開放的かつ家族の顔が見える空間
自然が豊かな環境で暮らしたかったというH夫妻。大田区で見つけた敷地は緑豊かな公園に隣接していて一目で気に入り購入を決めたという。
夫妻は、この恵まれた環境で「ゆったりとして開放的な空間」とともに「つねに家族の顔が見える空間」を家づくりのテーマとした。
「以前、住んでいたマンションで家族が集まるのはリビングとダイニングでした。そこで、リビングとダイニングをゆったりと広く取り、かつ、家族の顔がすぐ見えるようにしたかったので、コミュニケーションが取りやすい空間にしてほしいと建築家にお願いしました」(Hさん)
リビングとダイニングは間に階段を挟みつつ、壁なしでつながっている。そして、キッチンから目が届く下階(1階)の廊下部分に長いテーブルを造り付けたのも同じ趣旨からだった。
「キッチンから子どもたちが勉強などをしているところが見られるようにしたいというのがすごくあったので、子ども部屋の前に長いテーブルをつくってもらいました」(奥さん)
“外っぽい”荒い仕上げ
外の環境に恵まれた敷地だが、さらに、Hさんの希望で、家にいても戸外のような雰囲気を味わえるように、室内の仕上げにもこだわった。
「外っぽいというか少し荒さの感じられる仕上げが好きで、地下と1階の床をモルタルとコンクリートにしてもらい、あと、スチールもけっこう使っていますね」
スチールは階段の手すりとさらに踏板の下にも補強用の材として使われている。ダイニングでは多くの小梁が走る天井部分の大梁として太いスチール材が使われた。天井の木毛板もHさんが表面の荒い感触が気に入って採用したものだ。
ダイニングには戸外に使われることの多いコンクリートに近い色味の材が使用されているが、これは磁器質タイルというもので、そのまま延長するように外部のベランダにも使われている。
開放的な空間
地下の玄関部分から先に進むと、2階まで吹き抜けた開放感溢れる空間が現れるが、この空間につくられたRCの階段がアールを描いて上昇していて地形のようにも感じられるつくりになっている。
「あの階段の形は設計をお願いした建築事務所のUAoからの提案です。端の部分に大きな観葉植物が置けるようなスペースをつくってもらいました。もともと観葉植物が好きで、また観葉植物が映える空間というのがけっこう外っぽい空間という印象があったのでそのような空間にあこがれていました」
Hさんは暮らしてみて「思っていた以上にコミュニケーションが取りやすい」と感じているという。「それと開放的な空間にしてほしいというリクエストを出しましたが、最大限それを形にしていただいたという気がしています」
そして、2階のリビングとダイニングでは、外の景色を見るように視線が誘導されるつくりになっていることも強く感じているという。
さらに、奥さんはこんなことを話してくれた。「マンション暮らしの時は一日中家にいたりすると子どもたちが外に行きたいと言うし、わたし自身も外の空気を吸いたいと思うことが多かったんですが、今は家にいても息が詰まらないし、風も良く通って空気の動きも感じられる。あと、とても開放的な空間というのも大きくて、子どもたちもあまり外に行きたいって言わなくなりました」
リクエストしたものはすべて実現できた。しかし、そのために外出する気が起こらなくなるとまでは予想していなかったようだ。
H邸
設計 UAo
所在地 東京都大田区
構造 木造造
規模 地上2階+地下1階
延床面積 161.35m2