Style of Life
四季の移ろいを間近で感じる 自然と一体化した住まいで
生き生きと暮らす
![四季の移ろいを間近で感じる 自然と一体化した住まいで 生き生きと暮らす 四季の移ろいを間近で感じる 自然と一体化した住まいで 生き生きと暮らす](https://img.100life.jp/2021/05/17200559/210524asa-1080x480.jpg)
雑木林に囲まれた古い洋館に惹かれて
手になじみ、愛着のわく生活雑貨を扱う店『日用美』を営む浅川あやさん。10年ほど暮らした鎌倉を離れ、海と山に囲まれた自然豊かな小さな町、神奈川県二宮町に越してきた。
「ジャングルみたいに木々が繁った380坪の広い敷地に、築80年以上の日本家屋と洋館が荒れ果てた状態で残されていました。その古い洋館に一目惚れしたんです。お店のイメージが次々に沸いてきて。私たちに作り直してもらうのを待っていたような、ここに呼ばれたような気がしましたね」と、運命的な出会いを感じたあやさん。
夫の真さんも、「窓のステンドグラスや古いパーツなどディテールにガツンとやられましてね。いまでは技術的に作れないものや貴重な素材もあったため、これは再生しなくてはいけないという使命感が沸きました」と話す。
洋館はお店のスペースとして残し、日本家屋は取り壊して、住居部分を新築することに。
「家を建てるために、どうしても伐採しなければならなかった大きなカツラの木があったんです。ずっとここで生きてきた木を処分する気になれず、知り合いの木工作家さんたちに頼んで、作品の素材として活用してもらいました」(あやさん)。
基本設計は、一級建築士の資格を持つ真さんと、大学でインテリアを学び内装設計の経験もあるあやさんが担当。自分たちの思い描く暮らしを現実のものにするために、できる限り自分たちが参加する家づくりを行った。
![もともとは裕福な方の別荘として使われていた土地。築80年以上の洋館は、リノベーションして店舗に。朽ちたドアや窓枠が味わい深い。壁は、あやさんとご両親の3人でペイントした。](https://img.100life.jp/2021/05/17200442/210524asa-001-1024x683.jpg)
![ステンドグラスに真鍮の取っ手、格子窓などアンティークならではの風合いに惹きこまれる。](https://img.100life.jp/2021/05/17200445/210524asa-002-1024x683.jpg)
![伐採したカツラの木で作製したランプシェードは、中矢嘉貴氏の作品。乾燥させず、生木を削って成形する独自の手法により、ゆがみやねじれなど豊かな表情が楽しめる。](https://img.100life.jp/2021/05/17200448/210524asa-003-1024x683.jpg)
![<a href="https://nichiyobi365.wixsite.com/nichiyobi/">『日用美』</a>では、時を経て生活に馴染み、味わいが増す日用品を取り揃えている。取材時は、作り手のぬくもりが伝わってくる作品が人気の白倉えみさんと白倉祥充さんの展示会を開催していた。毎週日曜日には、大分県から取り寄せた卵と逗子の蜂蜜を使用したカステラの販売をスタート。営業は日、月、火曜日の11時~17時。](https://img.100life.jp/2021/05/17200450/210524asa-004-1024x683.jpg)
戸外のような開放感
浅川さん夫妻にとって家づくりは、鎌倉の家に続いて2回目。「今回は鎌倉の住宅街ではできなかったことにチャレンジした」という。あやさんのご両親も加わり、ご夫妻と息子の楽(がく)くん(10歳)の5人での暮らしのスタートでもあった。
コンセプトは、「外にいるように暮らす」。内と外の境界が曖昧な家を目指した。
1階はキッチン、リビング、ダイニングをワンフロアにし、テラスまでフラットにつなげた。また、屋根の形そのままの勾配天井がのぞく大胆な吹き抜けにより、縦横に伸びた大空間を実現。テラス側は大きな1枚ガラスの掃き出し窓にし、竹林に向かって開き、自然と真正面から向き合う造りにした。
また、浅川さん夫妻は、子どもたちが内と外で自由に遊べ、家の中が汚れることを気にしない、大らかな暮らしを理想としている。そして、時を経ても味が出る自然素材にもこだわった。
