Architecture
高台から富士山を望む家和に台湾テイストをプラス
ゆったり落ち着ける空間
富士山を望むロケーション
Sさんはこの土地を見た瞬間に、高台で富士山がよく見えて、駅にも近いロケーションが気に入り、「ここならいい家ができるのではないか」と思ったという。
喫茶店のように落ち着ける空間
建築家の七島さんと佐野さんへのSさんからの要望は、当然「このロケーションを楽しめる」ことがあったが、空間のイメージとしては「和風モダン」、そして、「喫茶店や台湾の茶藝館のような落ち着ける雰囲気の空間」というものだった。
この空間イメージがもっとも実現されているのが1階のリビングだ。敷地形状と同様に東西に長い大きめのリビング空間には、台湾で購入した茶器や奥さんが制作された切り絵を納めた棚を挟むように壁柱が何本も並び、それらがそのまま天井まで延びて空間を幾重にも黒く縁取っている。
木のサッシと数寄屋の障子
要望のひとつに和風モダンを挙げたSさん。家で使用する材はできたらすべて木でいきたいという希望があった。リビングの大きな開口のサッシもなんとか木でできないかと建築家に依頼して特注でつくってもらったというが、この空間のしっとりと落ち着いた雰囲気にこのサッシの木の質感がしっくりとなじむ。
さらに建築家への要望としては特殊と言っていいものもあった。Sさんの友人が数寄屋造りの家を移築するに際して余った障子を譲ってくれたので、それを何とかこの家でも使いたいと頼んだのだという。和室と2階の寝室にある障子がそれだが、時間を経て得た質感がこれもS邸の落ち着き感をさらに演出している。
和を意識したモミジ
リビングに面してつくられたテラスにはモミジが植えられていて秋のピーク時にはこのテラスを赤く彩る。このモミジは、和ということのほかに、外壁の黒色にモミジが映えることなどを考えての選択だった。
1本ではなく株立ちのものにこだわり、また入手を依頼した店にいいものが入ってくるのを辛抱強く待って手に入れたモミジは、日当たりがいいせいか当初より葉が大きめに育ってしまったそうだが、手入れも良く美しく育ったその姿は和を意識したこの家にはなくてはならない存在になっているようであった。
メジロ、ヒヨドリ、シジュウカラと野生の鳥がよく訪れるテラスにはヒキガエルまでやってくるという。「わたしもここが気に入ってます」という奥さんは「ほんとにいろんな生き物がいて、テラスにはヤモリや蛇までくる」という。都会ではめったにお目にかかれないこういった生き物たちもまた、S夫妻にゆったりと落ち着いた日常をもたらすことに大いに寄与しているようであった。
所在地 東京都八王子市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 108.7m2