Architecture

友だちをたくさん招ける家大空間で友人たちと
楽しく語らう

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明るく開放的な空間

渡邉邸は玄関左手の階段を上ると住宅とは思えぬ大空間が現れる。ルーフテラスのレベルにいたるまで吹き抜けたその2階のいちばん高い部分は、床から5mもあり、キッチンとダイニング、リビングがひとつの空間に収まっている。

そして、南東のコーナーに設けられた大きな開口と、その上部のルーフテラスに面した壁に設けられた開口から入る光が室内を明るく照らす。


2階のキッチンとダイニング部分。南側に向けて曲面状の天井が上がっていく。木でつくられた天井面が広いのもこの空間の特徴だ。
2階のキッチンとダイニング部分。南側に向けて曲面状の天井が上がっていく。木でつくられた天井面が広いのもこの空間の特徴だ。

階段上部から見下ろす。床のフローリングはヘリボーン張り。右側の一角だけ40cm低くなっていてコルクタイルが敷かれている。
階段上部から見下ろす。床のフローリングはヘリボーン張り。右側の一角だけ40cm低くなっていてコルクタイルが敷かれている。

渡邉さんの一家は、この同じ敷地で渡邉さんの祖父が住んでいた古家に暮らしていた。「しかし、古い家だったので手を入れないといけないところがたくさん出てきて、建て替えようかという話になりました」(渡邉さん)

建築家の蘆田さんは、渡邉さんが通う柔術の道場の仲間から紹介してもらった。祖父の家は居間が北側奥にあって暗く、夕方になるとすぐ電気を付けざるをえない状態だった。そこで蘆田さんには、開放的であると同時に「光がたくさん入るように窓を広く取ってください」との要望を最初に伝えたという。


キッチンから見る。階段を上るとルーフテラスに至る。上部の2つの開口がルーフテラスと2階とをつなぐ。2階にもテラスが設けられている。
キッチンから見る。階段を上るとルーフテラスに至る。上部の2つの開口がルーフテラスと2階とをつなぐ。2階にもテラスが設けられている。

友だちがたくさん来られる家

明るく開放的な2階の大空間はそのままもうひとつの渡邉夫妻からの大きなリクエストにも応えるものだった。友人を呼ぶ機会が多いためそれに対応できる空間がほしかったのだという。

この2階の空間は、招いた友人たちがそれぞれ好きな場所でくつろげる、そんなつくりになっているのも特徴だ。「ダイニングテーブルのところ以外でも、階段にも座れるし床の段差の部分に腰かけてもいいし、コルクタイルのところにあぐらをかいてもいい」(蘆田さん)

しかもそうして散らばった人たちがお互いにコミュニケーションが取れる工夫も。2階はワンルームのつくりなので当然話はしやすいが、上のルーフテラスとも壁に設けた開口を通してコミュニケーションを取ることができるのだ。


壁はグレーで、このグレーをもとに天井などの木部の仕上げの色を決めたという。右の段差部分は腰かけるのにもちょうどいい高さ。
壁はグレーで、このグレーをもとに天井などの木部の仕上げの色を決めたという。右の段差部分は腰かけるのにもちょうどいい高さ。
バーベキューの際はルーフテラスに男性陣、ダイニングテーブルに女性陣と分かれて座ることもあるという。
バーベキューの際はルーフテラスに男性陣、ダイニングテーブルに女性陣と分かれて座ることもあるという。
バーベキューをよくするというルーフテラス。右の開口から2階の様子がうかがえる。
バーベキューをよくするというルーフテラス。右の開口から2階の様子がうかがえる。
2階のテラス。
2階のテラス。


ブラックのスチールサッシが空間を引き締める。
ブラックのスチールサッシが空間を引き締める。
 
「女性的で優しい感じがする」(奥さん)というヘリボーン張りは奥さんの希望で採用。
「女性的で優しい感じがする」(奥さん)というヘリボーン張りは奥さんの希望で採用。
階段部分は下地材に使われるというホワイトウッドが男性的なのに対してスチールが繊細な印象を与える。
階段部分は下地材に使われるというホワイトウッドが男性的なのに対してスチールが繊細な印象を与える。


ラーメンの麺が打てるキッチン

お客を呼んでのパーティでは当然、食事が大きな位置を占める。
そこで、キッチンにもこだわった。まず、カウンターは語らいながら食事の用意ができるようにアイランド型にし、ダイニングテーブルの方へと向けた。「壁のほうに向いてしまうと、どうしても孤立して話もしづらくなるので、このようにしてもらいました」(渡邉さん) 

さらに「けっこう料理をするのが好き」という渡邉さんは自家製のラーメンをつくるため、カウンターで麺を打つことができる大きさにした。
ガスレンジもあえて業務用の火力の強いものを入れ、さらに大量の氷の需要にも対応できるよう製氷機も組み込んだ。


9000カロリーのガスレンジ。渡邉さんは見た目もお気に入りという。
9000カロリーのガスレンジ。渡邉さんは見た目もお気に入りという。
アイランド型にしたのは、食事の用意をしながらお客さんと話ができるようにしたかったのも理由のひとつだった。
アイランド型にしたのは、食事の用意をしながらお客さんと話ができるようにしたかったのも理由のひとつだった。
奥のアイランド型キッチンはラーメンの麺が打てるように広めにつくられた。
奥のアイランド型キッチンはラーメンの麺が打てるように広めにつくられた。


そのラーメンの腕前は「お店で食べるラーメンと同等」(蘆田さん)とか。ラーメンを期待して訪れる人も多いという。「ラーメン会、いつやるの?ってよく訊かれますね」と奥さん。

これに「そんなに簡単に言うなよ」と笑いながら渡邉さんが応じる。「スープだけだと楽なんですが、麺を10人前とか打つのはけっこう大変で、時間がある時じゃないとできないんですね」 

この空間で気の置けない友人たちが楽しく語らい、お手製のラーメンに舌鼓を打つ。「大変」とはいうものの、楽しい宴の中で満足気に笑みを浮かべる渡邉さんの姿が容易に目に浮かんだ。


左手に玄関。右奥には浴室・トイレなどの水回りが収められている。
左手に玄関。右奥には浴室・トイレなどの水回りが収められている。
浴室も黒を使って引き締まった印象。
浴室も黒を使って引き締まった印象。


外壁は下見板状に張られたグレーのサイディング。アメリカ西海岸の住宅をイメージしたものという。
外壁は下見板状に張られたグレーのサイディング。アメリカ西海岸の住宅をイメージしたものという。
渡邉邸
設計 蘆田暢人建築設計事務所
所在地 東京都大田区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 89.17m2