外観は機能性と美しさを併せ持つ焼杉を採用。1階の床材は、国産杉の30mm厚を使用し、柔らかで傷がつきやすいが、足ざわりの良さを優先した。壁はあえて白塗装に。汚れても、自分たちで簡単に塗装し直せるようにと考えてのことだ。
真さんが熱望したのが、壁一面の本棚に包まれた趣味のスペース。
「本と音楽を楽しむ趣味のための開放的なスペースが欲しかったのです。キッズ用ソファに座って楽器を弾いたり、外を眺めたりするのが心地よいです。大きな窓から星もきれいに見えるんですよ」(真さん)。
![1階から見上げた高い天井は開放感いっぱい。2階の壁一面に造作した本棚は圧巻。本棚と天井の間に設けた窓により、熱がこもらず、空気が流れる。](https://img.100life.jp/2021/05/17200454/210524asa-005-683x1024.jpg)
![2階から1階を見下ろす。リビングの床は杉板、ダイニングはモルタル土間とし、ゆるやかにゾーニング。テラスまで一続きの大空間。](https://img.100life.jp/2021/05/17200458/210524asa-006-1024x683.jpg)
![2階の趣味スペース。子供用のギターと大人用のギター、ドラムセットが並ぶ。中央に置いたキッズ用ソファは座面が低めで、座るとより開放感が味わえる。真さんのお気に入りの場所でもある。](https://img.100life.jp/2021/05/17200503/210524asa-007-1024x683.jpg)
![2階の正面にも大きな窓があり、竹林や空を眺めることができる。左側の白い壁にプロジェクターで映像を映し出し、上映会を開催することも。2階からの鑑賞も可能。](https://img.100life.jp/2021/05/18211245/210524asa-008re-1024x683.jpg)
![ご夫妻の憧れだった薪ストーブはデンマーク製で、『タカショー』で購入。汚れてもメンテナンスしやすいよう床はモルタルにし、60cmの断熱材を入れた。一度温まると冷えにくく、ずっとポカポカ。2階までしっかり温めてくれる。](https://img.100life.jp/2021/05/17200510/210524asa-009-683x1024.jpg)
![ジャン・ブルーヴェのウォールランプは、自由に動かせるため便利。電気の配線を隠すために真さんがボックスを作製した。ハンス・J・ウェグナーのデイベッドはユーズドの北欧家具店『talo』で購入。](https://img.100life.jp/2021/05/17200514/210524asa-010-683x1024.jpg)
自ら図面を描いたフルオーダーキッチン
あやさんが1日の多くの時間を過ごし、最もお気に入りの場所というのがキッチン。使いやすいように自ら図面を描き、フルオーダーした。ご両親や真さんも料理をするため、スペースには余裕を持たせた。また、電化製品のコードを隠すために、設置場所をあらかじめ考え、コンセントの位置にこだわった。
「器は仕舞い込むと使わなくなるので、食器棚は扉をつけずにオープンにし、見せる収納を楽しんでいます」。
使用頻度の高いものは取りやすい下部に置き、観賞用は上部に並べた。よく使うキッチンツールは、さっと取り出せるように壁に掛けたり、マグネットで吊るしたり。
「キッチンで使っているものは店で扱っている作家さんのものが中心です。実際に使うことで、経年による変化や使い方など具体的に説明することもできます」。
浅川邸には、楽くんの友達が、学校帰りに毎日のように立ち寄るそう。
「いつも10人くらい家に居ますね。普通に“ただいま”って入ってきます。息子がいなくてもいますよ(笑)。ギターを触ったり、ハンモックを取り合ったり、薪割りをしてくれる子もいて。キッチンは全体が見えるので、私は司令塔のように立っています(笑)」(あやさん)。
![部屋全体を見渡せるキッチン。ダイニングテープルとイスは以前あやさんが勤めていたインテリアショップで10年ほど前に購入。照明は、編み物に使うかせくりを使いリメイクしたもので、『リバーサイドファーム』のオリジナル。](https://img.100life.jp/2021/05/17200516/210524asa-011-1024x601.jpg)
