Architecture
友だちをたくさん招ける家大空間で友人たちと
楽しく語らう
明るく開放的な空間
渡邉邸は玄関左手の階段を上ると住宅とは思えぬ大空間が現れる。ルーフテラスのレベルにいたるまで吹き抜けたその2階のいちばん高い部分は、床から5mもあり、キッチンとダイニング、リビングがひとつの空間に収まっている。
そして、南東のコーナーに設けられた大きな開口と、その上部のルーフテラスに面した壁に設けられた開口から入る光が室内を明るく照らす。
建築家の蘆田さんは、渡邉さんが通う柔術の道場の仲間から紹介してもらった。祖父の家は居間が北側奥にあって暗く、夕方になるとすぐ電気を付けざるをえない状態だった。そこで蘆田さんには、開放的であると同時に「光がたくさん入るように窓を広く取ってください」との要望を最初に伝えたという。
友だちがたくさん来られる家
明るく開放的な2階の大空間はそのままもうひとつの渡邉夫妻からの大きなリクエストにも応えるものだった。友人を呼ぶ機会が多いためそれに対応できる空間がほしかったのだという。
この2階の空間は、招いた友人たちがそれぞれ好きな場所でくつろげる、そんなつくりになっているのも特徴だ。「ダイニングテーブルのところ以外でも、階段にも座れるし床の段差の部分に腰かけてもいいし、コルクタイルのところにあぐらをかいてもいい」(蘆田さん)
しかもそうして散らばった人たちがお互いにコミュニケーションが取れる工夫も。2階はワンルームのつくりなので当然話はしやすいが、上のルーフテラスとも壁に設けた開口を通してコミュニケーションを取ることができるのだ。
ラーメンの麺が打てるキッチン
お客を呼んでのパーティでは当然、食事が大きな位置を占める。
そこで、キッチンにもこだわった。まず、カウンターは語らいながら食事の用意ができるようにアイランド型にし、ダイニングテーブルの方へと向けた。「壁のほうに向いてしまうと、どうしても孤立して話もしづらくなるので、このようにしてもらいました」(渡邉さん)
さらに「けっこう料理をするのが好き」という渡邉さんは自家製のラーメンをつくるため、カウンターで麺を打つことができる大きさにした。
ガスレンジもあえて業務用の火力の強いものを入れ、さらに大量の氷の需要にも対応できるよう製氷機も組み込んだ。
これに「そんなに簡単に言うなよ」と笑いながら渡邉さんが応じる。「スープだけだと楽なんですが、麺を10人前とか打つのはけっこう大変で、時間がある時じゃないとできないんですね」
この空間で気の置けない友人たちが楽しく語らい、お手製のラーメンに舌鼓を打つ。「大変」とはいうものの、楽しい宴の中で満足気に笑みを浮かべる渡邉さんの姿が容易に目に浮かんだ。
設計 蘆田暢人建築設計事務所
所在地 東京都大田区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 89.17m2