Architecture
家の中につくられた“ 外”戸外のような開放感と
自由さ、変化を楽しむ
“家”と“外”をつくる
「一軒家を建てようと検討していた時期にたまたまこの土地にめぐり合った」と、この自邸を建てたきっかけを話すのは建築家の萩野(中嶋)智香さん。他の場所も検討していたが、お子さんが生まれて生活のベースができたことから離れがたくなり、町内の物件の購入を決めたという。
仕事場を1階にもつこの家。設計のメインコンセプトは、住宅の中に“家”の部分と“外”の部分をつくるということだった。
それ以外の“外”の部分は、家族の構成や成長に合わせて変えられる部分。たとえば今は広場のイメージという2階は、子どもたちが部屋をほしがったら子ども部屋にするというように、自由がきくスペースとして考えられている。
キャンピングカー
南側の“外”の部分をつくる際にはキャンピングカーのイメージがあった。「キャンピングカーって、キッチンと寝室と食事ができる空間がとてもコンパクトにまとめられていますよね。キャンプ場に行くと、キャンピングカーの近くにタープなどを張って、さらに居場所をつくる。あの感覚で、”外”の空間はその時々によって必要に応じて居場所をつくっていくのも面白いかなと思って」
材料でも“外”をつくる
この“家”と“外”の区別は、壁で囲われた部分と開放的な部分という以外に、材料でも明確に区別されている。
“家”のほうは通常の室内の考え方だが、“外”に使われている材は、たとえば床材に建築の足場用の35mm厚のスギ板を用いて少しワイルドな雰囲気に。ダイニングテーブルの天板にも床と同じスギ板が使われている。
さらに、“家”を囲う“外”に面した側の壁にも足場板を用いて外部の雰囲気をつくり出している。こちらは床材と異なり、厚さは5mmと薄めでエイジング加工されたもの。しかし床材とともに、“外”ながら実際には室内であるということから、ワイルド感を出し過ぎないという微妙なさじ加減も感じられる。
室内で変化を楽しむ
2階から3階にかけてスキップフロアの構成にしたのも、外部のような空気感にしたかったから。「単調にならないようにいろいろな気積の居場所をつくりたかったというのもありますが、強弱をつけて、街の中を歩いているように少しずつ印象を変えながら上まで上ってくるような感じにしたかったんですね」
高さを変えて開口を開けたのも、周りの街の景色が多様なため、それぞれの開口から違う景色をちらちらと見ながら自然に上ってこられることを狙ったのだという。
“外”の日溜まりで仕事をする
夫の中嶋さんは、“外”の部分に仕切りがないことが最初はちょっと心配だったという。「雪国で育ったので寒いのがいやで。でもここは仕切りがなくてもとても暖かいので、これからの時期が楽しみ」と。また2~3階のスキップ構成も変化があって楽しい、と好評のようだ。
中嶋さんが帰宅した時に暖かくていちばん落ち着くという3階のリビング部分には、これから冬にかけての時期、日が落ちてくると日溜まりがいろいろな場所にできる。「床のスギ板の厚みが35mmあるので、蓄熱し、夕方にかけてポカポカに。その日溜まりで仕事をしています」(智香さん)
設計 萩野智香建築設計事務所
所在地 東京都練馬区
構造 木造
規模 3階建て
延床面積 129.36m2