66.87㎡