Architecture

季節によって居場所が変わる家大きなワンルームで
一体感のある暮らし

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高台の家

横浜市港北区の高台に建つ吉岡邸。西側に設けられたデッキに出ると、視線ははるか遠くまで抜けて、天気のいい日には富士山を望むこともできる。見晴らしのいいロケーションが気に入って購入したこの敷地のお隣には、ちょうど良い位置に緑が茂っていて絶好の借景を提供している。
この地での住宅設計は、自然エネルギー関連の仕事をしている吉岡さんが仕事で知り合った建築家の蘆田さんに依頼した。蘆田さんとは仕事以外でも話をする機会があり、家に対する考え方に共感をもっていたという。


晴れた日には視線の先に富士山が見えることも。外には大きめのデッキをつくった。
晴れた日には視線の先に富士山が見えることも。外には大きめのデッキをつくった。

奥さんのご両親がよく訪れるため4人家族にしては大きなテーブル。2人並んで作業ができるようにキッチンも大きくした。キッチン部分の壁はグレーにして落ち着いた雰囲気に。吊戸棚をつくらなかったためすっきりとした壁面になっている。
奥さんのご両親がよく訪れるため4人家族にしては大きなテーブル。2人並んで作業ができるようにキッチンも大きくした。キッチン部分の壁はグレーにして落ち着いた雰囲気に。吊戸棚をつくらなかったためすっきりとした壁面になっている。

季節で居場所が変わる

「蘆田さんの話を講演などでも聞く機会があったんですが、季節によって家族が集まる場所が違っているのもいいんじゃないかというお話にはとても共感して、子ども部屋が2つと寝室がひとつ、あと自分の書斎をリクエストした以外は、全体の構成に関してはほとんどお任せでお願いしました」

「季節ごとに居場所が変わっていく」。これが吉岡邸の家づくりの出発点のひとつとなった。

そのために、下階に設けた子ども部屋や寝室以外は、空間を壁によってはっきりと区切ることはせず、大きなワンルームのようなつくりとした。


南側の屋根に太陽光パネルを載せているため、北側よりも屋根面を広く取っている。
南側の屋根に太陽光パネルを載せているため、北側よりも屋根面を広く取っている。
開放感のある大きなワンルームを実現するために棟の部分にキールトラスを採用した。
開放感のある大きなワンルームを実現するために棟の部分にキールトラスを採用した。


玄関を入ると現れるのがキッチンとダイニングの空間。リビングとはスキップフロアでつながる。吉岡さんからの希望でつくられた書斎はダイニングと同じレベルにあるためそのまま移動できるが、ダイニングとははす向かいの位置関係にあるため、リビングと同様にダイニングとゆるやかにつながっている印象。

ダイニングとキッチンが東側にあり、リビングが西側という配置のため、夏はダイニング、冬はリビングと、自然に季節で居場所が変わっていく。リビングにもベンチが設えてあり、ダイニング、書斎、リビングと、1日の中でも過ごしやすいスペースを選んで容易に移動ができる。この移動が気軽に行えるのは、ワンルームとして空間同士がゆるやかにつながっているためだ。


ゆるやかに区切られているためワンルームとして感じられるつくり。敷地の西側は崖が崩れても家が下に滑り落ちないように1m強掘って半地下の空間をつくっている。
ゆるやかに区切られているためワンルームとして感じられるつくり。敷地の西側は崖が崩れても家が下に滑り落ちないように1m強掘って半地下の空間をつくっている。

四角い平面に対してダイニングとリビングは斜めに区切られている。このことで、さらに下階にある子ども部屋へはぐるりと回るような動線となった。子ども部屋に行くには、必ず親のいる場所を通るつくりでもある。
四角い平面に対してダイニングとリビングは斜めに区切られている。このことで、さらに下階にある子ども部屋へはぐるりと回るような動線となった。子ども部屋に行くには、必ず親のいる場所を通るつくりでもある。

遊び心の感じられる家

具体的な要望ではなかったが、吉岡邸の家づくりで重要だったと思われるキーワードがあった。「遊び心」だ。「人が見て面白いねと言われる部分があったらいいなと」(吉岡さん)。

ダイニングとリビングが接する部分を斜めに振ったのは、ダイニング+キッチンとリビングの間の面積的なバランスや空間全体に動きをもたらすことなどを考慮した結果でもあるが、「遊び心」というキーワードがしっくりとくるアイデアでもある。

斜めのプランに角度を合わせた大きめのダイニングテーブル、そして階段に取り付けられた手すりにも蘆田さんの仕掛けた「遊び心」が見て取れる。木の棒を8本立てて手すりとし、さらにこれに背面につくった小さなベンチの背もたれの役目ももたせている。

「蘆田さんから出てくるデザインがどれも面白くて打ち合わせをするのが楽しみでした」と吉岡さん。


棒を立てて手すりとした遊び心のある設計。手すりを背もたれにして座れる小さなベンチと一体化してつくられている。
棒を立てて手すりとした遊び心のある設計。手すりを背もたれにして座れる小さなベンチと一体化してつくられている。
階段近くからリビングを見下ろす。
階段近くからリビングを見下ろす。


手すりの奥にもベンチがつくられている。
手すりの奥にもベンチがつくられている。
書斎から見る。
書斎から見る。


奥の右手にリビングへ上がる階段がある。手前の階段を下りると奥から子ども部屋、寝室、子ども部屋と3室が並ぶ。
奥の右手にリビングへ上がる階段がある。手前の階段を下りると奥から子ども部屋、寝室、子ども部屋と3室が並ぶ。
奥が子ども部屋。その前に本棚がつくられている。
奥が子ども部屋。その前に本棚がつくられている。


「テーブルが広いのも気に入っているし、妻がキッチンに立っていても私が立っていても対面になるので子どもたちとこの場所でひとつの輪ができるという感覚もありますね」と吉岡さん。
 
仕事で出張が多いという吉岡さんにとって、家族みんながひとつの部屋にいられるのは大切なことであった。ワンルームでひとつながりになった空間は、家族の一体感を強めることにも大きく寄与しているのだ。


100㎏くらいまでは大丈夫ということで梁にハンモックを吊るした。
100㎏くらいまでは大丈夫ということで梁にハンモックを吊るした。
今年幼稚園年長の息子さんもハンモックで遊ぶ。
今年幼稚園年長の息子さんもハンモックで遊ぶ。
ハンモックをブランコ代わりにして遊ぶ娘さんは小学3年生。
ハンモックをブランコ代わりにして遊ぶ娘さんは小学3年生。
 
キールトラスの部分を利用して南北両面から採光している。
キールトラスの部分を利用して南北両面から採光している。


外壁はガルバリウム鋼板の横葺きで落ち着きのあるシックな印象。キールトラスの部分が屋根から突き出ている。
外壁はガルバリウム鋼板の横葺きで落ち着きのあるシックな印象。キールトラスの部分が屋根から突き出ている。

吉岡邸
設計 蘆田暢人建築設計事務所
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 103.44m2