Architecture
季節によって居場所が変わる家大きなワンルームで
一体感のある暮らし
高台の家
横浜市港北区の高台に建つ吉岡邸。西側に設けられたデッキに出ると、視線ははるか遠くまで抜けて、天気のいい日には富士山を望むこともできる。見晴らしのいいロケーションが気に入って購入したこの敷地のお隣には、ちょうど良い位置に緑が茂っていて絶好の借景を提供している。
この地での住宅設計は、自然エネルギー関連の仕事をしている吉岡さんが仕事で知り合った建築家の蘆田さんに依頼した。蘆田さんとは仕事以外でも話をする機会があり、家に対する考え方に共感をもっていたという。
季節で居場所が変わる
「蘆田さんの話を講演などでも聞く機会があったんですが、季節によって家族が集まる場所が違っているのもいいんじゃないかというお話にはとても共感して、子ども部屋が2つと寝室がひとつ、あと自分の書斎をリクエストした以外は、全体の構成に関してはほとんどお任せでお願いしました」
「季節ごとに居場所が変わっていく」。これが吉岡邸の家づくりの出発点のひとつとなった。
そのために、下階に設けた子ども部屋や寝室以外は、空間を壁によってはっきりと区切ることはせず、大きなワンルームのようなつくりとした。
ダイニングとキッチンが東側にあり、リビングが西側という配置のため、夏はダイニング、冬はリビングと、自然に季節で居場所が変わっていく。リビングにもベンチが設えてあり、ダイニング、書斎、リビングと、1日の中でも過ごしやすいスペースを選んで容易に移動ができる。この移動が気軽に行えるのは、ワンルームとして空間同士がゆるやかにつながっているためだ。
遊び心の感じられる家
具体的な要望ではなかったが、吉岡邸の家づくりで重要だったと思われるキーワードがあった。「遊び心」だ。「人が見て面白いねと言われる部分があったらいいなと」(吉岡さん)。
ダイニングとリビングが接する部分を斜めに振ったのは、ダイニング+キッチンとリビングの間の面積的なバランスや空間全体に動きをもたらすことなどを考慮した結果でもあるが、「遊び心」というキーワードがしっくりとくるアイデアでもある。
斜めのプランに角度を合わせた大きめのダイニングテーブル、そして階段に取り付けられた手すりにも蘆田さんの仕掛けた「遊び心」が見て取れる。木の棒を8本立てて手すりとし、さらにこれに背面につくった小さなベンチの背もたれの役目ももたせている。
「蘆田さんから出てくるデザインがどれも面白くて打ち合わせをするのが楽しみでした」と吉岡さん。
仕事で出張が多いという吉岡さんにとって、家族みんながひとつの部屋にいられるのは大切なことであった。ワンルームでひとつながりになった空間は、家族の一体感を強めることにも大きく寄与しているのだ。
設計 蘆田暢人建築設計事務所
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 103.44m2