![笑顔が素敵な『日用美』店主の浅川あやさん(左)と真さん。](https://img.100life.jp/2021/05/17200520/210524asa-012-1024x683.jpg)
![キッチンは、見せる収納を採用。お店で販売しているものも多い。](https://img.100life.jp/2021/05/17200523/210524asa-013-1024x683.jpg)
![1階の和室。「捨てられそうになっていた」という桐箪笥の上には、渡辺隆之氏の作品をはじめお気に入りの器を並べた。](https://img.100life.jp/2021/05/17200526/210524asa-014-1024x683.jpg)
![浅川邸の建具には枠がない。引き戸を採用していることもあり、どこもすっきりとした印象。左の奥がご両親のスペース。](https://img.100life.jp/2021/05/17200529/210524asa-015-1024x683.jpg)
![バスルームはFRPでオーダーし、コストダウン。目地がなく、メンテナンスもラクラク。](https://img.100life.jp/2021/05/17200532/210524asa-016-683x1024.jpg)
![蛇口を2つ付けたシンク。上部の木製バーは、洗濯物やタオルを一時干すときのために、あらかじめ設置した。](https://img.100life.jp/2021/05/17200535/210524asa-017-683x1024.jpg)
自然と共存した暮らし
「鎌倉を離れたのは、畑が作れる広い庭が欲しかったからです。息子が通っていた保育園を運営している“ごかんたいそう”の考えが影響しています。パーマカルチャーを実践していて、息子の送り迎えをしているうちに、そのような自然と共存した生活ができるといいなと思うようになったのです」(あやさん)
パーマカルチャーとは、パーマネント(永久な)、アグリカルチャ-(農業)、そしてカルチャー(文化)を組み合わせた造語。人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法である。最近よく耳にするサスティナブル(持続可能な)につながるライフスタイルで、浅川家ではできることから取り組んでいる。
庭には、雨水タンクや簡易コンポストを設置。庭の水やりには雨水タンクにためた水を使用し、生ゴミはコンポストに入れて土にかえしている。
「庭の竹林を整備し、少しずつ畑を作り始めています。ブドウ棚を作ったり、果樹も植えたいですね」とあやさん。
土地の購入から、道路やインフラの整備も含めて2年の年月を経て、昨年春に完成した浅川邸。鳥の声が絶え間なく聞こえ、木々に囲まれた生命力あふれる土地で、自然と共存したのびやかな暮らしを楽しんでいかれることだろう。
![念願のアウトドアダイニング。畑で採れたものを切ったりする作業場としても使用。「お昼時に来て、持参したお弁当を食べていく友人もいます(笑)」(あやさん)。](https://img.100life.jp/2021/05/17200539/210524asa-018-1024x683.jpg)
![テラスに設置したハンモックは子供たちに大人気。2階の外側のデッキは、強風から守るためと掃除のしやすさを考えて、真さんがDIYで設置した。](https://img.100life.jp/2021/05/17200543/210524asa-019-683x1024.jpg)
![雨水タンク。植物への水やりにはこちらを使用。](https://img.100life.jp/2021/05/17200547/210524asa-020-683x1024.jpg)
![ほとんどの開口を木製サッシにこだわった。『米澤ほうき工房』が手作りする松本箒でテラスをはくのが、あやさんの朝の仕事。](https://img.100life.jp/2021/05/17200550/210524asa-021-1024x683.jpg)
![金網で作った簡易コンポスト。かえった土は畑に混ぜて使用しているそう。](https://img.100life.jp/2021/05/17200555/210524asa-022-1024x683.jpg)